是枝裕和監督の『怪物』を観たのですが、なにやらモヤっとする映画でありました
視点が変わることで一つの事件も見え方が全然違う…という是枝監督の一貫した姿勢を、今回さらに重層的に展開した脚本はうまいと思います…が…
最後に種あかし的な展開が悪いわけではないのですが…
『誰も知らない』や『万引き家族』は、あの子供たちや家族に「うらやましい」という感情を抱きました。そのうらやましさがあまりに大きな代償を伴うからこそ映画は痛みの記憶と共に深い余韻と社会性を得たように思います。
けれども『怪物』を観て私が抱いた感情は、ただただ「かわいそう」でした。
『誰も知らない』や『万引き家族』が、この電車はいつか行き止まりに着くと分かっていながら降りられなかった人たちの物語だとするなら、怪物は行き止まりに向けて加速のスロットルを上げてしまうような痛々しさがありました。あの電車(汽車か?)内に広がる2人だけの宇宙は美しかったですが
彼らに他の方法を選択させることはできなかったのでしょうか
母親は息子の痛みを理解できたのでしょうか
自分では思いつかないけど、もっといいラストはなかったのか…そう思わせることが作品の狙いではあるかもしれませんが…監督自身ももうどうしたら良いのかわからなくなっているような気がしました。だからこそ映画にしたのかもしれませんけど
瑛太と田中裕子の演技
少年2人の演技
坂本龍一の音楽
…は心から素晴らしいと思いました