


春まだ浅い鄙(ひな)の里。
雑木林の片隅で
白く清楚に咲く花に
マンサクの木がつぶやいた。
「お互い、こんな寒空で
なんで咲かなきゃならないの」
それに答える白い花。
「おやおや、今日はどうしたの?
春が近いと告げるため
ほかの花に先駆けて
まだまだ寒いこの時期に
きれいに咲くのがお役目よ。
あなたも私と同じはず。
あなたの黄色いその花は
可愛く縮れて素敵だわ。
私は小さな花だけど
冷たい風など気にしない。
私が咲くのを待ちわびる
里びとたちが付けた名は
季節を区切るセツブンソウ。
たまには雪も降るけれど
そんなのちっとも構わない。
ほ~ら、足音、聞こえるわ。
春の足音、聞こえるわ。」
健気な森の妖精に
光よ、やさしく降り注げ!