個人的評価: ■■■■■□
[6段階評価 最高:■■■■■■、最悪:■□□□□□]
かつてSF好きな少年時代をすごしたアラフォー世代なら間違いなく笑って燃えて感動して大満足間違いなしのSFコメディ。
主演はエドガー・ライト監督の「ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!」でも主演を務めたサイモン・ペッグとニック・フロスト。彼らは本作の脚本も書いている。エドガー・ライトといい、こいつらといい、イギリス映画界の層の厚さ、才能の豊富さは尋常でない。
映画はSFオタクのイギリスのおっさん二人が、初めての海外旅行でSFの聖地アメリカを訪れたところから始まる。SFのコミケで楽しんだ後SF映画やUFO伝説の名所めぐりを楽しむおっさん二人。その二人の前に、ななななんと本物の宇宙人が出現。宇宙人といえば真っ先に想像するグレイ型の外見したそいつはポールを名乗る。彼は数十年間アメリカ政府によって軟禁状態にあったのだが、故郷に帰るべく脱走したのだという。ポールを母船とのコンタクト予定地点まで送り届けるイギリスのSFオタクなおっさんたちを、アメリカ政府のエージェントが追う。
わくわくしまくるストーリーであるが、こうしたバカバカしいシチュエーションの映画って何を狙っているのかチープに作ったり、演出や役者の本気を疑うぬるい芝居や、コントに毛が生えた程度のアクションで描いたりして幻滅を覚えることが多いのだけど・・・
しかしこの映画は違う。どこを切ってもバカバカしさなど微塵もない本気の映像が溢れだしてくる。
特撮のすごさはもちろんだが、アクションの本気加減が半端ない。
ポールとの出会いになるカークラッシュシーンの本気すぎるド迫力。そこまでやんなくても・・・とむしろ引いてしまうくらい凄まじい。この導入部のプロットポイントに相当する箇所の迫力で、この映画ふざけてねぇ…本気だと思わせてツカミはばっちり。
さらに中盤の銃撃アクションもカーチェイスも「リーサル・ウェポン」の中に挿入しても違和感ないくらいの凄まじさ。
お湯を沸かすためにガスをひねってほっといた時点で、爆発という展開になることは予期できたが、あそこまでの迫力は予想を超えた。(催涙弾を打ち込んで家に乗り込んだエージェントがガスマスクを装着していたためガスコンロの状態に気付かないってところ、笑えるし巧い)
本気はアクションやCGばかりではない。世界のキリスト教の教会を敵に回しかねないギリギリのギャグの数々がいちいち面白い。
「神は自分の姿に似せて私たちをお作りになったのよ!」と叫ぶキリスト教原理主義の女性に、「じゃあ俺はなんだ」と姿を見せるポール。価値観が崩壊しはじめ錯乱した女性がアメージング・グレイスを歌い始めるくだりはやばすぎるが面白すぎる。
そして宇宙人のテレパシー能力で宇宙の真実を知った女性がころっと信仰心を捨ててしまう展開を笑わずに済ますことなんてできない。
宇宙人ポールの言動は下ネタ満載。感化された女性も微妙に使いかたのずれた下品な言葉を使う。「ちょっとしゃぶり散らかしちゃって」って現実の女の子にぜひとも使ってほしい。
また映画好き魂をくすぐるのは、本作が純然たるロードムービーの形態をとっているところだ。目的地に向かう主人公たちは、少しずつ道連れの仲間を増やし、同時に彼らを追う敵も増やしながら旅をし、クライマックスで全員入り乱れた対決となる。アメリカン・ニューシネマさながらの展開は普通に面白い。
そうしたあれやこれやにツボ要素たっぷりの本作であるが、何よりの魅力はSF映画愛である。
スターウォーズのコスプレ軍団に囲まれたコミケシーン。ジャバ・ザ・ハットにとらわれたレイアのビキニ踊り子衣装に扮した女の子グループになんか萌え萌え。
銃で撃たれた主人公は「帝国の逆襲」Tシャツに穴が空いたことを残念がる。
また中盤で主人公たちが立ち寄るバーでは「スター・ウォーズ エピソード4」の酒場で宇宙人のバンドが演奏していた曲がかかっている
スター・トレックのロケ地めぐりをする主人公たち。しかもテレビシリーズの方のロケ地。
