以下、蓼科高原映画祭の入選作10作品の私なりの感想です。
入選しただけの男が偉そうに語る事をお許しくださいませ。
グランプリ「ふたつの傘とひとつの心」 湯本美谷子 10分00秒 (叙情詩)
感想
どう考えても格上な一作。詩情豊かな作風が心地よい。ワンショットワンショットが一々美しい。ホタルのCGはこないだ見たドラマ版「火垂るの墓」のCGより数段美しい。
脳裏をよぎるのは井口奈己の「犬猫」だったり、是枝裕和の「幻の光」やトラン・アン・ユンの「夏至」や市川準の諸作品や・・・ってことは必然的に小津のイメージも頭をよぎる。けれどもそれはパクリでも模倣でもインスパイア(avex的な意味で)でもなく、影響を受けつつも咀嚼され再構築され熟成されて、作者独自のほぼ完成形に達した世界となっている。またそれをイメージ通りの形にするだけの技術もある。かなり近い将来日本映画界を活気づかせる監督なのではないでしょうか?
正直言ってこんな凄いものが出品されてると、私のような弱小自主映画団体の作品などかないっこありません。
16mmでの撮影。予算は60万円くらい。10数名のスタッフ・キャストを実家に泊まり込めて4日で撮影したといいます。スタッフ10数名って・・・。キャストも含めて多くて5~6名くらいの撮影現場しか知らない私です。照明やマイクなんて手の空いてるキャストが持つのが常識な私です。
準グランプリ「サクラサクラ」 山口誠 13分28秒 (子供ドラマ)
物語・・・4月1日。主人公の男の子は、お姉ちゃんにエイプリルフールの嘘に何度もだまされる。それはさておき男の子は好きな女の子が引っ越しするという話を聞き落ち込んでいる。桜が咲いたら女の子は引っ越してしまうと親から聞いていた。お姉ちゃんは冷やかし半分で会いにいきなと言うが、男の子は中々踏ん切りが付かない。
感想
これも相当レベルの高い映画。登場人物は5歳くらいの男の子と女の子の2人。この2人プロの子役俳優かと思うくらい演技が上手い。ところが完璧ドシロウトの子供と聞いて、さらにびっくり。つまり演技を付けるという意味での演出がすごく上手いということです。物語もよく出来ているし、撮影も丁寧。でもやっぱ子供2人のほがらかさが作品を包み込み、観ていていい気分にさせる。グランプリも充分狙えるレベルの作品。
惜しいのは多用しすぎたフェードアウト/フェードインによる場面転換。
特に以下のふたつ
(1)お姉ちゃんが曲がり角の先の桜の木を見に行って「桜咲いてなかったよ」と言い、それを聞いた男の子が喜んで角を曲がるシーンと、その次の満開の桜を見つめる男の子のシーンへのフェードアウト/フェードイン
(2)男の子がマンションの玄関で女の子に「元気でね、また会おうね」とお別れを告げるシーンから、マンションのドアが閉まり男の子が小躍りして去っていくシーンの繋ぎにおけるフェードアウト/フェードイン
あくまで自分の考えだけど、フェードアウト/フェードインによる場面転換は、あるシーンと別のシーンの間に存在する物語上不必要な時間を省略するために使う手法だと思う。
(1)の場合は明らかに連続した時間の流れなのにフェードアウト/フェードインを使っている。画面が一旦暗くなるので感情移入が途切れる。これが舞台劇だとしたらあそこで暗転するのはやっぱり変。
(2)の場合、女の子と男の子の間に交わされたであろうやりとり、物語上必要な要素、が省略されており、エピローグでの男の子とお姉ちゃんの会話が成立しない(エピローグでの男の子の発言は全部エイプリルフールの嘘なんだとも解釈できるけど、でも「ヒナちゃんとの約束も嘘かなあ」と男の子が心配そうに言うし…)
せめてこの二つだけでも違う処理をしていれば、グランプリの結果は違っていたかもしれない。
入賞「その先にあるもの」 中里洋一 21分00秒 (スポコン)
