[特別審査委員の山崎貴監督と私と妻]
『商店街映画祭 ALWAYS 松本の夕日』は、昭和レトロな雰囲気を持つ松本市内のナワテ商店街と中町商店街の共催による自主映画コンテストです。
商店街の振興と、松本の映画文化発展のため、・[商店街をテーマに]・[商店街で期間内に撮影し]・[10分以内で]という三つのしばりをあえて設けた上で、多くのクリエイターに自主映画を作ってもらおうという企画でした。
松本発の自主映画制作の場をということで、商店街には全面協力していただき、指定された撮影期間内は、商店街でのロケは基本フリーパスでした。とても撮りやすかったです。
そして特別審査員として松本出身の山崎貴監督(「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズの)を迎え、上記の短編映画部門と、商店街PR部門(15秒CM)、モバイル部門(携帯電話の動画機能で撮った作品)の三部門で作品を募集しました。
映画祭の最優秀賞には不肖私と、私の妻とで監督した「Soulmate」が選ばれました。
山崎監督より賞状を授与され、副賞として商店街の様々なお店から出していただいた様々な賞品を頂きましたが、とりわけ、バレーボールくらいの大きさのグレープフルーツみたいな柑橘類が強烈なインパクトを与えます。
(ど・・・どうやって食ったらいいんだ)
表彰式の様子。右が山崎監督。左が私。
山崎監督はとてもスマートで背の高い方で、微妙にオダギリジョーっぽい風貌をしておられます。
マイクの高さが低いのでややかがみ気味の姿勢で喋られることが多く、ちょっと窮屈そうでした。
記念撮影にも二つ返事でいいですよと応じてくださるなど、とても気さくな方で、ヒット監督というより「いい兄ちゃん」みたいな印象を受けました。
「ブログに写真乗載っけてもいいですか」と聞くと、「どうぞどうぞ」と、これも軽く応じてくださいました。
ちなみに、制作準備中の次回作の話もチラリとしてくれたのですが・・・まだ制作発表前なのに言いふらしすぎるとプロデューサから怒られたとか言っておりましたので、ここでは書きません。会場にいた人たちだけの耳より情報ってことで・・・へへへ
それから私、生まれて初めて「囲み取材」を受けました。(といっても三社、中日新聞と松本市民タイムズと、タウン情報)
2008/3/31の中日新聞・長野総合ページに記事が掲載されていました↓
それからケーブルテレビのテレビ松本で、高校生たちと私の撮影・編集現場を取材したものと、授賞式の様子のドキュメント、および受賞作が放送されるそうです。4月末。でもうちにはケーブルがないので観れません。
*************
とりあえず、『商店街映画祭 ALWAYS 松本の夕日』で鑑賞した短編映画部門の作品の私なりの感想を記していきます。
(感想はですます調でなく、書きやすい、・・だ・・である調で書いていきます。)
エントリー作品上映前の、松本地域の自主映画作家たちの作品上映より
『僕らの宇宙戦争』(寿小学校のみなさん)
寿小学校の生徒たちが作った映画。担任の先生は昔「エビ天」で放送されたこともある「映画先生」
作品は基本的には生徒たちがカメラを使い、照明を使い、マイクを持ち、監督している。出演も全員生徒のみなさん。
脚本には先生の名前が。それからブルーシート撮影による、ミニチュア合成や、CGによるエフェクト全般と編集は先生がやったと思われる。
全世界に宣戦布告した宇宙人は、子供たちに戦いを申し込み、子供たちが勝てば侵略はやめる、負ければ侵略開始と、条件を突きつける。しかも子供たちが逃げ出せないよう、クラスメイトの女の子をさらっていく。
戦いの方法は子供たちが決めていいと言う。子供たちはドッヂボールで戦うことにする。
演じているのは子役俳優でも何でも無い普通の子供たちなので、もちろん演技は上手くはない・・・のだが、頑張っている子供たちの姿は技術力・表現力云々よりも大人を熱くさせる。
何と言っても、侵略者の宇宙人も子供たちが演じているのだ。
「フッ、下等生物め」とか「ふふふ、どうした、それまでか」「なに、バカな」・・・みたいな、みんなが大好きな「悪の台詞」を子供たちが熱演するのだ。面白くないはずが無い。
宇宙船に潜入した女の子(実は人間に味方する裏切り者宇宙人)が、キック一発で見張りを仕留めるシーンにも、熱く心をたぎらせるものがある。
