60点 (100点満点)
2014年6月22日鑑賞
前半の冬の北海道の映像が美しい。
そしてオープニングのどう見てもセットやCGではなさそうな冷たい冬の海から這い上がる制服姿の女子高生。
なんだかとんでもない女の子が出てきたと否が応でも期待が膨らむ。どんな女の子なんだろう。何をしでかすんだろう。
男と女の出会い(本当はもっと前に出会っているのだが)のシーンに映画は瞬時に飛ぶ。
冒頭のシーンをプレイバックするように海辺から這い上がる女の子。ただし夜の海辺でおびただしい瓦礫が散乱している。
それは津波に襲われた町。明確な説明台詞はないが東日本大震災の20年前に北海道奥尻島を襲った津波の被災地と思われる。
自然の前に無力な人間が、自然ではない恋愛(年の差、血)におぼれていく。
凍てつくオホーツク沿岸の町。冬の澄み切った空気。海を覆う流氷。
二階堂ふみという若い女優の今このときの、女優としての魂の熱い躍動と対照的な氷の世界。
前半は、もはや物語としてどうなろうと、映画としてどうなろうと知ったことじゃなく、ただただ二階堂ふみという人の魂から絞り出せるだけの感情を絞り出そうとすることのみを目指しているように思う。
ある意味作り手が女優に溺れている。女優自身も自分に溺れている。
すごい傑作よりも、稀かもしれない映画という生き物が何かに溺れて、何も見えなくなっていく感覚。
だからこそ、後半の東京編における、オンナとして成熟したヒロインの安心感。
ゴミ屋敷のような家の汚さとあわせて映画自体も、主人公の男のように停滞しよどみ生きようとしない。
流氷の上でのあの情熱的なシーン(脚本的にはめちゃくちゃ問題あるのだが)。ヒロインが海に飛び込んだ時に映画もまた溺れ死ぬべきだった。
もちろんそこから這い上がる場面が映画のファーストシーンであるし、そこで終わるはずはないのだけど。
なんといっても終盤、キャラクターが停滞しだすと、情熱的なシーンでは強引に押し切れた物語上の問題点が色々きになって仕方ない。
死体の処理はどうしたのか、逃げ通せるものだろうか、とかどうしても考えてしまう。
ラストの二階堂ふみの顔は天使だった。堕ちた天使だろうが汚れた天使だろうが、天使は天使だった。でもその天使の顔を引き立てるなら後半もっと男とヒロインをいじめてほしかった。
[追記]
些末な事すぎるので追記扱いで書くが東京編における、ぐつぐつ煮え立ったシチューの使い方、その究極に控え目な伏線の張り方が大好きだ。この監督が「基本サスペンス、ややアクションの映画」撮ったら凄く面白くなると確信できる演出だった。
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鑑賞直後のTwitterフラッシュ映評
劇場にて「私の男」鑑賞。濃厚な愛のドラマで、今この瞬間に魂を燃やす二階堂ふみの儚さに魅入る。映画としてイマイチになることを恐れず二階堂ふみの今を撮ることの使命感を感じる作品。若くて濡れ場OKな娘は愛おしい。そして彼女をメチャメチャにする浅野忠信の安定感あるエロさにも惚れる
「私の男」しかし、映画というより長編イメージビデオを見たような後味。冬のオホーツクの映像は圧巻で、東京編になってからの女の子の部屋とゴミ屋敷の境界線とか、基本的に映像も演技も素晴らしいだけに、しっかりしたストーリーテリングとともに見たかった。
「私の男」ラストの二階堂ふみの顔は天使だった。堕ちた天使。汚れた天使。
ちなみに「私の男」は、「チクタクレス」の松本城のシーンで照明をやってくれた宮永アグルが照明助手の筆頭でクレジットされてますよ。デートでアナ雪でも観に行こうとか思ってる関係者、ちょっとまった、「私の男」でデートして!!二階堂ふみと浅野忠信のありのままを感じて
********
自主映画制作団体 ALIQOUI FILM
最新作「チクタクレス」
小坂本町一丁目映画祭Vol.12 入選
日本芸術センター映像グランプリ ノミネート
2014年6月22日鑑賞
