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映画ブロガーら有志23名による「10年代映画ベストテン」発表!

ブラック・スワン 【監督:ダーレン・アロノフスキー】

2012-03-19 22:01:49 | 映評 2011~2012
個人的評価: ■■■■■□
[6段階評価 最高:■■■■■■、最悪:■□□□□□]


レオンの女の子で、スターウォーズ新三部作のヒロインという絶対的な過去の人気があって、可愛くてちやほやされつつも決してそこに甘えず、有名監督の作品にも積極的に参加して、演技もオンナも磨いてきたナタリー。
アイドル時代の賞味期限は過ぎ、そろそろかわいいだけのスターじゃなく演技派としても認められないと落ちていく一方になってしまう女優としての分岐点。
その絶妙のタイミングで持ち込まれた女優冥利に尽きるような企画。

むかしある一人の女優がその分岐点でのポイント切り替えに失敗した。いつどこでと言えるほどそうした分岐点は明確ではないが、「17歳のカルテ」という佳作を自らプロデュースした時が勝負のときだったのでは。しかし結局アンジェリーナの踏み台になっただけだった。それ以降ろくな作品にめぐまれず、しだいに影が薄くなり、追い打ちをかけるように盗難癖で逮捕を繰り返してスキャンダルのネタの方が目立ってしまい、いつのまにか主演の映画は作られなくなった女優。アイドル時代の彼女はアメリカで一番かわいかった。「かなしみよさようなら」「シザーハンズ」。そして「エイジ・オブ・イノセンス」でアカデミー助演賞とっていれば今の彼女は全然ちがっていただろうに。「ナイト・オン・ザ・プラネット」のタバコくわえてタクシーころがす姿のかっこ良かったこと。90年代初頭のあのころ僕は本気で彼女に恋していた。
そう! ウィノナ・ライダーちゃんだ。
そのウィノナが、ナタリー・ポートマンにプリマの座を奪われる元スター役として出演しているその自虐。そして本作でナタリーの踏み台にしかなれなかった哀れ(人の踏み台になるのは得意なのか)。彼女の恨み節が聞こえてきそうな病室のシーンが、もちろん深読みにすぎないのだけど、とても印象的だった。

ナタリーの暴走演技と、ウィノナや母ちゃん(バーバラ・ハーシー→ナタリーがバーバラ母ちゃんが隣で居眠りしてるのに気づかずオナニーするシーンが最高に恐)などの怖がらせキャラ達の怪演、火花を散らす女優たちのぶつかり合いは見応え十分の傑作だった。
ただし、ナタリーが狂気に落ちる動機づけとしてドラッグを使ったことが脚本としては失敗だったと思う。物語はドラッグで増幅された妄想でしかなくなり、人間が心の底に抱える本物の狂気や激情は描かれることなく終わった感がある。

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余談
この映画で興味がわき、チャイコフスキーの「白鳥の湖」の全曲集のCDと、バレエのDVDを購入。
白鳥の湖のCDは調べに調べて、一番の名盤といわれる1976年録音のアンドレ・プレビン指揮、ロンドン交響楽団の版を購入。ヘビーローテーションCDとなっている。ロンドン響といえば「スター・ウォーズ」の演奏で映画音楽ファンにはもっとも人気のある楽団である。その「スター・ウォーズ」の前年の録音。演奏の迫力はもちろんスピード感がすごい(踊るのは大変そうだが)。曲順が現在のスタンダードなものと違って現在では第三幕の黒鳥のコーダとして使われる曲が第一幕の貴族の踊りの曲になったりしているので、戸惑うかもしれないが、間違いなく名盤だと思うので、CDが欲しいという人におすすめ。
バレエ「白鳥の湖」のストーリーについて語ると(DVD解説の受け売りであるが)、西側で上演される「白鳥の湖」でもっともポピュラーな展開は以下の通り。
悪魔にそそのかされた王子が白鳥と誓った愛を裏切ってしまい、後悔した王子が白鳥の愛を取り戻しに行くが、王子の目の前で白鳥は悪魔にさらわれてしまう、あるいは王子と白鳥が共に死んでしまう・・・という悲劇。
対して旧ソ連での上演では、王子と白鳥が力を合わせて悪魔を倒し二人は結ばれる・・・というハッピーエンドのストーリーが好まれたという。
「ブラックスワン」におけるストーリーはそのどちらでもない。悪魔と王子の二者択一を求められた白鳥が両方を否定し死を選ぶという、ものすごくドラマチックでヒロインに感情移入した物語になっていた。映画の印象が強いせいもあってこの展開が一番いいような気がしてしまう。
西欧型でもソ連型でも、あそこまで白鳥役のプリマが錯乱する展開には持っていけないし、ラストも違う形になってしまっただろう。この「ブラックスワン」型の物語が今後の白鳥の湖のスタンダードになるのかもしれない。

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ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン
↑この度、「ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン」を選出しました。映画好きブロガーを中心とした37名による選出になります。どうぞ00年代の名作・傑作・人気作・問題作の数々を振り返っていってください
この企画が講談社のセオリームックシリーズ「映画のセオリー」という雑誌に掲載されました。2010年12月15日発行。880円


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