自主映画制作工房Stud!o Yunfat 改め ALIQOUI film 映評のページ

映画作りの糧とすべく劇場鑑賞作品中心にネタバレ徹底分析
映画ブロガーら有志23名による「10年代映画ベストテン」発表!

レジェンド・オブ・ゾロ [監督 : マーティン・キャンベル]

2006-01-25 02:23:30 | 映評 2006~2008
「スクラップ・ヘブン」を観てから、何日か後にこれを観て、思った事。
話の中盤あたりで、「衝撃が加わると爆発する薬品」をチラつかせたなら、ラストではそれを大爆発させなきゃならないのだよ、李相日くん。マーティン・キャンベルを見習ってくれよ。

***************
ストーリー解説
昔々、アメリカ合衆国に併合される前のカリフォルニアに、親子三人の仲良し家族がいました。
かっこいい父親、美人の母親、かわいい息子、経済的にも恵まれ、家系もよく、近所とも仲良し
何にも問題は無さそうな家族ですが、ただ一つ、普通の家族と決定的に違っているところがありました。
お父さんはコスプレマニアだったのです。
お父さんはコスプレで素顔を隠して街に繰り出します。街でも大人気。街の人々はコスプレした父親を"ゾロ"と呼び、"ゾロ"が現れると、拍手と大歓声で出迎えます。
"ゾロ"は決して悪を許しません。悪党が現れると、いつの間に上ったのか、とにかく奴らの目線より高いところに立ち、完全に悪党を見下します。やたら挑発的な派手派手衣装ですが、あまり気にせずその派手派手衣装で潜入工作や偵察なども行います。いつも薄ら笑いを浮かべ、戦いも8分くらいの力で、いくらか余裕を残して勝利します。悪党どもに屈辱を味わわせつつ成敗します。ちょっと性格悪い気もします。でも街の人々はそんな"ゾロ"を心底愛しています。
そんなこんなで、すっかりいい気になってコスプレを止められないお父さんですが、最近はちょっとやりすぎかも知れません。
投票にもコスプレをして出かけます。変身前と変身後の両方で投票してたら明らかに選挙違反です。さすがに、そんなことしてないかもしれませんが、秘密投票こそ民主主義の根幹だという意見を一蹴するような自己顕示欲丸出しの投票を行います。なんと、投票用紙の記入欄に「Z」と大きく書いているのです。あの投票が無効にならないか心配です。一票くらいいいだろ、などと思っていたととしたら厳重に抗議したいところです。
さて、そんなお父さんに、お母さんは、家庭とコスプレどっちが大事なのよ!!とヒステリックにわめき散らし、家庭崩壊の兆しまで見えています。でも実は、言動をよくよく観察してみれば、お父さんとお母さんは実に似たもの同士だとわかります。身体能力といい、悪い奴を見ると考えるより前に体を動かすところといい・・・。お父さんに、頼むからコスプレやめてくれと言ってはいますが、お父さんに言わせりゃ社交界でゴージャスな衣装に身を包むお前と、そんなに違いがあるのかよ!!ってな感じです。
そんな2人ですが、一人息子には、父親のコスプレ趣味をひた隠しにしています。しかし困った事に、息子は父親のコスプレ化した姿が大好きで、リスペクトしており、常に「こんな時"ゾロ"ならどうするだろう」と考えながら行動します。100%勝てそうにない上に人殺しなど屁とも思っていない悪党にも、自由か!死か!! とでも叫びかねない勢いで、攻撃を加えます。"ゾロ"に憧れてるが故の行動です。勇気と無茶は違うということを教えてこなかった両親の責任は重大です。
ただここで注意して欲しいのは、息子は"ゾロ"に憧れ、"ゾロ"になろうとして行動をしているわけですが、彼はけっしてコスプレするでもなく、マスクで顔を隠すでもなく、堂々と素顔をさらし、実名を名乗って行動します。"ゾロ"の外見ではなく、彼の熱い闘志あふれる"内面"を尊敬しているのです。"ゾロ"というイミテーションではなく、そのコスプレの中に隠された男の本質を愛しているからこそ、父親は嬉しいのです。もっとも、息子は単に「ぶっちゃけあの格好、バカっぽいよね、あれだけは真似したくないなあ」と思っているだけかもしれません。

父親のコスプレ狂いが理由の一つにもなって、夫婦は別居状態になりました。お父さんっ子の息子は主に父が面倒みているようです。妻がいなくなってから、酒に溺れる日々が続く父親です。これがジョン・ボイト主演の「チャンプ」か、チョウ・ユンファ主演の「過ぎゆく時の中で」だったら、息子のことをわざとなじり、罵り、嫌いだから出てけ!!とか言って、息子を元妻のもとにレッティング・ゴー、息子がどっか行ってから自分一人泣き崩れるところです。・・・が、どんな理由があろうと子供につらい思いをさせてはいけないラテン血統のお父さんはそんなことしません。
でもあるとき、ろくでもない陰謀が進行して、スパイ気取りの母親と、"ゾロ"気取りの息子が悪の組織に捕まってしまいました。救出に向かったお父さんも、結局捕まり、そして、息子の前でマスクを剥がされるという屈辱を受けます。

この時の息子の気持ちは
1) 憧れの"ゾロ"がパパだったなんて、うれしー
2) げ、あの変態コスプレ野郎、親父かよ!! きも!!