CGとミニチュアで描かれた、宇宙船団の総攻撃でついには惑星が爆発する記録映像(地球人脅し用)も、やはりスター・ウォーズに燃えた大人たちを大喜びさせるものがある。
「ヒロイン、幻惑世界でピンチになるの巻」など、ヒロインが(イケメン男に助けられたりせず)自力でピンチを脱し、敵に打ち勝つ姿に、真面目な話で、強烈かつ壮快なフェミニズムを感じる。
男たちは女に教えられて成長し女のために戦うのだが、一方で女たちは信念のため、あるいは己の誇りのために戦う。
ドッヂボールで一人フィールドに残り、ひたすら逃げて逃げて耐え抜く女の子、幻惑世界を操る敵と戦う人間の味方の女の子宇宙人オメガ、そして石化の恐怖に打ち勝ちついに気象コントロール装置を破壊する女の子。
そう、これは宮崎駿映画に通じる強い強いヒロインパワー炸裂の映画なのだ。
短編映画部門の感想
『松本に未来はあるか』(柳澤孝夫)
縄手・中町商店街の戦中、戦後の在りし日の写真やイラストの絵葉書を紹介しながら、「商店街の未来」について、商店街の方々と考えていくドキュメンタリー作品。
『a day in the life』(下垣浩)
寺山修二作品の上演、あるいは寺山的世界観を踏襲したオリジナル台本での演劇活動を続ける、松本のアマチュア劇団「演劇実験室 経帷子」による作品。昭和初期を彷彿させる登場人物たちが織り成す幻想的な映像詩。ポスタライズ処理された画像がもともと白塗りメイクに極彩色のキャラたちをさらに、サイケな印象に変える。
もともと縄手商店街というところは、昭和レトロ感をコンセプトにしたような場所なので、寺山的映像詩のロケ場所としてはうってつけ。
というか、この劇団は前からよくなわて通りで路上演劇などをやっている。
だが今回は台詞なし、明確なストーリーがあるでもなく、映像詩に徹した。
・・・ところが、上映が終わるやいなや会場に映像と同じ衣装・メイクの俳優たちが現れ、客席を縫ってスクリーンの前に立ち、台詞を喋る。
映像と演劇の融合による実験芸術は、これも寺山修二へのオマージュと言える。
「経帷子」の芝居を何度も見た人たちなら、やってくれると思ったぜ的な経帷子節全開が楽しい。「経帷子」も寺山修司も知らない方々には「ぽかーーーん・・・・」だったかも。ま、でもこの客に媚びない「経帷子」の姿勢は私はかっこいいと思う。
ちなみに経帷子は、モバイル部門、15秒の商店街PR部門にも作品を出展し、PR部門で優秀賞を取った。(これも寺山風CMの装い)
『ラブラブ商店街 なわて』(カサイ徳造)
ワンカット長回しの作品。
ラブラブカップルが多い商店街をレポートするという内容で、レポータのカメラは、青果店の前で、たいやき屋の前で、オープンカフェで、イチャイチャベタベタしている3組のカップルを撮る。この三組は同じ男女が1人三役で演じておりカメラがカップルから離れ、建物などを写している間に衣装チェンジして次の場所に移動してイチャイチャするという具合だ。
さらにタイトルも、エンドクレジットもあらかじめ貼り付けておいた紙を撮影するなど、ワンカット長まわしに徹底的にこだわるところが素敵だ。独創性という点では突出していたように思う。
パン屋の軒先の看板の文字を「宮内庁御用」まで写しておいてから、そのままカメラを下に向けると、実は「宮内庁御用無し」と書かれている・・・といったベタギャグも面白かった。
『タイヤキ?』(上條誉寛)
商店街で友人にたいやきを買ってきてもらう男。ところが友人が持ってくる鯛焼きは中身がソーセージだったり、クリームだったり、チョコだったり・・・あんこの入った鯛焼きが食べたい主人公と、その思いが伝わらず変な鯛焼きばかり買ってくる友人とのやりとりをコミカルに描く。
『松本カオス』(百瀬純一)
松本駅前の広場でたむろしていた若者たちが、広場の警備員と喧嘩になり、若者たちは走って逃げる。警備員は走って追う。
スピード感あるチェイスシーンが印象的だ。
疾走シーンは「寄り」より「引き」を多用し、画面の端から端へと全速力で駆け抜ける様を描き、俳優の誤魔化しの利かない全力パフォーマンスを余すところ無く写しこむ。超ロングでの駅前交差点での疾走などよく撮ったものだ
『まちのお菓子ぃ屋さん』(竹内雅人)
