映像作品とクラシック音楽 第96回 『響け!ユーフォニアム 〜アンサンブルコンテスト〜』
いい歳したおっさんが女子高生吹奏楽青春アニメを公開初日から観に行ってしまうのです。
好きだから良いじゃないですか。
久美子たんに、麗奈様にまた会いたいんだもん!
さて、本作はこないだ紹介しました「響け!」シリーズ劇場版第3作『誓いのフィナーレ』のラストの直後くらいからのスタートとなります。
北宇治高2年の久美子が新部長に就任。
3年の優子元部長や夏樹元副部長、それからスピンオフ映画で主役だった鎧塚みぞれセンパイと希美センパイらは、引退しております。
副部長に塚本(久美子の元カレ)、そしてドラムメジャーには麗奈様が就任しています。
そんな新体制の北宇治吹奏楽部での久美子の初仕事はと言うと、アンサンブルコンテストの代表選出をかけて、部内を3〜8人のアンサンブルチームに分けるというものでした。
もちろん久美子自身もどこかのアンサンブルチームに入らにゃならんのですが、久美子は最愛の人?麗奈様からのお声がけを待ってヤキモキするわけです。
ナマイキな一年生のユーフォ担当の久石奏ちゃんは優勝狙いで強力メンバーそろえてアンサンブルチームを申請してきたりしますが…
さてさて、実は初めてこのシリーズを劇場で鑑賞しました。しかも丸の内ピカデリーというかなり大きめの劇場です。
大画面に映る久美子たんや麗奈様のお顔にきゃーすてきってのもあったんですが、それ以上に劇場鑑賞のおかげで音の凄さというか、音響担当の仕事の細かさを堪能できました。
管楽器のバルブを押さえたり離したりする指使いの音が細かく作り込まれていて、ただの音楽ではなく、生きた人間が演奏する音楽である事が伝わってきます。
もう一つは呼吸です。
チューバ担当の加藤葉月(久美子と同期で親友で、ついでに言えばかつて塚本に告ってフラれた)の、練習シーンで彼女の「息継ぎ」が劇場の音響設備の力もあってか、迫真に迫る良音で聞こえてきます。
私、少し前に投稿した『青のオーケストラ』のとき、弦楽器は腕全体を使うけど管楽器は指だけだからアニメ演出しやすいのかも…などと書きましたが、響けシリーズを劇場で見たらそんな発言がいかに間違っていたかわかります。
息継ぎに合わせて、口元はもちろんのこと、肺も動くし、横隔膜も腹膜も動くわけで、一音一音に微妙ではありますが体全体が連動して動いていることを、響け!スタッフはきちんと作画で表現しているのです。
『青のオーケストラ』の投稿のとき、「響けシリーズの方が演奏シーンに血が通っている」などと曖昧なこと書きました。「血が通った」などという漠然とした表現の正体は「呼吸」だったんだなと思ったのです。
息を吸ったり吐いたり、それこそ生命の根源ではないですか。そこを一音一音の表現全てにおいて、ビジュアルでも音響でも、きちんと描いているからこそ血が通ったように感じでいたのです。
そんなことを思っていた時に、久美子はすごく頑張っているのになかなか上達しない葉月に対して、呼吸についてのアドバイスをするのです。
管楽器は吹いてから音が鳴るまでのタイムラグがある、それを意識しないで耳だけで演奏に合わせようとするからみんなと合わないのだと。
そして、本作からの新キャラであるパーカッション担当のつばめちゃんに対しても、呼吸についての助言を与えるのです。
そうなのです。人と人がうまく付き合いをしていくには、よく「空気を読め」などとフワッとしたこと言いますが、そこで言う「空気」の正体もまた「呼吸」なのではないか?仲間の呼吸を考えたアウトプットこそが団体活動の秘訣なのではないかと。これは吹奏楽だけでなく、オーケストラでも、劇団でも、もしかすると会社や公務員にも通じる極意なのではないかと、そんなことを思いました。
呼吸のアドバイスにより、葉月も、つばめちゃんも劇的に上達します。
おいおい、久美子たん。呼吸使いかよ。「音の呼吸 肆ノ型 響斬無間」かよ。
宇髄天元さんに弟子入りして音柱継ぎなさいよ。つっても3人も嫁のいる宇髄さんは久美子みたいなチンチクリン興味なさそうだけど。などと無理矢理鬼滅ネタねじ込んですいません。
そんな久美子たんの指導に対して麗奈様が珍しく久美子たんに嫉妬するのです。
ドラムメジャーとして皆を指導していた麗奈がいくら言っても上手くならなかっ子たちが、久美子たんのアドバイスでスルッと一皮むけたのです。
まあ、多分麗奈様の指導なんて「死ね気でやれ!以上!」くらいなもんでしょう。
天才にして孤高「成功か死か!」な麗奈様と、天才じゃないけど教えることは抜群に上手い久美子たん。ほんとこの2人、無いものを補い合っています。もう塚本も滝先生もいいから2人付き合っちゃえよ!