物語・・・サッカーに青春の全てをかける男2人。全国大会に出場してスポーツ推薦で大学に行きたい主人公(フォワード?)と、高校卒業後は板前として家を継ぐ事を決めている友人(ゴールキーパー)。しかし主人公はPKを外し全国大会出場の夢は断たれる。自暴自棄になった主人公に板前修業を始めた友人はプロチームの入団テストを受けるよう薦める。
感想
日活芸術学院の卒業制作作品。16mm。基本に忠実な丁寧なカット割り。撮影、照明にも一切ミスはなく映画作りの教科書代わりに使いたくなる作品。シナリオも実にストレートで解りやすい。予定調和と批判するんでなく、スポコンに変化球はいらない、という信念に基づく狙いなんだと解釈。「奴は絶対に低めを狙う筈だ!!」というモノローグなどめちゃめちゃ解りやすい展開は、昔なつかしい少年誌スポコン漫画を彷彿とさせ、観ててニヤニヤさせられる。
入賞「プレイボール!」 木場明義 13分01秒 (ドタバタ)
物語・・・先輩の彼女を横取りした事が先輩にばれ、激怒した先輩がバット振り回して追いかけてくるのをひたすら走って逃げる主人公。逃げる途中で出会った腰にタオル巻いただけの裸の男。彼は浮気が彼女にばれ、包丁振り回して追ってくる彼女から逃げていた。
感想
音声が一部聞き取り難いとか、カメラの手ぶれとか、激怒してるキャラの顔が笑ってるとか、突っ込みどころは多々あれど、複数のドラマを絡み合わせるシナリオはよく出来てるし、あの手この手と様々なギャグが盛り込まれてて笑えるし、なによりひたすら走って走ってという展開がいかにもスラップスティックで、ぐいぐい引き込まれる。要所要所に入るインパクト抜群の音楽も映画を盛り上げる。
入選「ensemble」 吉野雄大 12分12秒 (ドラマ)
物語・・・いびきの大きい彼女と同棲している主人公。いびきに悩まされ眠れないこともしょっちゅう。その彼女が突然死ぬ。ひとり残された主人公は感情の整理がつかず不眠症になる。ある日友人が忘れ物のカセットテープを届ける。それは彼女のいびきを録音したテープで、かつて飲み会ネタとしてでみんなに聞かせて彼女を傷つけた苦い思い出のテープだった
感想
個人的には一番感情移入できた。主人公の後悔の気持ちがひしひし伝わってくる。かつて眠りを妨げた彼女のいびきに癒されて眠りにつく彼の姿に涙が出そうになった。
主人公を演じた「池内万作」という方、どっかで聞いた名前だと思っていたら、パーティで吉野監督から聞いた話によると、「カナリア」の冒頭、谷村美月ちゃんとドライブしてる援交野郎役だって。ああ・・あの人か・・・と思ってるとさらに知らなかった事実を聞く。「あの人、伊丹十三の息子なんですよ」ガビーン!! つうことは宮本信子の息子ってことですか?と、無意味な質問を返しつつ、どういう生活送ればそういう人間とのコネができるのか想像もできません。ちなみにノーギャラで出演してくれたんだそうです。「亡国のイージス」にも出てた。
入選「討ち入りだよ!全員集合」 小川亮輔 9分00秒 (コント)
物語・・・忠臣蔵。ただし登場人物は黒めがねに黒スーツ。
感想
「七人の侍」そのまんまのオープニングクレジット(音楽こそ、ドンドンドドドン・・・ていう太鼓の音じゃなかったけど)にキャハハと一人笑い。
赤穂藩士たちが浅野内匠頭が吉良に斬りかかり切腹を命じられたことを熱い武士っぽい台詞で説明(ただしスーツ姿)。松の廊下や浅野切腹のシーンではフラッシュバックの代わりに黒子がふすまを開けて、隣室で浅野や吉良が演技をしているのを見せる。
仇討ちに無関心な大石内蔵助はほっといて浪士たちは隣室に討ち入りに行く。
あれれ、そういえばカット入んなかったんじゃない?9分ワンカットの映画ではなかろうか?もっかい観て確認したい。
ハイテンションで畳み掛ける物語展開に大笑い。
入選「高橋宗太郎と地獄の古本屋」 一之瀬輝 27分25秒 (人形アニメ)
感想
個人的には一番感銘を受けた作品。人形アニメ。予算として1億くらいもらえれば「ティム・バートンのコープス・ブライド」にも負けない傑作になるんじゃなかろうか?