監督は撮影時は高3。卒業し東京の映像関係の専門学校に進学し、映画監督を目指すそうだ。
監督を目指すというだけあり、さすがに映像はしっかりしている。しっかりと三脚を使って撮った映像は構図の取り方も安定感があり、照明もどれくらい凝ったかは判らないが、人物の顔をしっかり綺麗に撮ろうと努力したのがわかる。
人物に感情移入させるため、そして会話劇であることもあり、バストショット中心のカット割りで、キャストの豊かな表情を余すところ無くおさめている。寄りと引きの使い方もソツなく。フォーカスは私の作品よりしっかり被写体にあっている。
音声もかなりクリアだが、あえて全ての台詞に字幕をつける。
ただしその字幕はバラエティ番組的目にやかましい字幕ではなく、字幕放送や、黒澤映画のDVDに付く字幕のような、配慮の行き届いたもの。後ろ向きの俳優が喋る台詞には (役名 : 台詞) という形式で字幕が付され、ロングショットでの特に細かい内容が重要ではない会話では (お菓子屋と客のやりとり) みたいな感じの字幕がつく。この丁寧さはいい。
ただ、なまじデキがいいため、ほんの数カ所ではあるが編集やカット割りのミスがかえって目立ってしまい損をしている。
同じ人物のカットが連続するのにカメラは位置を微妙に変えるだけでフレームサイズが変わらないところが一つ。
同一シーン内のカットのつなぎでなぜかフェードインがかかっていたところが一つ。
他にもその程度の些細な、しかし目立つミスが惜しい。
とはいえ、若干高校生でこれだけのクォリティを持っている方である。10年以内にはどこかの自主映画コンテストを制するか、あるいはそんなもの飛び越えてプロとして活動して有名になるかするだろう。
作品評価とは関係ないが、主要キャスト三人のルックスの良さは抜群だった。演技力も自主映画の枠内では水準よりずっと上で安心感がある。
『Winter of Memories』(上野晧平)
キャーッと赤面しそうな高校生の恋と青春ストーリー。エッチのない「Boy's be...」(←昔週刊マガジンで連載していた一話完結型恋愛漫画)みたいな。
死んだあの人にそっくりな人が現れる・・・というのは、漫画では「北斗の拳」のユリアとマミヤ、映画では「男たちの挽歌」とその続編でのマークとケンなど、ドラマ盛り上げの定番として皆に愛され続けてきたストーリーだ。そういう大人がどこかに置き忘れてきた熱い想いを再び思い出させるような、そんな王道ストーリーに真っ正面から取り組む姿勢に若さ恐るべしとの危機感を感じた。
校舎内を自由自在に使えるのが、高校生映画の強みだ。
短編映画部門の優秀賞受賞作
『Soulmate』(斉藤新・斉藤さやか)
自分の作品である・・・
主人公は、23世紀から前世の自分に会うためタイムトラベルしてきた大学生ユメナス。
前世の自分は、カエルの街ナワテのシンボル女鳥羽川で、絶滅したと思われたカエルを保護し、その功績による知名度から廃れかけていた松本の商店街を再生させることになる、歴史上の偉人。
しかし実際に会ってみると前世の自分は商店街を捨てて東京に引っ越そうとしていた。このままでは未来が変わってしまうと思い、ユメナスは思いとどまらせようとする。
オープニングの「霞の中たたずむ女」はテオ・アンゲロプロスにインスパイアされ・・・
中盤の飲み屋のシーンは小津安二郎にインスパイアというか、オマージュというか、ほぼパクリ。「東京物語」の笠智衆と東野英二郎の飲み屋のシーンを何度も見返してコンテを書いた。
自分で自分の批評をするのもなんなので、山崎貴監督から頂いた作品評を要約して記すことにする。
「クォリティが高くてびっくりしました。松本というせまい範囲の中でどれほどのものが集まってくるか不安なところもあったが、とてもレベルが高く、ちゃんとドラマになっているし素晴らしいなと思いました。
欲を言えば、短編という枠の中で描くにはスケールが壮大すぎる気がしました。もう少し枠にあった作品を作るともっと良くなるのではないかなと思います。
本当に基礎力があると思い、これからもっと凄い映画が作れるのではないかなと期待しているので、頑張ってください」
山崎監督。ありがとうございます!!!。
商店街PR部門
「ふるさとが恋しくなる」(横内究)
「ふりむけば」(林孝雄)
「ナワテノスタルジア」(広田謙一 (演劇実験室 経帷子))
