ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン
↑この度、「ブロガーによる00年代(2000~2009)の映画ベストテン」を選出しました。映画好きブロガーを中心とした37名による選出になります。どうぞ00年代の名作・傑作・人気作・問題作の数々を振り返っていってください。
この企画が講談社のセオリームックシリーズ「映画のセオリー」という雑誌に掲載されました。2010年12月15日発行。880円
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/75/77/2f0aa999a4b2d361aa179b6d1b48c56c.jpg)
-------
なんとか年内に映画館で観た映画の映評を全部アップしたい・・・
個人的評価: ■■■■■□
[6段階評価 最高:■■■■■■(めったに出さない)、最悪:■□□□□□(わりとよく出す)]
次の説明文を読んで該当する映画をA、B、のどちらかから選びなさい。
「2010年日本公開。アカデミー賞で作品賞候補になった作品。SF映画。人間が異星人の姿になって異星人のコミュニティの中に入っていく話。主人公はいつしか異星人とともに人間と戦うようになる。差別、強者による弱者への横暴などの人類の傲慢さをSFというジャンルを借りて訴えている。主人公が完全な異星人の姿へと変身を遂げるラストが感動を呼ぶ」
A:「アバター」
B:「第9地区」
-------
答え:問題が不適切だったため、受講者全員を正解とします。
というわけで「アバター」との共通点があまりに多い「第9地区」であるが、それにもかかわらず受ける印象があまりにも異なる。
きらびやかな夢のワンダーランドで繰り広げられる愛と勇気と大冒険の「アバター」は、悲惨なストーリーにもかかわらず観るものに夢をあたえ、未来や宇宙への甘いロマンを掻き立てる。
対して「第9地区」で甘いロマンなど誰が抱くだろうか。
「アバター」の衛星パンドラの住民たちは、哺乳動物をデザインのベースとしているだけに同族意識をかきたてて感情移入が可能だ。主人公とヒロインのキスも違和感なく見ることができる。対して「第9地区」の宇宙人はエビなどの節足動物をデザインのベースとしており生理的嫌悪感が付きまとう。
衛星パンドラは衛生面での嫌悪感は何も感じなかった。大気こそ呼吸に適さないものだったが、あの星を歩いても変な感染症にかかったり寄生虫に卵産みつけられたり妙な微生物にブチュっと刺されたりするような嫌悪感は感じなかった。食べ物を落としても3秒ルールは普通に適用できそうだ。
対して「第9地区」の異星人スラムでは3秒ルールどころか基本的に物を食べたいと思わせない。ありとあらゆる不衛生な想像をかき立て映像から悪臭まで漂ってくるようだ。
しかしそうした汚く気持ち悪い中だからこそ生まれる感動があり、それだからこそ判る気持ちがある。
おごり高ぶる人類へのメッセージを込めた「アバター」も感情移入可能なデザインの宇宙人のキスにうっとりしていたことで、結局見た目が大事にすぎなかったことに気づく
差別とは違いを否定することから生まれる。
同じもの同士で仲良くなり愛し合うことはもちろん素晴らしいことだけど、ある日突然近所に自分とは全然違う物が来たとしてその者たちを受け容れることができますか、と「第9地区」は訴える。
そして、それでも判り合うことは可能であることを「第9地区」は示した。エビたちのために戦う主人公の気持ちは、吐き気を催すような映像の果てにくるからこそ共感できる。
それでいて完全に異星人へと変身を遂げるラストは、アバターは明るいハッピーエンドだが、「第9地区」は深い悲しみの余韻を残す。
「アバター」はエンターテインメントとして、ショウとして非常に完成度の高い素晴らしい映画であったが、感動は浅く薄い。「第9地区」の感動の方が遥かに深いと感じた。
大げさかもしれないが、本作は「2001年 宇宙の旅」や「ブレード・ランナー」のように「SF映画の名作」としてコアなSFファンに語り継がれていくのではないかと思う。
[追記]
ラストの一輪の花であれほど感動させるのは「ともだちのうちはどこ」以来かもしんない
********
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「2010年日本公開。アカデミー賞で作品賞候補になった作品。SF映画。人間が異星人の姿になって異星人のコミュニティの中に入っていく話。主人公はいつしか異星人とともに人間と戦うようになる。差別、強者による弱者への横暴などの人類の傲慢さをSFというジャンルを借りて訴えている。主人公が完全な異星人の姿へと変身を遂げるラストが感動を呼ぶ」
A:「アバター」
B:「第9地区」
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答え:問題が不適切だったため、受講者全員を正解とします。
というわけで「アバター」との共通点があまりに多い「第9地区」であるが、それにもかかわらず受ける印象があまりにも異なる。
きらびやかな夢のワンダーランドで繰り広げられる愛と勇気と大冒険の「アバター」は、悲惨なストーリーにもかかわらず観るものに夢をあたえ、未来や宇宙への甘いロマンを掻き立てる。
対して「第9地区」で甘いロマンなど誰が抱くだろうか。
「アバター」の衛星パンドラの住民たちは、哺乳動物をデザインのベースとしているだけに同族意識をかきたてて感情移入が可能だ。主人公とヒロインのキスも違和感なく見ることができる。対して「第9地区」の宇宙人はエビなどの節足動物をデザインのベースとしており生理的嫌悪感が付きまとう。
衛星パンドラは衛生面での嫌悪感は何も感じなかった。大気こそ呼吸に適さないものだったが、あの星を歩いても変な感染症にかかったり寄生虫に卵産みつけられたり妙な微生物にブチュっと刺されたりするような嫌悪感は感じなかった。食べ物を落としても3秒ルールは普通に適用できそうだ。
対して「第9地区」の異星人スラムでは3秒ルールどころか基本的に物を食べたいと思わせない。ありとあらゆる不衛生な想像をかき立て映像から悪臭まで漂ってくるようだ。
しかしそうした汚く気持ち悪い中だからこそ生まれる感動があり、それだからこそ判る気持ちがある。
おごり高ぶる人類へのメッセージを込めた「アバター」も感情移入可能なデザインの宇宙人のキスにうっとりしていたことで、結局見た目が大事にすぎなかったことに気づく
差別とは違いを否定することから生まれる。
同じもの同士で仲良くなり愛し合うことはもちろん素晴らしいことだけど、ある日突然近所に自分とは全然違う物が来たとしてその者たちを受け容れることができますか、と「第9地区」は訴える。
そして、それでも判り合うことは可能であることを「第9地区」は示した。エビたちのために戦う主人公の気持ちは、吐き気を催すような映像の果てにくるからこそ共感できる。
それでいて完全に異星人へと変身を遂げるラストは、アバターは明るいハッピーエンドだが、「第9地区」は深い悲しみの余韻を残す。
「アバター」はエンターテインメントとして、ショウとして非常に完成度の高い素晴らしい映画であったが、感動は浅く薄い。「第9地区」の感動の方が遥かに深いと感じた。
大げさかもしれないが、本作は「2001年 宇宙の旅」や「ブレード・ランナー」のように「SF映画の名作」としてコアなSFファンに語り継がれていくのではないかと思う。
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ラストの一輪の花であれほど感動させるのは「ともだちのうちはどこ」以来かもしんない
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