4月3日、ウイグル人の悲鳴 中国は「デマ」で通すのか、と題して掲載された産経新聞の社説からである。
中国の新疆ウイグル自治区で約1年半拘束され、フランスに亡命したウイグル人女性が本紙の取材に、女性収容所の惨状を語った。
尋問と拷問が繰り返され、悲鳴が絶えない。
女性は手錠、足錠と鎖を付けられ自由に身動きができず、注射を打たれ生理が止まった。
中国共産党の称賛も強制された。
想像を絶する残酷さである。
自治区だけではない。弾圧を逃れるなどしてトルコで暮らす約5万人のウイグル人も、中国政府を批判すれば、自治区に残る家族に被害が及ぶ恐れがある。
ある女子学生は本紙に「自治区の携帯電話は当局にモニターされており、家族に連絡できない」と話した。
習近平政権はウイグル人の悲痛な叫びを意に介さず、「弾圧はない」と強弁するが、悲惨な現実をみれば納得できるわけはない。
米国務省による各国の人権状況に関する報告書は、自治区でウイグル人100万人以上が強制収容され、「ジェノサイド(民族大量虐殺)と人道への犯罪行為が行われている」と非難した。
こうした指摘が事実でないというのなら、中国政府は国際調査団を受け入れ、強制収容所などの実情を公開しなければならない。
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が現地入りに向け、中国側と交渉している。
調査は、ウイグル人との自由な接触を可能とするなど、当局の規制を排除することが欠かせない条件である。
中国の王毅外相はウイグル人へのジェノサイドの批判を「下心のあるデマだ」と一蹴した。
ロシアのラブロフ外相との共同声明では「人権問題を口実にした内政干渉に反対する」と表明した。
米国などが中国攻撃の道具としてわざわざウイグル問題を持ち出したと言いたいのだろうが、その認識自体がおかしい。
人権は普遍的価値である。
米中関係がどうあろうとも、中国であろうが別の国であろうが、踏みにじることは許されない。
人権弾圧は内政問題では済まされない。
国際社会が自治区の人権状況を懸念し、非難の声を上げるのは当然である。
批判があれば、真摯に応じるべきだ。
ウイグル人弾圧で米欧の対中制裁に加わらない日本も、その感覚を疑われかねない。
人権弾圧への厳しい姿勢は口だけでなく、行動で示さねばならない。