15秒という短い枠の中で、商店街をPRするいわばCM。
3作品のエントリーがあり、どれも負けず劣らずの強いインパクトを与える作品でした。
こんな映像とれる人たちが松本にいたのか・・・との「発見」に単純にわくわく。
【映画祭全体について。審査委員・松本シネマセレクト代表・宮崎善文さんの総評 (要約)】
シネマセレクトを主催し、25年間映画上映を行ってきました。1日でも多く、1本でも多く、松本では映画館にかからない映画を上映したくて活動を続けてきました。
そうした活動を続けていく中で、新聞、雑誌、ラジオ等のメディアから、映画批評を依頼されることもありのましたが全て断ってきました。
自分の役目は映画をリングに上げることで、ジャッジすることではないとの信念があったからですが、今回、商店街映画祭の目的を聞き、その意義に共感しまして、初めてジャッジする側に立たせていただきました。
昔、70年代くらいのころのお父さんお母さんの撮ったホームムービーは、他人が観ても面白かったものです。
なぜなら当時8mmフィルムは非常に高価(1巻3分で1巻につき2000~3000円のコスト)でしたので、ホームムービーといえども、いいポジションを取り、しっかりした映像を撮っていました。
しかし、最近ではビデオが普及したことにより、ホームムービーは(人垣の後ろからカメラを高く掲げて撮る様な)適当な撮り方になっているので、他人が観てもつまらないものになっているのです。
1ショット1ショットを丁寧にしっかり撮られた映像は面白いのです。
これからも自主映画を撮ろうと思っている人たちは、適当に撮ろうとせず、ショット一つ一つをそれこそ死ぬ気で撮っていってください。
【特別審査委員 山崎貴監督の総評】
第1回にしては立派な映画祭になったと思っています。レベルの高さ、基礎力の高さに驚きました。
今後も第二回、三回と続けていくことでレベルはどんどん高くなっていくと思います。
そしてクォリティだけでなく人の心に迫る作品を頑張って作ってください。
それから、選には漏れてしまいましたが、「まちのお菓子ぃ屋さん」はとても好きでした。
『商店街映画祭 ALWAYS 松本の夕日』は、昭和レトロな雰囲気を持つ松本市内のナワテ商店街と中町商店街の共催による自主映画コンテストです。
商店街の振興と、松本の映画文化発展のため、・[商店街をテーマに]・[商店街で期間内に撮影し]・[10分以内で]という三つのしばりをあえて設けた上で、多くのクリエイターに自主映画を作ってもらおうという企画でした。
松本発の自主映画制作の場をということで、商店街には全面協力していただき、指定された撮影期間内は、商店街でのロケは基本フリーパスでした。とても撮りやすかったです。
そして特別審査員として松本出身の山崎貴監督(「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズの)を迎え、上記の短編映画部門と、商店街PR部門(15秒CM)、モバイル部門(携帯電話の動画機能で撮った作品)の三部門で作品を募集しました。
映画祭の最優秀賞には不肖私と、私の妻とで監督した「Soulmate」が選ばれました。
山崎監督より賞状を授与され、副賞として商店街の様々なお店から出していただいた様々な賞品を頂きましたが、とりわけ、バレーボールくらいの大きさのグレープフルーツみたいな柑橘類が強烈なインパクトを与えます。
(ど・・・どうやって食ったらいいんだ)
表彰式の様子。右が山崎監督。左が私。
山崎監督はとてもスマートで背の高い方で、微妙にオダギリジョーっぽい風貌をしておられます。
マイクの高さが低いのでややかがみ気味の姿勢で喋られることが多く、ちょっと窮屈そうでした。
記念撮影にも二つ返事でいいですよと応じてくださるなど、とても気さくな方で、ヒット監督というより「いい兄ちゃん」みたいな印象を受けました。
「ブログに写真乗載っけてもいいですか」と聞くと、「どうぞどうぞ」と、これも軽く応じてくださいました。
ちなみに、制作準備中の次回作の話もチラリとしてくれたのですが・・・まだ制作発表前なのに言いふらしすぎるとプロデューサから怒られたとか言っておりましたので、ここでは書きません。会場にいた人たちだけの耳より情報ってことで・・・へへへ