オープニングの偽札組織の逮捕劇とアクション、中盤は推理劇を展開させ、終盤は悪魔の召還、スカイアクション、そんでクライマックスは飛行船の墜落と高層ビルの崩落・・・アニメの強みで自主レベルの実写では不可能なことを全部やってのける。
キャラデザインも秀逸。
カメラのズーム、ワイド、パンなどコマ撮りしなくても良さそうなカットでもコマ撮りして、統一感を持たせている、そのこだわり。エンドクレジット観る限り、声優と音楽とオープニング映像のイラストレーターを除けば、スタッフは監督一人!!その根性と根気にも脱帽
入選「鳥獣剣士 第三幕」 名取祐一郎 5分10秒 (絵巻物アニメ)
感想
これも感銘を受けたアニメ。水墨画の絵巻物をころころと開いていくかのような横スクロールの風景の中を歩くキツネくん。この絵が美しく、そのまま絵本にしてほしいくらい。上司のタヌキさんの命令で剣道の稽古につきあわされ、そして上司の語りだす熱い剣の道についての精神論。思いつきもしない手法と予測不可能な展開。5分という短さも良い。
「第三幕」ということは「第一幕」「第二幕」もあるのかな?あるなら観たい。
入選「Nature Calls Me~自然が呼んでいる~」 日高尚人 18分00秒 (特撮コメディ)
物語・・・テレビショッピングで瞬間空間移動便器を買った主人公。やってきた借金取りが瞬間移動してしまい・・・
感想
いきなり始まるテレビショッピングの映像が、実際のテレビショッピングみたいに凝っている。CGもかっこよく、ナビケーターのお姉さんもゲストで便器体験するイケメン俳優もノリノリの演技で、観ていて楽しくなる。本編における瞬間移動シーンの特撮もかっこいい。ストーリーもよくまとまっていてこれもほとんどプロレベルの作品。
入選「その悩み何バイト?」 齋藤新 18分20秒 (インターネット)
えーと、私の映画です。
チャットで人生相談なるものを初めてしまった主人公にある日舞い込んできた恋愛相談。その相談依頼者がバイトの同僚であることを知り・・・という感じの話。
インターネット上での文字のやり取りで展開するストーリー・・・といえば森田芳光の「HAL」とか岩井俊二の「リリィ・シュシュのすべて」、最近では「電車男」とか、発想としては決して新しくはない。それでもそれらの作品との差別化を図った点を挙げると、主人公はインターネットの外(現実世界)においてはひたすら観察者の立場を貫くこと、インターネットが自分ではなく自分をとりまく現実世界を変化させ仮想現実と現実の境界が失われていくところを描いたこと・・・って、自己弁護してるみたい。いや、ただの独り言です。
他の入選作と違う点。
・主題歌がありません(ほとんどの作品には主題歌が付いている。インディーズバンドとのコネでもあるのだろうか・・・)
・キャストとスタッフがかぶっている。
・多分、予算は一番かかっていない(ビデオテープなど消耗品、小道具、撮影後の昼飯、スタッフの駐車場代などで2~3万くらい)
金とか時間とかは言い訳に過ぎないと思いつつ、コネと組織力は重要だなと感じ、もちろん才能は必要だし、それ以上に努力と根性、他人を喜ばせるための創意工夫と斬新な発想。どれ一つとっても他の入選作には負けているなあ・・・
それでもこれだけハイレベルな中に自分の作品が潜り込めたのだ。そこに誇りを持って、他の映画祭にも出品していこう。
*************
審査委員長の大森一樹監督のビデオによる総評を要約すると・・
「様々なジャンルの作品が並び、それぞれのジャンルの中で優れた作品ばかりで、基本的には優劣の付けようが無かった。それでも小津映画祭ということで、いわゆる映画的な作品の中から入賞を選んだ」
とのことでした。
「映画的」とは恐らく「人間と人間のドラマを、撮影と照明+モンタージュなど古典的な映画技法を駆使して作り上げた作品」というような意味だと思います。
小津映画祭の入選作の多くは、すでに他の映画祭で入賞していたり、またこれから行われるあちこちの映画祭にも出品されると思います。機会があれば是非ご覧になってください。
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入選しただけの男が偉そうに語る事をお許しくださいませ。
グランプリ「ふたつの傘とひとつの心」 湯本美谷子 10分00秒 (叙情詩)
感想
どう考えても格上な一作。詩情豊かな作風が心地よい。ワンショットワンショットが一々美しい。ホタルのCGはこないだ見たドラマ版「火垂るの墓」のCGより数段美しい。
脳裏をよぎるのは井口奈己の「犬猫」だったり、是枝裕和の「幻の光」やトラン・アン・ユンの「夏至」や市川準の諸作品や・・・ってことは必然的に小津のイメージも頭をよぎる。けれどもそれはパクリでも模倣でもインスパイア(avex的な意味で)でもなく、影響を受けつつも咀嚼され再構築され熟成されて、作者独自のほぼ完成形に達した世界となっている。またそれをイメージ通りの形にするだけの技術もある。かなり近い将来日本映画界を活気づかせる監督なのではないでしょうか?
