自主映画制作工房Stud!o Yunfat 改め ALIQOUI film 映評のページ

映画作りの糧とすべく劇場鑑賞作品中心にネタバレ徹底分析
映画ブロガーら有志23名による「10年代映画ベストテン」発表!

マイケル・ジャクソン THIS IS IT [監督:ケニー・オルテガ]

2009-11-21 14:08:01 | 映評 2009 外国映画
個人的評価: ■■■■□□
[6段階評価 最高:■■■■■■(めったに出さない)、最悪:■□□□□□(わりとよく出す)]

世界で最も有名なマイケル。
洋楽なんてほとんど聴かない私でさえマイケルといえば真っ先に思いつくことからも、マイケル史上の世界一ぶりが伺える。

私の本作を観る前までのMJの知識を紹介しよう

・決め台詞は「ポー」
・家が遊園地
・子供が大好き
・鼻歌で「BAD」のイントロを歌い始めたはずなのにいつの間にか「スリラー」のサビになっていたりする。
・しかしそれは「ナイナイシックスティーン」を歌っていたはずなのに気がつくと「100%・・・SOかもね」になっていたりするのと同じことなので恥じることはない。


-----
そんなマイケルど素人の私であるがすごいもんは理屈ぬきにすごいんだということがわかるドキュメンタリーであった。

莫大な収入を見込んだ莫大な投資がフイになりかけたので、少しでも回収しようと作った作品といえば、当たらず遠からずだろう。
あるいは、もともとライブDVDとして販売する際の特典映像か何かにすべく、同時に撮り進めていたメイキングだったのかもしれない。

それでも、この作品にはスーパースター・マイケルの理屈抜きのすごさが溢れているのだ。
なんというキレのいい動き、スピード、感動的なパフォーマンス、かっこいいビデオクリップ。たしかに本物を観たかったと、亡くなる前には考えもしなかった感慨がわいてくるのであった。
有名なパフォーマンスが見れないのが残念っちゃ残念。腰もひざも真っ直ぐで体を斜め45度に傾けるやつとか見たかったし、マイケルの代名詞ともいえるムーンウォークが観れなかった(らしいことはやっていたがはっきり映っていない)のは残念だ。
けれどもあれだけ動ける50歳って何物だろう。普通の50歳があんなパフォーマンスしたら死んじゃうよ!!
・・・ま、実際、彼は死んじゃったわけで、そういう意味では年相応のパフォーマンスしないと命を縮めるよ・・・という教訓映画と言えるかもしれない。
また、さらに考えを広げれば、リハといえども命を削るくらいに全力で当たってきた彼だからこそ、あれだけのスーパースターになれたのかもしれない。
結果として本番はむかえられなかった彼であるが、夢の公演に向け全力で邁進している過程で亡くなった彼が羨ましい。
ふと司馬遼太郎の「竜馬がゆく」のこんな言葉を思い出したのであった。

「人の一生というのは、たかだか五十年そこそこである。いったん志を抱けば、この志に向かって事が進捗するような手段のみをとり、いやしくも弱気を発してはいけない。たとえその目的が成就できなくても、その目的への道中で死ぬべきだ。生死は自然現象だからこれを計算に入れてはいけない。」

業界は彼に群がり利益を吸収しようとしていたのかもしれないが、スーパースターマイケルは、公演の全てをコントロールし設計し作り上げそして演じていた。
納得のいかないときに、スタッフやダンサーやミュージシャンにあれこれと不満や注文をつけた上で、彼は付け加える。
「怒っているんじゃないよ。L.O.V.E(エル・オー・ヴィ・イー)だ」
「ラブ」といわないところに彼の天性のスター性を感じつつ、大物スターとしてふんぞり返って文句ばっかり言ってる人ではなく、「エル・オー・ヴィ・イー」で全てを包み込んで、単なる歌とか踊りとかPVとかでなく「マイケル」を全身全霊で作り上げていたのだ。

欠点としては、「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」が映画作品として鑑賞せねばならない形態で世に発表されたことかもしれない。正直、立ち上がって熱狂しながら、鑑賞というより参加したかった。
なんとなくアメリカの映画館ならそういうことしても怒られない気がするが、行儀のよさが求められる日本の映画館ではとてもそんなことはできず、座って黙って鑑賞しなくてはならないのだった。そんなの気にせずマイケルと一緒に踊っちゃえばいいのかもしれないが、曲と曲の間に入るメイキング的な部分や、スタッフの語り、マイケルのメッセージなどで、やはりこれはマイケルのライブではなく、作り手(ケニー・オルテガ監督とプロデューサーたち)の主張の入った作品なんだと思わされ、慎ましい鑑賞態度が求められている気がしてくる。作り手の主張とマイケル像の描き方なら他にもあったろうし、もっと純粋にPVやマイケルの姿だけを並べただけの作品としては雑なものにしてもよかったのではないかとも思う。

とはいえ、マイケルその人をもっともっと描き抜くドキュメンタリーの決定版がそのうち作られることを祈りながら、今はこの作品でマイケルの死を悼もう。
そしてこの言葉をマイケルに捧げよう

「ポー!!」

********
↓面白かったらクリックしてね
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへにほんブログ村

人気blogランキング

自主映画撮ってます。松本自主映画製作工房 スタジオゆんふぁのHP


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。