そしてクライマックスに登場するラスボスにあたるアメリカ政府の高官は、あの超人気SF4部作で主演を務められた大女優。あのシリーズさながらに強いのがまた感動。
そしてSFの範疇を超えてオマージュたっぷりなのがスピルバーグ映画。
ポールは回想シーンでスピルバーグと電話で話をし、映画「E.T.」のアイデアを提供している。彼が軟禁状態にあってスピルバーグと電話しているその場所は「レイダース失われた聖櫃」のラストの倉庫にそっくり。中盤のカーチェイスでポールを狙う政府のエージェントはポールを銃で狙い「Smile! Son of a bitch!」と叫ぶ。これは「ジョーズ」のロイ・シャイダーの決め台詞である。そしてそして、宇宙人ポールが母船とコンタクトするその地点は、見ればすぐにあの五音階が思い浮かぶあの場所。
スピルバーグ映画を観て育った我々世代にドストライクな演出の数々。
ラストのポールとの別れのシーンでは「未知との遭遇」や「E.T.」のラストで流した涙と同じ味の涙がこぼれた。
マジ笑って、マジ燃えて、マジ泣ける、大傑作SFコメディ。とくにSF映画好きには必見。
********
ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン
↑この度、「ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン」を選出しました。映画好きブロガーを中心とした37名による選出になります。どうぞ00年代の名作・傑作・人気作・問題作の数々を振り返っていってください
この企画が講談社のセオリームックシリーズ「映画のセオリー」という雑誌に掲載されました。2010年12月15日発行。880円
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自主映画撮ってます。松本自主映画製作工房 スタジオゆんふぁのHP
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かつてSF好きな少年時代をすごしたアラフォー世代なら間違いなく笑って燃えて感動して大満足間違いなしのSFコメディ。
主演はエドガー・ライト監督の「ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!」でも主演を務めたサイモン・ペッグとニック・フロスト。彼らは本作の脚本も書いている。エドガー・ライトといい、こいつらといい、イギリス映画界の層の厚さ、才能の豊富さは尋常でない。
映画はSFオタクのイギリスのおっさん二人が、初めての海外旅行でSFの聖地アメリカを訪れたところから始まる。SFのコミケで楽しんだ後SF映画やUFO伝説の名所めぐりを楽しむおっさん二人。その二人の前に、ななななんと本物の宇宙人が出現。宇宙人といえば真っ先に想像するグレイ型の外見したそいつはポールを名乗る。彼は数十年間アメリカ政府によって軟禁状態にあったのだが、故郷に帰るべく脱走したのだという。ポールを母船とのコンタクト予定地点まで送り届けるイギリスのSFオタクなおっさんたちを、アメリカ政府のエージェントが追う。
わくわくしまくるストーリーであるが、こうしたバカバカしいシチュエーションの映画って何を狙っているのかチープに作ったり、演出や役者の本気を疑うぬるい芝居や、コントに毛が生えた程度のアクションで描いたりして幻滅を覚えることが多いのだけど・・・
しかしこの映画は違う。どこを切ってもバカバカしさなど微塵もない本気の映像が溢れだしてくる。
特撮のすごさはもちろんだが、アクションの本気加減が半端ない。
ポールとの出会いになるカークラッシュシーンの本気すぎるド迫力。そこまでやんなくても・・・とむしろ引いてしまうくらい凄まじい。この導入部のプロットポイントに相当する箇所の迫力で、この映画ふざけてねぇ…本気だと思わせてツカミはばっちり。