正直言ってこんな凄いものが出品されてると、私のような弱小自主映画団体の作品などかないっこありません。
16mmでの撮影。予算は60万円くらい。10数名のスタッフ・キャストを実家に泊まり込めて4日で撮影したといいます。スタッフ10数名って・・・。キャストも含めて多くて5~6名くらいの撮影現場しか知らない私です。照明やマイクなんて手の空いてるキャストが持つのが常識な私です。
準グランプリ「サクラサクラ」 山口誠 13分28秒 (子供ドラマ)
物語・・・4月1日。主人公の男の子は、お姉ちゃんにエイプリルフールの嘘に何度もだまされる。それはさておき男の子は好きな女の子が引っ越しするという話を聞き落ち込んでいる。桜が咲いたら女の子は引っ越してしまうと親から聞いていた。お姉ちゃんは冷やかし半分で会いにいきなと言うが、男の子は中々踏ん切りが付かない。
感想
これも相当レベルの高い映画。登場人物は5歳くらいの男の子と女の子の2人。この2人プロの子役俳優かと思うくらい演技が上手い。ところが完璧ドシロウトの子供と聞いて、さらにびっくり。つまり演技を付けるという意味での演出がすごく上手いということです。物語もよく出来ているし、撮影も丁寧。でもやっぱ子供2人のほがらかさが作品を包み込み、観ていていい気分にさせる。グランプリも充分狙えるレベルの作品。
惜しいのは多用しすぎたフェードアウト/フェードインによる場面転換。
特に以下のふたつ
(1)お姉ちゃんが曲がり角の先の桜の木を見に行って「桜咲いてなかったよ」と言い、それを聞いた男の子が喜んで角を曲がるシーンと、その次の満開の桜を見つめる男の子のシーンへのフェードアウト/フェードイン
(2)男の子がマンションの玄関で女の子に「元気でね、また会おうね」とお別れを告げるシーンから、マンションのドアが閉まり男の子が小躍りして去っていくシーンの繋ぎにおけるフェードアウト/フェードイン
あくまで自分の考えだけど、フェードアウト/フェードインによる場面転換は、あるシーンと別のシーンの間に存在する物語上不必要な時間を省略するために使う手法だと思う。
(1)の場合は明らかに連続した時間の流れなのにフェードアウト/フェードインを使っている。画面が一旦暗くなるので感情移入が途切れる。これが舞台劇だとしたらあそこで暗転するのはやっぱり変。
(2)の場合、女の子と男の子の間に交わされたであろうやりとり、物語上必要な要素、が省略されており、エピローグでの男の子とお姉ちゃんの会話が成立しない(エピローグでの男の子の発言は全部エイプリルフールの嘘なんだとも解釈できるけど、でも「ヒナちゃんとの約束も嘘かなあ」と男の子が心配そうに言うし…)
せめてこの二つだけでも違う処理をしていれば、グランプリの結果は違っていたかもしれない。
入賞「その先にあるもの」 中里洋一 21分00秒 (スポコン)
物語・・・サッカーに青春の全てをかける男2人。全国大会に出場してスポーツ推薦で大学に行きたい主人公(フォワード?)と、高校卒業後は板前として家を継ぐ事を決めている友人(ゴールキーパー)。しかし主人公はPKを外し全国大会出場の夢は断たれる。自暴自棄になった主人公に板前修業を始めた友人はプロチームの入団テストを受けるよう薦める。
感想