それから私、生まれて初めて「囲み取材」を受けました。(といっても三社、中日新聞と松本市民タイムズと、タウン情報)
2008/3/31の中日新聞・長野総合ページに記事が掲載されていました↓
それからケーブルテレビのテレビ松本で、高校生たちと私の撮影・編集現場を取材したものと、授賞式の様子のドキュメント、および受賞作が放送されるそうです。4月末。でもうちにはケーブルがないので観れません。
*************
とりあえず、『商店街映画祭 ALWAYS 松本の夕日』で鑑賞した短編映画部門の作品の私なりの感想を記していきます。
(感想はですます調でなく、書きやすい、・・だ・・である調で書いていきます。)
エントリー作品上映前の、松本地域の自主映画作家たちの作品上映より
『僕らの宇宙戦争』(寿小学校のみなさん)
寿小学校の生徒たちが作った映画。担任の先生は昔「エビ天」で放送されたこともある「映画先生」
作品は基本的には生徒たちがカメラを使い、照明を使い、マイクを持ち、監督している。出演も全員生徒のみなさん。
脚本には先生の名前が。それからブルーシート撮影による、ミニチュア合成や、CGによるエフェクト全般と編集は先生がやったと思われる。
全世界に宣戦布告した宇宙人は、子供たちに戦いを申し込み、子供たちが勝てば侵略はやめる、負ければ侵略開始と、条件を突きつける。しかも子供たちが逃げ出せないよう、クラスメイトの女の子をさらっていく。
戦いの方法は子供たちが決めていいと言う。子供たちはドッヂボールで戦うことにする。
演じているのは子役俳優でも何でも無い普通の子供たちなので、もちろん演技は上手くはない・・・のだが、頑張っている子供たちの姿は技術力・表現力云々よりも大人を熱くさせる。
何と言っても、侵略者の宇宙人も子供たちが演じているのだ。
「フッ、下等生物め」とか「ふふふ、どうした、それまでか」「なに、バカな」・・・みたいな、みんなが大好きな「悪の台詞」を子供たちが熱演するのだ。面白くないはずが無い。
宇宙船に潜入した女の子(実は人間に味方する裏切り者宇宙人)が、キック一発で見張りを仕留めるシーンにも、熱く心をたぎらせるものがある。
CGとミニチュアで描かれた、宇宙船団の総攻撃でついには惑星が爆発する記録映像(地球人脅し用)も、やはりスター・ウォーズに燃えた大人たちを大喜びさせるものがある。
「ヒロイン、幻惑世界でピンチになるの巻」など、ヒロインが(イケメン男に助けられたりせず)自力でピンチを脱し、敵に打ち勝つ姿に、真面目な話で、強烈かつ壮快なフェミニズムを感じる。
男たちは女に教えられて成長し女のために戦うのだが、一方で女たちは信念のため、あるいは己の誇りのために戦う。
ドッヂボールで一人フィールドに残り、ひたすら逃げて逃げて耐え抜く女の子、幻惑世界を操る敵と戦う人間の味方の女の子宇宙人オメガ、そして石化の恐怖に打ち勝ちついに気象コントロール装置を破壊する女の子。
そう、これは宮崎駿映画に通じる強い強いヒロインパワー炸裂の映画なのだ。
短編映画部門の感想
『松本に未来はあるか』(柳澤孝夫)
縄手・中町商店街の戦中、戦後の在りし日の写真やイラストの絵葉書を紹介しながら、「商店街の未来」について、商店街の方々と考えていくドキュメンタリー作品。
『a day in the life』(下垣浩)
寺山修二作品の上演、あるいは寺山的世界観を踏襲したオリジナル台本での演劇活動を続ける、松本のアマチュア劇団「演劇実験室 経帷子」による作品。昭和初期を彷彿させる登場人物たちが織り成す幻想的な映像詩。ポスタライズ処理された画像がもともと白塗りメイクに極彩色のキャラたちをさらに、サイケな印象に変える。
もともと縄手商店街というところは、昭和レトロ感をコンセプトにしたような場所なので、寺山的映像詩のロケ場所としてはうってつけ。
というか、この劇団は前からよくなわて通りで路上演劇などをやっている。
だが今回は台詞なし、明確なストーリーがあるでもなく、映像詩に徹した。
・・・ところが、上映が終わるやいなや会場に映像と同じ衣装・メイクの俳優たちが現れ、客席を縫ってスクリーンの前に立ち、台詞を喋る。
映像と演劇の融合による実験芸術は、これも寺山修二へのオマージュと言える。