で、久美子たんは麗奈様がアンサンブルチームを実力優先で選んだ発言に、自分が選ばれたことへの嬉しさと同時に自分より上手い子が現れたらどうなるんだろう?という不安を語らせていて、多分それが来年春の新テレビシリーズの伏線になっているんでしょう!
そんな訳であれやこれやの伏線回収が展開されるであろ響け!テレビシリーズシーズン3が超楽しみです。
その他雑感1
鎧塚みぞれさんが、久美子から見た理解不能キャラとして描かれて、久美子視点だとこの人ギャグなのねと面白かったです。
ただスピンオフ作品『リズと青い鳥』を見ておくと、オーボエのみぞれセンパイはこれから音大受験なのに、フルートの希美センパイはすでに普通大学の受験終了でアンサンブルサポートするよーとか楽しげに言っているのがちょっと切ないのです。
そういえば、本作『アンサンブルコンテスト』でみぞれセンパイが言っていた、窓を開けるのが上手いとか下手とかの話ですが、鑑賞中は不思議ちゃんキャラ的な久美子を戸惑わせるギャグ的発言と思って聞いてましたが、思い返すと『リズと青い鳥』の青い鳥を解き放つかどうかの話とかけていたのでしょうか?
もう一回『リズと青い鳥』見返して、発言の真意を探りたいと思います。
その他雑感2
久美子が一年生部員から部長は優しいですね、と言われた時、一瞬久美子の脳内フラッシュバックで、アニメ第一シーズンで久美子が当時の晴香部長に優しいと言って怒らせ傷つけた思い出が描かれます。前シリーズ観てないとあのフラッシュバック何?ってキョトンとするところですが、ファン以外相手にしていない説明なしのこういうシーンはファン心くすぐって良いですね(笑
で、今思うと晴香センパイはすぐ泣くし、決断できないし、弱気だし、頼りない感凄かったのですが、それでも思ったことははっきり言うし、そしてすぐ行動するし、そういうところが部長っぽかったのです。
上や下や同期から色々言われてその都度曖昧に笑って誤魔化そうとする久美子が改めて晴香センパイの心労を感じつつ、尊敬していることが伺えて、「晴香推し」の私としましては嬉しかったです。
で、最後に音楽の話です。
チーム高坂(麗奈)のアンサンブルチームの演奏をフル尺で流すのは良いですが、コンテスト結果のダイジェスト紹介シーンにかぶせて流すのは、セリフ一切なしで黙々と演奏する面々を写し続けるだけがゾクゾクのクライマックスを作っていた過去の作品を考えるとちょいと残念な処理でした。
投票結果に一喜一憂する様も、台詞処理でなくきちんと描いて欲しかったです。
『誓いのフィナーレ』以上に続くテレビシリーズへの接続エピソード感の強い映画となってしまった感はありますが、それでも久美子の指導っぷりや、吹奏楽の練習描写、そして本作のための書き下ろしの新曲「フロントライン〜青春の響き〜」もいい曲です。
まず久美子のユーフォのソロから始まり、つばめちゃんが苦労していたマリンバのソロがかぶさり、そこから麗奈様のトランペットが炸裂する、映画の全てを表しているような名曲です。
他に緑輝(サファイアと読む)が2人だけで参戦したベートーベンのメヌエットコントラバス二重奏バージョンも趣深い名曲でしたよ!吹奏楽なのに弦楽二重奏!これもいい!