日活芸術学院の卒業制作作品。16mm。基本に忠実な丁寧なカット割り。撮影、照明にも一切ミスはなく映画作りの教科書代わりに使いたくなる作品。シナリオも実にストレートで解りやすい。予定調和と批判するんでなく、スポコンに変化球はいらない、という信念に基づく狙いなんだと解釈。「奴は絶対に低めを狙う筈だ!!」というモノローグなどめちゃめちゃ解りやすい展開は、昔なつかしい少年誌スポコン漫画を彷彿とさせ、観ててニヤニヤさせられる。
入賞「プレイボール!」 木場明義 13分01秒 (ドタバタ)
物語・・・先輩の彼女を横取りした事が先輩にばれ、激怒した先輩がバット振り回して追いかけてくるのをひたすら走って逃げる主人公。逃げる途中で出会った腰にタオル巻いただけの裸の男。彼は浮気が彼女にばれ、包丁振り回して追ってくる彼女から逃げていた。
感想
音声が一部聞き取り難いとか、カメラの手ぶれとか、激怒してるキャラの顔が笑ってるとか、突っ込みどころは多々あれど、複数のドラマを絡み合わせるシナリオはよく出来てるし、あの手この手と様々なギャグが盛り込まれてて笑えるし、なによりひたすら走って走ってという展開がいかにもスラップスティックで、ぐいぐい引き込まれる。要所要所に入るインパクト抜群の音楽も映画を盛り上げる。
入選「ensemble」 吉野雄大 12分12秒 (ドラマ)
物語・・・いびきの大きい彼女と同棲している主人公。いびきに悩まされ眠れないこともしょっちゅう。その彼女が突然死ぬ。ひとり残された主人公は感情の整理がつかず不眠症になる。ある日友人が忘れ物のカセットテープを届ける。それは彼女のいびきを録音したテープで、かつて飲み会ネタとしてでみんなに聞かせて彼女を傷つけた苦い思い出のテープだった
感想
個人的には一番感情移入できた。主人公の後悔の気持ちがひしひし伝わってくる。かつて眠りを妨げた彼女のいびきに癒されて眠りにつく彼の姿に涙が出そうになった。
主人公を演じた「池内万作」という方、どっかで聞いた名前だと思っていたら、パーティで吉野監督から聞いた話によると、「カナリア」の冒頭、谷村美月ちゃんとドライブしてる援交野郎役だって。ああ・・あの人か・・・と思ってるとさらに知らなかった事実を聞く。「あの人、伊丹十三の息子なんですよ」ガビーン!! つうことは宮本信子の息子ってことですか?と、無意味な質問を返しつつ、どういう生活送ればそういう人間とのコネができるのか想像もできません。ちなみにノーギャラで出演してくれたんだそうです。「亡国のイージス」にも出てた。
入選「討ち入りだよ!全員集合」 小川亮輔 9分00秒 (コント)
物語・・・忠臣蔵。ただし登場人物は黒めがねに黒スーツ。
感想
「七人の侍」そのまんまのオープニングクレジット(音楽こそ、ドンドンドドドン・・・ていう太鼓の音じゃなかったけど)にキャハハと一人笑い。
赤穂藩士たちが浅野内匠頭が吉良に斬りかかり切腹を命じられたことを熱い武士っぽい台詞で説明(ただしスーツ姿)。松の廊下や浅野切腹のシーンではフラッシュバックの代わりに黒子がふすまを開けて、隣室で浅野や吉良が演技をしているのを見せる。
仇討ちに無関心な大石内蔵助はほっといて浪士たちは隣室に討ち入りに行く。
あれれ、そういえばカット入んなかったんじゃない?9分ワンカットの映画ではなかろうか?もっかい観て確認したい。
ハイテンションで畳み掛ける物語展開に大笑い。
入選「高橋宗太郎と地獄の古本屋」 一之瀬輝 27分25秒 (人形アニメ)
感想
個人的には一番感銘を受けた作品。人形アニメ。予算として1億くらいもらえれば「ティム・バートンのコープス・ブライド」にも負けない傑作になるんじゃなかろうか?