「経帷子」の芝居を何度も見た人たちなら、やってくれると思ったぜ的な経帷子節全開が楽しい。「経帷子」も寺山修司も知らない方々には「ぽかーーーん・・・・」だったかも。ま、でもこの客に媚びない「経帷子」の姿勢は私はかっこいいと思う。
ちなみに経帷子は、モバイル部門、15秒の商店街PR部門にも作品を出展し、PR部門で優秀賞を取った。(これも寺山風CMの装い)
『ラブラブ商店街 なわて』(カサイ徳造)
ワンカット長回しの作品。
ラブラブカップルが多い商店街をレポートするという内容で、レポータのカメラは、青果店の前で、たいやき屋の前で、オープンカフェで、イチャイチャベタベタしている3組のカップルを撮る。この三組は同じ男女が1人三役で演じておりカメラがカップルから離れ、建物などを写している間に衣装チェンジして次の場所に移動してイチャイチャするという具合だ。
さらにタイトルも、エンドクレジットもあらかじめ貼り付けておいた紙を撮影するなど、ワンカット長まわしに徹底的にこだわるところが素敵だ。独創性という点では突出していたように思う。
パン屋の軒先の看板の文字を「宮内庁御用」まで写しておいてから、そのままカメラを下に向けると、実は「宮内庁御用無し」と書かれている・・・といったベタギャグも面白かった。
『タイヤキ?』(上條誉寛)
商店街で友人にたいやきを買ってきてもらう男。ところが友人が持ってくる鯛焼きは中身がソーセージだったり、クリームだったり、チョコだったり・・・あんこの入った鯛焼きが食べたい主人公と、その思いが伝わらず変な鯛焼きばかり買ってくる友人とのやりとりをコミカルに描く。
『松本カオス』(百瀬純一)
松本駅前の広場でたむろしていた若者たちが、広場の警備員と喧嘩になり、若者たちは走って逃げる。警備員は走って追う。
スピード感あるチェイスシーンが印象的だ。
疾走シーンは「寄り」より「引き」を多用し、画面の端から端へと全速力で駆け抜ける様を描き、俳優の誤魔化しの利かない全力パフォーマンスを余すところ無く写しこむ。超ロングでの駅前交差点での疾走などよく撮ったものだ
『まちのお菓子ぃ屋さん』(竹内雅人)
監督は撮影時は高3。卒業し東京の映像関係の専門学校に進学し、映画監督を目指すそうだ。
監督を目指すというだけあり、さすがに映像はしっかりしている。しっかりと三脚を使って撮った映像は構図の取り方も安定感があり、照明もどれくらい凝ったかは判らないが、人物の顔をしっかり綺麗に撮ろうと努力したのがわかる。
人物に感情移入させるため、そして会話劇であることもあり、バストショット中心のカット割りで、キャストの豊かな表情を余すところ無くおさめている。寄りと引きの使い方もソツなく。フォーカスは私の作品よりしっかり被写体にあっている。
音声もかなりクリアだが、あえて全ての台詞に字幕をつける。
ただしその字幕はバラエティ番組的目にやかましい字幕ではなく、字幕放送や、黒澤映画のDVDに付く字幕のような、配慮の行き届いたもの。後ろ向きの俳優が喋る台詞には (役名 : 台詞) という形式で字幕が付され、ロングショットでの特に細かい内容が重要ではない会話では (お菓子屋と客のやりとり) みたいな感じの字幕がつく。この丁寧さはいい。
ただ、なまじデキがいいため、ほんの数カ所ではあるが編集やカット割りのミスがかえって目立ってしまい損をしている。
同じ人物のカットが連続するのにカメラは位置を微妙に変えるだけでフレームサイズが変わらないところが一つ。
同一シーン内のカットのつなぎでなぜかフェードインがかかっていたところが一つ。
他にもその程度の些細な、しかし目立つミスが惜しい。
とはいえ、若干高校生でこれだけのクォリティを持っている方である。10年以内にはどこかの自主映画コンテストを制するか、あるいはそんなもの飛び越えてプロとして活動して有名になるかするだろう。
作品評価とは関係ないが、主要キャスト三人のルックスの良さは抜群だった。演技力も自主映画の枠内では水準よりずっと上で安心感がある。
『Winter of Memories』(上野晧平)
キャーッと赤面しそうな高校生の恋と青春ストーリー。エッチのない「Boy's be...」(←昔週刊マガジンで連載していた一話完結型恋愛漫画)みたいな。