というわけで今回はこんなところで
また素晴らしい音楽と映像作品でお会いしましょう
いい歳したおっさんが女子高生吹奏楽青春アニメを公開初日から観に行ってしまうのです。
好きだから良いじゃないですか。
久美子たんに、麗奈様にまた会いたいんだもん!
さて、本作はこないだ紹介しました「響け!」シリーズ劇場版第3作『誓いのフィナーレ』のラストの直後くらいからのスタートとなります。
北宇治高2年の久美子が新部長に就任。
3年の優子元部長や夏樹元副部長、それからスピンオフ映画で主役だった鎧塚みぞれセンパイと希美センパイらは、引退しております。
副部長に塚本(久美子の元カレ)、そしてドラムメジャーには麗奈様が就任しています。
そんな新体制の北宇治吹奏楽部での久美子の初仕事はと言うと、アンサンブルコンテストの代表選出をかけて、部内を3〜8人のアンサンブルチームに分けるというものでした。
もちろん久美子自身もどこかのアンサンブルチームに入らにゃならんのですが、久美子は最愛の人?麗奈様からのお声がけを待ってヤキモキするわけです。
ナマイキな一年生のユーフォ担当の久石奏ちゃんは優勝狙いで強力メンバーそろえてアンサンブルチームを申請してきたりしますが…
さてさて、実は初めてこのシリーズを劇場で鑑賞しました。しかも丸の内ピカデリーというかなり大きめの劇場です。
大画面に映る久美子たんや麗奈様のお顔にきゃーすてきってのもあったんですが、それ以上に劇場鑑賞のおかげで音の凄さというか、音響担当の仕事の細かさを堪能できました。
管楽器のバルブを押さえたり離したりする指使いの音が細かく作り込まれていて、ただの音楽ではなく、生きた人間が演奏する音楽である事が伝わってきます。
もう一つは呼吸です。
チューバ担当の加藤葉月(久美子と同期で親友で、ついでに言えばかつて塚本に告ってフラれた)の、練習シーンで彼女の「息継ぎ」が劇場の音響設備の力もあってか、迫真に迫る良音で聞こえてきます。
私、少し前に投稿した『青のオーケストラ』のとき、弦楽器は腕全体を使うけど管楽器は指だけだからアニメ演出しやすいのかも…などと書きましたが、響けシリーズを劇場で見たらそんな発言がいかに間違っていたかわかります。
息継ぎに合わせて、口元はもちろんのこと、肺も動くし、横隔膜も腹膜も動くわけで、一音一音に微妙ではありますが体全体が連動して動いていることを、響け!スタッフはきちんと作画で表現しているのです。
『青のオーケストラ』の投稿のとき、「響けシリーズの方が演奏シーンに血が通っている」などと曖昧なこと書きました。「血が通った」などという漠然とした表現の正体は「呼吸」だったんだなと思ったのです。
息を吸ったり吐いたり、それこそ生命の根源ではないですか。そこを一音一音の表現全てにおいて、ビジュアルでも音響でも、きちんと描いているからこそ血が通ったように感じでいたのです。
そんなことを思っていた時に、久美子はすごく頑張っているのになかなか上達しない葉月に対して、呼吸についてのアドバイスをするのです。
管楽器は吹いてから音が鳴るまでのタイムラグがある、それを意識しないで耳だけで演奏に合わせようとするからみんなと合わないのだと。
そして、本作からの新キャラであるパーカッション担当のつばめちゃんに対しても、呼吸についての助言を与えるのです。
そうなのです。人と人がうまく付き合いをしていくには、よく「空気を読め」などとフワッとしたこと言いますが、そこで言う「空気」の正体もまた「呼吸」なのではないか?仲間の呼吸を考えたアウトプットこそが団体活動の秘訣なのではないかと。これは吹奏楽だけでなく、オーケストラでも、劇団でも、もしかすると会社や公務員にも通じる極意なのではないかと、そんなことを思いました。
呼吸のアドバイスにより、葉月も、つばめちゃんも劇的に上達します。
おいおい、久美子たん。呼吸使いかよ。「音の呼吸 肆ノ型 響斬無間」かよ。
宇髄天元さんに弟子入りして音柱継ぎなさいよ。つっても3人も嫁のいる宇髄さんは久美子みたいなチンチクリン興味なさそうだけど。などと無理矢理鬼滅ネタねじ込んですいません。
そんな久美子たんの指導に対して麗奈様が珍しく久美子たんに嫉妬するのです。
ドラムメジャーとして皆を指導していた麗奈がいくら言っても上手くならなかっ子たちが、久美子たんのアドバイスでスルッと一皮むけたのです。
まあ、多分麗奈様の指導なんて「死ね気でやれ!以上!」くらいなもんでしょう。
天才にして孤高「成功か死か!」な麗奈様と、天才じゃないけど教えることは抜群に上手い久美子たん。ほんとこの2人、無いものを補い合っています。もう塚本も滝先生もいいから2人付き合っちゃえよ!
