この小説の登場人物の中で、ヒトラーを始め、
ボルマン、ヘス、ヒムラーなどは実在の人物ですが、
架空の人物は、「私」、アネット、クラウスと、
そしてハーシェルがそうです。
アネットやクラウスと違って、
ハーシェルには、明確にモデルになる人物もいません。
ハーシェルは、私が許せない人格の集まり、
という感じで出来上がりました。
「A.H.S(アドルフ・ヒトラー学校)で私と同期だった、彼、ハーシェルは、自分の弱い臆病な心がみんなの目を引かないように、体中に、「正義」や「博愛」や「良心」という誇大広告を貼り付けていた。しかし、私だけは、本当の彼を知っていた。彼は、そんな私を煙たがり、学生の時に2度、私の体に傷を負わせた。それも、仲間を大勢巻き込んで、だ。」
「私たちと彼らしかいないこの場で、彼らが私1人をひざまずかせられなかったということは、彼ら―――特にクラス1の人気者のハーシェル―――としては、相当なダメージであった。「あらゆる情報をどこからともなく手に入れ、それを決して他人に漏らさない」「何もかも見透かしている」という私に対してのイメージが、彼の被害妄想に拍車を掛けているらしい。私がチラッとハーシェルに微笑みかけただけで、彼は、今自分が、どの女の子をどんなふうに騙してものにしようとしているか、どの人間を、ゲシュタポに告げ口をして失脚させようとしているか、全てを私に読まれて、もうおしまいだ・・・と思ってしまうのだ。しかし、彼にとっての本当の悲劇は、その妄想を自分の取り巻きに、打ち明けられずにいることである。」
「私は、ハーシェルから何か情報を得ようとする時、普段見せない笑顔を彼に向けるだけで良いのだ。そうすれば彼は、それを私に邪魔される前に行動に移さなければいけないと思い込み、焦って、必ず失敗する。そうして私は、その情報を手に入れるどころか、それを元に、彼が考えた間抜けな計画を失敗に終わらせることさえできるのだ。」
小説「雪の降る光景」第1章より
私が嫌いな人間の姿であるハーシェル。
でも、同じ人間である以上、
ハーシェルのような弱い部分を、自分自身も、
どこかで持ち合わせているのかもしれません。
つまり、ハーシェルの存在も私の存在の一部なんです。
だからこそ、これほど嫌い、憎んでいたハーシェルに、
強い縁を感じ、願い通りに自分の手で殺した後、
「私」は強い後悔に苛まれてしまうんですね。
ボルマン、ヘス、ヒムラーなどは実在の人物ですが、
架空の人物は、「私」、アネット、クラウスと、
そしてハーシェルがそうです。
アネットやクラウスと違って、
ハーシェルには、明確にモデルになる人物もいません。
ハーシェルは、私が許せない人格の集まり、
という感じで出来上がりました。
「A.H.S(アドルフ・ヒトラー学校)で私と同期だった、彼、ハーシェルは、自分の弱い臆病な心がみんなの目を引かないように、体中に、「正義」や「博愛」や「良心」という誇大広告を貼り付けていた。しかし、私だけは、本当の彼を知っていた。彼は、そんな私を煙たがり、学生の時に2度、私の体に傷を負わせた。それも、仲間を大勢巻き込んで、だ。」
「私たちと彼らしかいないこの場で、彼らが私1人をひざまずかせられなかったということは、彼ら―――特にクラス1の人気者のハーシェル―――としては、相当なダメージであった。「あらゆる情報をどこからともなく手に入れ、それを決して他人に漏らさない」「何もかも見透かしている」という私に対してのイメージが、彼の被害妄想に拍車を掛けているらしい。私がチラッとハーシェルに微笑みかけただけで、彼は、今自分が、どの女の子をどんなふうに騙してものにしようとしているか、どの人間を、ゲシュタポに告げ口をして失脚させようとしているか、全てを私に読まれて、もうおしまいだ・・・と思ってしまうのだ。しかし、彼にとっての本当の悲劇は、その妄想を自分の取り巻きに、打ち明けられずにいることである。」
「私は、ハーシェルから何か情報を得ようとする時、普段見せない笑顔を彼に向けるだけで良いのだ。そうすれば彼は、それを私に邪魔される前に行動に移さなければいけないと思い込み、焦って、必ず失敗する。そうして私は、その情報を手に入れるどころか、それを元に、彼が考えた間抜けな計画を失敗に終わらせることさえできるのだ。」
小説「雪の降る光景」第1章より
私が嫌いな人間の姿であるハーシェル。
でも、同じ人間である以上、
ハーシェルのような弱い部分を、自分自身も、
どこかで持ち合わせているのかもしれません。
つまり、ハーシェルの存在も私の存在の一部なんです。
だからこそ、これほど嫌い、憎んでいたハーシェルに、
強い縁を感じ、願い通りに自分の手で殺した後、
「私」は強い後悔に苛まれてしまうんですね。