前半の冬の北海道の映像が美しい。
そしてオープニングのどう見てもセットやCGではなさそうな冷たい冬の海から這い上がる制服姿の女子高生。
なんだかとんでもない女の子が出てきたと否が応でも期待が膨らむ。どんな女の子なんだろう。何をしでかすんだろう。
男と女の出会い(本当はもっと前に出会っているのだが)のシーンに映画は瞬時に飛ぶ。
冒頭のシーンをプレイバックするように海辺から這い上がる女の子。ただし夜の海辺でおびただしい瓦礫が散乱している。
それは津波に襲われた町。明確な説明台詞はないが東日本大震災の20年前に北海道奥尻島を襲った津波の被災地と思われる。
自然の前に無力な人間が、自然ではない恋愛(年の差、血)におぼれていく。
凍てつくオホーツク沿岸の町。冬の澄み切った空気。海を覆う流氷。
二階堂ふみという若い女優の今このときの、女優としての魂の熱い躍動と対照的な氷の世界。
前半は、もはや物語としてどうなろうと、映画としてどうなろうと知ったことじゃなく、ただただ二階堂ふみという人の魂から絞り出せるだけの感情を絞り出そうとすることのみを目指しているように思う。
ある意味作り手が女優に溺れている。女優自身も自分に溺れている。
すごい傑作よりも、稀かもしれない映画という生き物が何かに溺れて、何も見えなくなっていく感覚。
だからこそ、後半の東京編における、オンナとして成熟したヒロインの安心感。
ゴミ屋敷のような家の汚さとあわせて映画自体も、主人公の男のように停滞しよどみ生きようとしない。
流氷の上でのあの情熱的なシーン(脚本的にはめちゃくちゃ問題あるのだが)。ヒロインが海に飛び込んだ時に映画もまた溺れ死ぬべきだった。
もちろんそこから這い上がる場面が映画のファーストシーンであるし、そこで終わるはずはないのだけど。
なんといっても終盤、キャラクターが停滞しだすと、情熱的なシーンでは強引に押し切れた物語上の問題点が色々きになって仕方ない。
死体の処理はどうしたのか、逃げ通せるものだろうか、とかどうしても考えてしまう。
ラストの二階堂ふみの顔は天使だった。堕ちた天使だろうが汚れた天使だろうが、天使は天使だった。でもその天使の顔を引き立てるなら後半もっと男とヒロインをいじめてほしかった。
[追記]
些末な事すぎるので追記扱いで書くが東京編における、ぐつぐつ煮え立ったシチューの使い方、その究極に控え目な伏線の張り方が大好きだ。この監督が「基本サスペンス、ややアクションの映画」撮ったら凄く面白くなると確信できる演出だった。
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鑑賞直後のTwitterフラッシュ映評
劇場にて「私の男」鑑賞。濃厚な愛のドラマで、今この瞬間に魂を燃やす二階堂ふみの儚さに魅入る。映画としてイマイチになることを恐れず二階堂ふみの今を撮ることの使命感を感じる作品。若くて濡れ場OKな娘は愛おしい。そして彼女をメチャメチャにする浅野忠信の安定感あるエロさにも惚れる
「私の男」しかし、映画というより長編イメージビデオを見たような後味。冬のオホーツクの映像は圧巻で、東京編になってからの女の子の部屋とゴミ屋敷の境界線とか、基本的に映像も演技も素晴らしいだけに、しっかりしたストーリーテリングとともに見たかった。
「私の男」ラストの二階堂ふみの顔は天使だった。堕ちた天使。汚れた天使。
ちなみに「私の男」は、「チクタクレス」の松本城のシーンで照明をやってくれた宮永アグルが照明助手の筆頭でクレジットされてますよ。デートでアナ雪でも観に行こうとか思ってる関係者、ちょっとまった、「私の男」でデートして!!二階堂ふみと浅野忠信のありのままを感じて
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自主映画制作団体 ALIQOUI FILM
最新作「チクタクレス」
小坂本町一丁目映画祭Vol.12 入選
日本芸術センター映像グランプリ ノミネート