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ターミネーター ニューフェイト 【監督:ティム・ミラー】ドラマは無いがリンダは観れる…

2019-11-27 19:55:00 | 映評 2013~

リンダ・ハミルトンとシュワルツェネッガーが出るというそれだけが売りの、アクションはともかくドラマは極めて薄く、SF的にも浅い映画
なのだが、リンダasサラ・コナーと、シュワが出てるそれだけでまあまあ満足してしまった自分もいる。私のようなファンのせいでつまらないシリーズが作り続けられてしまうのだと責任を感じる。

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しかしリンダ・ハミルトンのサラ・コナーは恐ろしくかっこいい。二体のターミネーターに挟まれ絶対絶命な新キャラのねえさんたちを助けに、ケレン味たっぷりに登場し、凶悪な武器をクールにぶっ放すその登場シーン。エイリアン4のリプリーなみにあんたの方が怖いよ感半端ない。
おまけにアイルビーバックと決めゼリフまで吐くんだから、もうスタローンがエクスペンダブルズのオファーしかねない80年代アクションスターっぷり。

考えてみれば私はリンダ・ハミルトンを映画で見るのはターミネーター以外では「キングコング2」くらいで実質2作品だけでこの千両役者感を身につけた人って他にジェームズ・ディーンくらいしかいないんではなかろうか

だからサラ・コナーのヒーロー映画と思ってみればそれで良いのかもしれないのだが…
しかし今更サラ・コナーを担ぎ出したところでもう彼女はこのシリーズにおけるエモーションの主軸にはなれないと感じた新作ターミネーターでもあった。
というより、ターミネーターというシリーズはすでにドラマとして絞り出せる感情は最初の2作品でほぼ絞り出し、なんとか3で残りカスを絞り切り、もうカラカラなのだ。

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いやいや、そもそもターミネーターにドラマなんてある?機械の殺し屋が来て逃げて最後やっつけるそれだけでしょう?
などと思うかもしれないが、そうでもない。1や2には「ニューフェイト」にはないエモーショナルな要素があった。

1は、男女の愛という超わかりやすいエモーションの軸があった。
それは極限状態を共にすることで生まれる瞬間湯沸かし的な愛に過ぎなかったかもしれないが、安モーテルでのベッドシーンの後で裸でキャッキャしてるシーンなんかいつ見てもキュンキュンしてしまう。中学のころ失礼ながらサラ・コナーってあんま可愛くないなーって思って見ていた私ですが、あのシーンから「サラ可愛い」って思えてきた。だからその後のシーンではカイルの行動動機が人類とか、未来とかより、この女を守りたいって事だと素直に思えたし、そんなカイルに託された未来を守ろうとするサラも、単に正義とか善意とかでなく情の面ですごく納得できたのである。
ついでに言えば男と女が子供を産むという生命活動が、機械に対する対抗手段であるところにもSF的深さがあったと思う。

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2の場合は男女の愛は無いけれど、子を守りたい母親の気持ちという、これまたアホでもわかるエモーションの軸が設定される。母を愛する子の気持ちでもいい。そのメインの軸に加えてシュワルツェネッガーにも、機械が愛を理解する、というSF定番鉄板要素がもう一つの軸として配置されてダブルの感動を呼んだわけである。

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実は3でも、未来の救世主になるはずだったのにその未来を変えたためにただのヤサグレ男にしか見えなくなってしまったジョン・コナーの悲哀感は丹下段平みたいで嫌いじゃなかった

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それら踏まえてニューフェイトのドラマを思い返してみると、そこには「意外な事実がわかって驚く」程度のイベントはあるものの、強いエモーションの波を起こす軸が存在しなかった事に気づく。
サラ・コナーにはもはや愛する男も、守るべき家族もなく、シュワルツェネッガー型ターミネーターも愛については学習済みの状態で物語に参戦する。2人はニューフェイトのストーリーの中で成長は全くしていない。
私情を挟まず機械と戦う職業ヒーローっぷりはカッコ良くもあるけれど。
それにサラ・コナーがエクスペンダブルズなみにかっこいいのは前半くらい。後半になるとこの人は葛藤しないし、ドラマに絡まないし、ストーリー上必要なことはしないし、戦闘要員として弱くはないがシュワT800とグレースが強すぎるので戦いでも目立たない。
何のためにいるんだろう?となってしまう。

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当然というか、本作のドラマ担当は新キャラクターのダニーとグレースになる。しかしこの2人の間にもわかりやすいエモーションの軸がない。
「恋愛か家族愛が無いとドラマにならない」と言うつもりはない。友情や尊敬だってエモーションの軸にはなり得る。しかし、ダニーとグレースの関係を終盤まで隠して「意外な事実カミングアウト」イベントのネタにしたせいで、そこに至るまでのグレースの気持ちに乗っかれない。しかもカミングアウトされる内容もそこまで引っ張ったわりに大したことない。
グレースがダニーを守る理由の心理的背景が弱すぎる。

そもそも「ターミネーター」はストーリーの基本パターンはどれも同じだし、男女愛や家族愛をネタにしたらしたで、またそれかよ!?と突っ込まれるだけなので、もう新しい物語を作る鉱脈は2作目で掘り尽くしてしまったんじゃないかと思うのだ。

こうなったらT800とサラ・コナーが愛し合うとか、ターミネーター対プレデターとか!それくらいしかもう打つ手はないんじゃなかろうか。

もちろんドラマが希薄なんだろうくらいの事は見る前からわかってたので今更そこに失望はしないのだけど、脚本的に魂を熱くするイベントが設定されてないのは、ダメだ。
まさかお前がそこで助けに来るとは!!的な展開があれば、エモーションの軸が弱くてもまあまあ盛り上がるんだけどな。
フルボッコされて瀕死のグレースの前に最強の奴がカムバックして助太刀に来る(もちろんシュワ、なんならリンダ)みたいな展開があればさ。
ほらあれだよ、マジンガーZ最終回とか、最近ならアベンジャーズ ・インフィニティウォーのソーが助太刀に来るとことか

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とは言え、強化人間グレースの戦いはそれなりに観ていて楽しかった。演じるマッケンジー・デイビスも、強い美人として今後が楽しみだ
でもなんだかんだで、話が進むにつれて意味なしキャラになるとは言え、結局リンダ・ハミルトン姐さんが全部持ってってしまう。
ターミネーター退治のスペシャリストとなったサラ・コナーと相棒で見習いのダニーの珍道中を描いたシリーズが少し観たくなる。それでサラがまだ幼いカイル・リースに会ったりするのどうだろ?

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ターミネーター ニューフェイト
2019年11月池袋グランドシネマサンシャインにて鑑賞
監督:ティム・ミラー
製作:ジェームズ・キャメロン(どうせ名前だけだろう)、デビッド・エリソン
脚本:デビッド・ゴイヤー(おや、あのゴイヤーかい、じゃ今度はターミネーターvsバットマンか?)、ジャスティン・ローズ、ビリー・レイ
撮影:ケン・セング
音楽:トム・ホルケンボルフ
出演:リンダ・ハミルトン、アーノルド・シュワルツェネッガー、マッケンジー・デイビス、ナタリア・レイエス

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終戦間際のベルリンで行われた実験が時空を超えて70年後の日本に異変をもたらす。今は亡き愛する者の幻覚に操られる人たちが続出して行く中、幻覚に魂を入れる方法に気づいた男…

2019/12/7原宿CAPSULEにて上映

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