で、久美子たんは麗奈様がアンサンブルチームを実力優先で選んだ発言に、自分が選ばれたことへの嬉しさと同時に自分より上手い子が現れたらどうなるんだろう?という不安を語らせていて、多分それが来年春の新テレビシリーズの伏線になっているんでしょう!
そんな訳であれやこれやの伏線回収が展開されるであろ響け!テレビシリーズシーズン3が超楽しみです。
その他雑感1
鎧塚みぞれさんが、久美子から見た理解不能キャラとして描かれて、久美子視点だとこの人ギャグなのねと面白かったです。
ただスピンオフ作品『リズと青い鳥』を見ておくと、オーボエのみぞれセンパイはこれから音大受験なのに、フルートの希美センパイはすでに普通大学の受験終了でアンサンブルサポートするよーとか楽しげに言っているのがちょっと切ないのです。
そういえば、本作『アンサンブルコンテスト』でみぞれセンパイが言っていた、窓を開けるのが上手いとか下手とかの話ですが、鑑賞中は不思議ちゃんキャラ的な久美子を戸惑わせるギャグ的発言と思って聞いてましたが、思い返すと『リズと青い鳥』の青い鳥を解き放つかどうかの話とかけていたのでしょうか?
もう一回『リズと青い鳥』見返して、発言の真意を探りたいと思います。
その他雑感2
久美子が一年生部員から部長は優しいですね、と言われた時、一瞬久美子の脳内フラッシュバックで、アニメ第一シーズンで久美子が当時の晴香部長に優しいと言って怒らせ傷つけた思い出が描かれます。前シリーズ観てないとあのフラッシュバック何?ってキョトンとするところですが、ファン以外相手にしていない説明なしのこういうシーンはファン心くすぐって良いですね(笑
で、今思うと晴香センパイはすぐ泣くし、決断できないし、弱気だし、頼りない感凄かったのですが、それでも思ったことははっきり言うし、そしてすぐ行動するし、そういうところが部長っぽかったのです。
上や下や同期から色々言われてその都度曖昧に笑って誤魔化そうとする久美子が改めて晴香センパイの心労を感じつつ、尊敬していることが伺えて、「晴香推し」の私としましては嬉しかったです。
で、最後に音楽の話です。
チーム高坂(麗奈)のアンサンブルチームの演奏をフル尺で流すのは良いですが、コンテスト結果のダイジェスト紹介シーンにかぶせて流すのは、セリフ一切なしで黙々と演奏する面々を写し続けるだけがゾクゾクのクライマックスを作っていた過去の作品を考えるとちょいと残念な処理でした。
投票結果に一喜一憂する様も、台詞処理でなくきちんと描いて欲しかったです。
『誓いのフィナーレ』以上に続くテレビシリーズへの接続エピソード感の強い映画となってしまった感はありますが、それでも久美子の指導っぷりや、吹奏楽の練習描写、そして本作のための書き下ろしの新曲「フロントライン〜青春の響き〜」もいい曲です。
まず久美子のユーフォのソロから始まり、つばめちゃんが苦労していたマリンバのソロがかぶさり、そこから麗奈様のトランペットが炸裂する、映画の全てを表しているような名曲です。
他に緑輝(サファイアと読む)が2人だけで参戦したベートーベンのメヌエットコントラバス二重奏バージョンも趣深い名曲でしたよ!吹奏楽なのに弦楽二重奏!これもいい!
というわけで今回はこんなところで
また素晴らしい音楽と映像作品でお会いしましょう