死んだあの人にそっくりな人が現れる・・・というのは、漫画では「北斗の拳」のユリアとマミヤ、映画では「男たちの挽歌」とその続編でのマークとケンなど、ドラマ盛り上げの定番として皆に愛され続けてきたストーリーだ。そういう大人がどこかに置き忘れてきた熱い想いを再び思い出させるような、そんな王道ストーリーに真っ正面から取り組む姿勢に若さ恐るべしとの危機感を感じた。
校舎内を自由自在に使えるのが、高校生映画の強みだ。
短編映画部門の優秀賞受賞作
『Soulmate』(斉藤新・斉藤さやか)
自分の作品である・・・
主人公は、23世紀から前世の自分に会うためタイムトラベルしてきた大学生ユメナス。
前世の自分は、カエルの街ナワテのシンボル女鳥羽川で、絶滅したと思われたカエルを保護し、その功績による知名度から廃れかけていた松本の商店街を再生させることになる、歴史上の偉人。
しかし実際に会ってみると前世の自分は商店街を捨てて東京に引っ越そうとしていた。このままでは未来が変わってしまうと思い、ユメナスは思いとどまらせようとする。
オープニングの「霞の中たたずむ女」はテオ・アンゲロプロスにインスパイアされ・・・
中盤の飲み屋のシーンは小津安二郎にインスパイアというか、オマージュというか、ほぼパクリ。「東京物語」の笠智衆と東野英二郎の飲み屋のシーンを何度も見返してコンテを書いた。
自分で自分の批評をするのもなんなので、山崎貴監督から頂いた作品評を要約して記すことにする。
「クォリティが高くてびっくりしました。松本というせまい範囲の中でどれほどのものが集まってくるか不安なところもあったが、とてもレベルが高く、ちゃんとドラマになっているし素晴らしいなと思いました。
欲を言えば、短編という枠の中で描くにはスケールが壮大すぎる気がしました。もう少し枠にあった作品を作るともっと良くなるのではないかなと思います。
本当に基礎力があると思い、これからもっと凄い映画が作れるのではないかなと期待しているので、頑張ってください」
山崎監督。ありがとうございます!!!。
商店街PR部門
「ふるさとが恋しくなる」(横内究)
「ふりむけば」(林孝雄)
「ナワテノスタルジア」(広田謙一 (演劇実験室 経帷子))
15秒という短い枠の中で、商店街をPRするいわばCM。
3作品のエントリーがあり、どれも負けず劣らずの強いインパクトを与える作品でした。
こんな映像とれる人たちが松本にいたのか・・・との「発見」に単純にわくわく。
【映画祭全体について。審査委員・松本シネマセレクト代表・宮崎善文さんの総評 (要約)】
シネマセレクトを主催し、25年間映画上映を行ってきました。1日でも多く、1本でも多く、松本では映画館にかからない映画を上映したくて活動を続けてきました。
そうした活動を続けていく中で、新聞、雑誌、ラジオ等のメディアから、映画批評を依頼されることもありのましたが全て断ってきました。
自分の役目は映画をリングに上げることで、ジャッジすることではないとの信念があったからですが、今回、商店街映画祭の目的を聞き、その意義に共感しまして、初めてジャッジする側に立たせていただきました。
昔、70年代くらいのころのお父さんお母さんの撮ったホームムービーは、他人が観ても面白かったものです。
なぜなら当時8mmフィルムは非常に高価(1巻3分で1巻につき2000~3000円のコスト)でしたので、ホームムービーといえども、いいポジションを取り、しっかりした映像を撮っていました。
しかし、最近ではビデオが普及したことにより、ホームムービーは(人垣の後ろからカメラを高く掲げて撮る様な)適当な撮り方になっているので、他人が観てもつまらないものになっているのです。
1ショット1ショットを丁寧にしっかり撮られた映像は面白いのです。
これからも自主映画を撮ろうと思っている人たちは、適当に撮ろうとせず、ショット一つ一つをそれこそ死ぬ気で撮っていってください。
【特別審査委員 山崎貴監督の総評】
第1回にしては立派な映画祭になったと思っています。レベルの高さ、基礎力の高さに驚きました。
今後も第二回、三回と続けていくことでレベルはどんどん高くなっていくと思います。
そしてクォリティだけでなく人の心に迫る作品を頑張って作ってください。
それから、選には漏れてしまいましたが、「まちのお菓子ぃ屋さん」はとても好きでした。
でかいグレープフルーツみたいなのは、ふつうのみかんみたいに
剥いて食べるんです。高いはずですよ!