のどちらだったのでしょうか?
どうでもいいですが、アメリカのヒーローたちは、目の周りを黒くしたり、普段かけてる眼鏡を外したりするくらいで、めったに正体がばれないのはどうしてでしょう。息子とゾロが喋っているシーンで「お父さんなら・・・」とゾロが言ったりすると、バレバレだよ・・・と笑いがこみ上げてきます。

ま、ともかく、その後は家族がピンチをチャンスに変え大逆転して、悪党どもは全員爆死します。
そしてお父さんは、息子にいいます。「お前に(コスプレマニアであることを)隠していたのは間違いだった。これからは家族に嘘も隠し事も無しだ」
そうです!!変態はうしろめたい気持ちを持っていてはいけません。堂々と自信満々に変態であることに誇りを持たなくてはいけません!!
そうしてお母さんとヨリを戻したお父さんは、息子の前で情熱的なキッスをし、さらにまた懲りずにコスプレして街に繰り出していきます。
「ALWAYS 三丁目の夕日」をちょっと彷彿とさせる、憧れや希望のような感情を抱いて夕日の向こうを眺める母親と息子。しかし2人が見ているのは完成した東京タワーではなく、家族から完全公認された父親のコスプレ姿でした・・・・・

*************

バンデラスとキャサゼタの余裕のバカ演技が最高!!な超感動作でした。


ところで、マーティン・キャンベルって監督が好きです。
この人、アクションシーンの中におけるサスペンス描写が上手いです。
つまんない脚本の映画が多いけどアクションシーンはいつも抜群に面白いです。
「状況」を写し、「状況を判っていない人間」を写し、「状況を判っている人間」を写し、それらを編集で繋ぎます。結果、非常にスリリングなシーンが出来上がります。
「ゴールデン・アイ」の冒頭と中盤の爆弾のタイマーを巡るやりとり
「マスク・オブ・ゾロ」の地下牢みたいなとこから脱出するシーン
「バーティカル・リミット」における爆薬がらみの描写全て
「バーティカル・リミット」における、クレバスの中と外を交互に繋ぎ、お互い知る由もないところで、影響を与え合うところ
(爆弾の扱いが上手い監督だということに、今 気がついた)

今作で、その点で一番素晴らしかったのは、バンデラスが汽車に仕掛けた爆弾を外すところです。
敵からくすねたニトログリセリンの瓶を、貨車に仕掛け悪党一味とニトロの山をまとめて吹っ飛ばそうとするバンデラス。
導火線に火を付け後は遠くへ逃げるだけ
・・・と思ったら、悪党どもが妻と息子を連れて、汽車に乗り込もうとしている。
やっべー!!
爆弾を解除するため、敵に見つかるのもかまわず、派手な衣装で全力疾走。
いっぱつで敵に見つかり、弾丸が飛び交う中、走る走る。
敵に撃たれちゃう!!危ない!!というスリル + もし撃たれて走れなくなったらキャサゼタもろとも爆死!! というスリル
ニトロ瓶の導火線に火がついているという状況を敵たちが知らないものだから、このようなスリリングなシーンとなります。

キャンベルは007の最新作の監督に内定しているそうです。ピアース時代で個人的に一番好きな「ゴールデン・アイ」の監督に戻って良かった良かった。世界一の爆弾使いマーティン・キャンベルのアクション演出に期待

*******
↓面白かったらクリックしてね
人気blogランキング

自主映画撮ってます。松本自主映画製作工房 スタジオゆんふぁのHP

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 輪廻 [監督 : 清水崇、主演 ... | トップ | 東京スポーツ映画大賞 (2005) »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
マーティン・キャンベル (kossy)
2006-01-25 08:45:16
そんなに爆弾好きの監督だったのですね・・・

そういや『すべてを愛のために』だって、手榴弾と地雷の爆発ばかりだった。
返信する
すべてを愛のために (しん)
2006-01-29 07:47:00
そういえば、そんな映画ありましたね。

公開時はスルーしたけど、キャンベル=爆弾に気付いた今は観たくてたまらないです
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

映評 2006~2008」カテゴリの最新記事