オープニングの偽札組織の逮捕劇とアクション、中盤は推理劇を展開させ、終盤は悪魔の召還、スカイアクション、そんでクライマックスは飛行船の墜落と高層ビルの崩落・・・アニメの強みで自主レベルの実写では不可能なことを全部やってのける。
キャラデザインも秀逸。
カメラのズーム、ワイド、パンなどコマ撮りしなくても良さそうなカットでもコマ撮りして、統一感を持たせている、そのこだわり。エンドクレジット観る限り、声優と音楽とオープニング映像のイラストレーターを除けば、スタッフは監督一人!!その根性と根気にも脱帽
入選「鳥獣剣士 第三幕」 名取祐一郎 5分10秒 (絵巻物アニメ)
感想
これも感銘を受けたアニメ。水墨画の絵巻物をころころと開いていくかのような横スクロールの風景の中を歩くキツネくん。この絵が美しく、そのまま絵本にしてほしいくらい。上司のタヌキさんの命令で剣道の稽古につきあわされ、そして上司の語りだす熱い剣の道についての精神論。思いつきもしない手法と予測不可能な展開。5分という短さも良い。
「第三幕」ということは「第一幕」「第二幕」もあるのかな?あるなら観たい。
入選「Nature Calls Me~自然が呼んでいる~」 日高尚人 18分00秒 (特撮コメディ)
物語・・・テレビショッピングで瞬間空間移動便器を買った主人公。やってきた借金取りが瞬間移動してしまい・・・
感想
いきなり始まるテレビショッピングの映像が、実際のテレビショッピングみたいに凝っている。CGもかっこよく、ナビケーターのお姉さんもゲストで便器体験するイケメン俳優もノリノリの演技で、観ていて楽しくなる。本編における瞬間移動シーンの特撮もかっこいい。ストーリーもよくまとまっていてこれもほとんどプロレベルの作品。
入選「その悩み何バイト?」 齋藤新 18分20秒 (インターネット)
えーと、私の映画です。
チャットで人生相談なるものを初めてしまった主人公にある日舞い込んできた恋愛相談。その相談依頼者がバイトの同僚であることを知り・・・という感じの話。
インターネット上での文字のやり取りで展開するストーリー・・・といえば森田芳光の「HAL」とか岩井俊二の「リリィ・シュシュのすべて」、最近では「電車男」とか、発想としては決して新しくはない。それでもそれらの作品との差別化を図った点を挙げると、主人公はインターネットの外(現実世界)においてはひたすら観察者の立場を貫くこと、インターネットが自分ではなく自分をとりまく現実世界を変化させ仮想現実と現実の境界が失われていくところを描いたこと・・・って、自己弁護してるみたい。いや、ただの独り言です。
他の入選作と違う点。
・主題歌がありません(ほとんどの作品には主題歌が付いている。インディーズバンドとのコネでもあるのだろうか・・・)
・キャストとスタッフがかぶっている。
・多分、予算は一番かかっていない(ビデオテープなど消耗品、小道具、撮影後の昼飯、スタッフの駐車場代などで2~3万くらい)
金とか時間とかは言い訳に過ぎないと思いつつ、コネと組織力は重要だなと感じ、もちろん才能は必要だし、それ以上に努力と根性、他人を喜ばせるための創意工夫と斬新な発想。どれ一つとっても他の入選作には負けているなあ・・・
それでもこれだけハイレベルな中に自分の作品が潜り込めたのだ。そこに誇りを持って、他の映画祭にも出品していこう。
*************
審査委員長の大森一樹監督のビデオによる総評を要約すると・・
「様々なジャンルの作品が並び、それぞれのジャンルの中で優れた作品ばかりで、基本的には優劣の付けようが無かった。それでも小津映画祭ということで、いわゆる映画的な作品の中から入賞を選んだ」
とのことでした。
「映画的」とは恐らく「人間と人間のドラマを、撮影と照明+モンタージュなど古典的な映画技法を駆使して作り上げた作品」というような意味だと思います。
小津映画祭の入選作の多くは、すでに他の映画祭で入賞していたり、またこれから行われるあちこちの映画祭にも出品されると思います。機会があれば是非ご覧になってください。
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自主映画撮ってます。松本自主映画製作工房 スタジオゆんふぁのHP
文面からも各参加者の熱き想いが伝わってきます。見たかったなぁ~
せっかくインターネットしてるのですから、ブログで音楽を募集してみればいかがでしょうか?乗ってくる人も出てくるような気がします。
私の作品はともかく、他の9作はあちこちの映画祭で入選等するでしょうから、機会があれば是非観てくださいね。
おもしろいですよ