映画の内容は見てないからなんともいえないんですが、
モバイル部門があったり、一回目にしてはすごく練った感じがする映画コンテストですね。
松本のイメージが具体的にないからよくわかんないんですけど、商店街復興企画としてはかなり面白そうです。
山崎監督、いい人なんだ。金城くんに「ゲームオフ会なんか参加すんなよ!」
って怒ってたけど・・・。
70年代のホームムーヴィー、ウチにもあります。
再生するのが大変だからもう長いこと見てないけど・・・。
ありがとうございます。
でかい柑橘類は文旦というやつでした。美味かったです。皮はママレードにするため、現在水に浸し中です。
そういやあ、「リターナー」で一緒に仕事してたんですよね。
あのお2人。あれから2人とも大物になったものだ
ユンファの代役に挑んだ「レッドクリフ」はどうなってしまうのか、心配かつ楽しみです。
本当にすごいですね!!
おめでとうございます!!
是非是非作品を拝見したいものです。
近いうちにお祝いを贈らせていただきます。
これからも応援していますよ~♪
おおよそ、どなたか想像はつきます・・・
応援されればされるほどもっと調子に乗って頑張るので、応援よろしくです
お祝い届きました
・・・ってここに書いて、伝わるかな?
だって年賀状に、メアドも電話番号も書いてないんだもん
頂いた、とってもおいしいお酒を飲みながら、これを書いています。
妻も喜んでおりました。
「あの人だよ、ほらエディ第一作のエディガールだよ」と言うと、「ああ、あの人ね」と伝わります。自主映画って便利ですね。
後日、作品をDVDに焼き、発送いたしますね。
やったーー!!
作品送ってくれるのね!?
とっても嬉しいです~(*^▽^*)
奥様によろしくお伝えください♪
メールアドレスその他、
お知らせしてなかったでしょうか・・・(^^;;
すみません・・・後でメールしますね。
大変遅くなりましたが、やっと「商店街映画祭」のレポート記事を当ブログでも掲載させていただきました~。
しんさんご夫妻の作品についても触れさせていただいたので、もし掲載内容で何か間違っている箇所などがありましたら、遠慮なくおっしゃってくださいね。
それから、改めて最優秀賞おめでとうございます!
グレープフルーツのような賞品の数々が、長野ならではといった感じで和みますね~♪(^^)
私も映画祭に参加できて楽しかったです。
今回は主人が体調を崩して参加できなかったので(私は友達と一緒に参加しました♪)、とても残念がっていました。。
本当ならご挨拶したかったのですが、またこういう映画祭などでお会いできる機会がありましたら、楽しみにしていますね!
余談ですが、私達夫婦は岡谷市に住んでおります。
こんな近くに同じ映画ファンのご夫婦がいらっしゃることはとても嬉しいですね。
また、これからもどうぞ宜しくお願いします。
TBさせていただきました。
岡谷にお住まいでしたか
岡谷スカラ座はけっこう好きな映画館です。
松本エンギザと1時間遅れで同じ映画上映したりすることが多く、エンギザに間に合わない時は岡谷スカラ座に行ったりします。スクリーンの数も多いし、値段も50円やすいですしね
もし蓼科高原映画祭とか、うえだ城下町映画祭とかに入選したら、気軽にお声かけて下さいまし
これからもよろしくです