さらに中盤の銃撃アクションもカーチェイスも「リーサル・ウェポン」の中に挿入しても違和感ないくらいの凄まじさ。
お湯を沸かすためにガスをひねってほっといた時点で、爆発という展開になることは予期できたが、あそこまでの迫力は予想を超えた。(催涙弾を打ち込んで家に乗り込んだエージェントがガスマスクを装着していたためガスコンロの状態に気付かないってところ、笑えるし巧い)
本気はアクションやCGばかりではない。世界のキリスト教の教会を敵に回しかねないギリギリのギャグの数々がいちいち面白い。
「神は自分の姿に似せて私たちをお作りになったのよ!」と叫ぶキリスト教原理主義の女性に、「じゃあ俺はなんだ」と姿を見せるポール。価値観が崩壊しはじめ錯乱した女性がアメージング・グレイスを歌い始めるくだりはやばすぎるが面白すぎる。
そして宇宙人のテレパシー能力で宇宙の真実を知った女性がころっと信仰心を捨ててしまう展開を笑わずに済ますことなんてできない。
宇宙人ポールの言動は下ネタ満載。感化された女性も微妙に使いかたのずれた下品な言葉を使う。「ちょっとしゃぶり散らかしちゃって」って現実の女の子にぜひとも使ってほしい。
また映画好き魂をくすぐるのは、本作が純然たるロードムービーの形態をとっているところだ。目的地に向かう主人公たちは、少しずつ道連れの仲間を増やし、同時に彼らを追う敵も増やしながら旅をし、クライマックスで全員入り乱れた対決となる。アメリカン・ニューシネマさながらの展開は普通に面白い。
そうしたあれやこれやにツボ要素たっぷりの本作であるが、何よりの魅力はSF映画愛である。
スターウォーズのコスプレ軍団に囲まれたコミケシーン。ジャバ・ザ・ハットにとらわれたレイアのビキニ踊り子衣装に扮した女の子グループになんか萌え萌え。
銃で撃たれた主人公は「帝国の逆襲」Tシャツに穴が空いたことを残念がる。
また中盤で主人公たちが立ち寄るバーでは「スター・ウォーズ エピソード4」の酒場で宇宙人のバンドが演奏していた曲がかかっている
スター・トレックのロケ地めぐりをする主人公たち。しかもテレビシリーズの方のロケ地。
そしてクライマックスに登場するラスボスにあたるアメリカ政府の高官は、あの超人気SF4部作で主演を務められた大女優。あのシリーズさながらに強いのがまた感動。
そしてSFの範疇を超えてオマージュたっぷりなのがスピルバーグ映画。
ポールは回想シーンでスピルバーグと電話で話をし、映画「E.T.」のアイデアを提供している。彼が軟禁状態にあってスピルバーグと電話しているその場所は「レイダース失われた聖櫃」のラストの倉庫にそっくり。中盤のカーチェイスでポールを狙う政府のエージェントはポールを銃で狙い「Smile! Son of a bitch!」と叫ぶ。これは「ジョーズ」のロイ・シャイダーの決め台詞である。そしてそして、宇宙人ポールが母船とコンタクトするその地点は、見ればすぐにあの五音階が思い浮かぶあの場所。
スピルバーグ映画を観て育った我々世代にドストライクな演出の数々。
ラストのポールとの別れのシーンでは「未知との遭遇」や「E.T.」のラストで流した涙と同じ味の涙がこぼれた。
マジ笑って、マジ燃えて、マジ泣ける、大傑作SFコメディ。とくにSF映画好きには必見。
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ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン
↑この度、「ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン」を選出しました。映画好きブロガーを中心とした37名による選出になります。どうぞ00年代の名作・傑作・人気作・問題作の数々を振り返っていってください
この企画が講談社のセオリームックシリーズ「映画のセオリー」という雑誌に掲載されました。2010年12月15日発行。880円
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