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ライフ・イズ・ミラクル [明るく楽しいのに疲れる]

2005-08-03 23:59:57 | 映評 2003~2005
東京映画ツアー。1泊2日で5作品鑑賞。
東京まで来た以上、「はずしたくない」と思うと、安全性を求め、つい巨匠や人気監督の作品に走る。
しかし、はずしやがったよ、エミール・クストリッツァちゃん・・・。まったくもう
(ちなみに後の四本は、「リンダ、リンダ、リンダ」「運命じゃない人」「ヴェラ・ドレイク」「ヒトラー~最期の12日間~」でどれも傑作であったよ)

ロバさん、ネコさん、クマさん・・・と登場する動物たちが楽しく可愛く、とりわけロバさんには笑わされた。
戦争による人間の絶望より、ロバの絶望(失恋が原因らしい)の方が深いんだ。皮肉だが、さわやかな余韻を残す、小さな奇跡。

クストリッツァという人は、政治体制、宗教、民族、領土と国境などを原因として人間たちが繰り広げる戦争を、「バッカじゃないの」と笑い飛ばす。
この映画はボスニア・ヘルツェゴビナの内戦を背景にしているが、内戦の歴史的や政治的やらの背景を語ろうとしない。登場人物たちは戦争の原因や、戦争の動向よりも、毎日の生活をいかに面白おかしく過ごしていくかってことばかり考えている。この楽天的な考え方が彼の映画の魅力だ。
とはいえ、近所で砲弾が炸裂するほど切羽詰った戦争だ。全く無関係ではいられない。
息子が召集され、敵の捕虜となり、代わりに敵の捕虜の若くてきれいな女性が家に送られて来て・・・と戦争は人々の生活にずかずか土足で踏み込んでくる。
主人公は妻も子もいる身でありながら、捕虜の女性と恋に落ちる。しかしこの女性は捕虜交換で息子を救出するための大事な、いわば人質。
それでも主人公は戦争や国家の独立や息子の命も忘れて、恋に溺れる。ボスニアの雄大な自然を縦横無尽に転げまわるペッティングはなかなかの名シーンだ。
しかし、別れの時が来て、主人公は息子=家族と、恋との苦しい選択を迫られる。
そして家族を選ぶ。
その決断に、異教徒だから異民族だから敵だから祖国のために・・・といった思想は微塵もなく、いずれを選ぶにせよ極めてパーソナルな決断となる。
だが、そうはいっても戦争のために恋を犠牲にしてしまった主人公は、自分を責め絶望し自殺を図るのだが、同じく失恋で世界に絶望していたロバのため自殺に失敗。ふと絶望がばからしくなったのか、ロバを伴い笑顔で生活に戻っていく・・・

などとストーリーを改めて読み解いてみると、結構面白いじゃないか、と思う。
しかし、上記の文章は、てんこ盛りなエピソードの寄せ集めの中から最重要と思われるもののみを選び抜いて書いているに過ぎない。
本筋と関係のないエピソードや唐突に始まる幻想シーンなどがあまりに盛り沢山で、上映時間は150分強!!。
サッカー、戦争、家族、オペラ、動物、ラブ、暗殺、クマさん襲撃、ファンタジー・・・
散漫なくせに濃厚。
なんというか、トッピングしすぎた山盛りカレーを食った時のような胸焼け感に襲われる映画である。
ま、クストリッツァの映画っていつもそんな感じのやりたい放題だけど、今回はいつにも増してまとまりが無かった様に感じる

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1 コメント

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クストリッツァの映画 (bakabros)
2005-08-27 19:30:16
観るのが初めてだったのですが、どうもついていけずに一瞬睡魔が。。。

でも、面白いところもあったので、他の作品が観てみたくなりました。
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