お久し振り! みんな、覚えているかな?私、姫ネコのアメリよ。私の飼い主はお正月休みで部屋にいるの。
そこへピンポ~ンと音がして、大きなダンボール箱が届けられたわ。私、ダンボール箱の中に入るのが大好きだから、早く入りたいとニャ~、ニャ~と鳴いたの。飼い主はすぐに察して、箱の中の物を全部取り出すと、笑いながら私の前に置いてくれた。何かの匂いがプンプン。間違いない、この中にはいつもの冷凍イカが入っていたのね。
ダンボール箱に飛び込んだら、内側全体に海辺の絵が描かれていたの。飼い主が笑っていた理由が分かったわ。送り主が私のために描いてくれたのね。海岸やカニとか魚とか・・・実はね、飼い主が何度もビデオを見せながら教えてくれたから、私は海辺の生き物については結構、詳しいのよ。
アメリ: う~ん、この箱の中は本当の海辺みたいで、いい感じ。岩陰に穴があるわ。入ってみよ~っと。
あれは波の音かしら?ザ~、ザ~って気持ちが落ち着く音だわ。アレッ?水が動いている。
絵の中じゃなわね。本物の海辺よ。足元は砂。トイレ の感触に似てるかも。でも、ここには穴が
いっぱい開いている。アッ、痛い!誰!
イソガニ: おい、この穴は俺の家だ。壊すな。早く向こうに行ってくれ。
アメリ: あら、イソガニさんね。この穴はあなたのお家?ごめんなさい!それにしてもカニのハサミで挟ま
れると痛いわね。気を付けなくっちゃ。あっちにいるカニたちは大きなハサミを振りかざして私を
呼んでいるみたい。嬉しいな。遊んでくれるつもりなのね。あの特徴のある大きな白いハサミはハ
クセンシオマネキさんだ。今、行くわよ。
どうして~?私が近づいたら、みんな、穴に入っちゃった。遊んでくれるんじゃなかったんだ。
だったら、みんなで手招きして、おいで、おいで、なんかしないで欲しいわ、まぎらわしいったら
ありゃしない。私のこと、嫌いなのかしら?
おや、あっちにいるのはヤドカリだわ。彼なら穴の中に入らないで、私と遊んでくれるかもしれな
いわ。ヤドカリさ~ん。
ヤドカリ: こら、こっちに近づくな!体がでっかいヤツは来るなよ。お前、それ以上近づ くと、俺だって挟
んじゃうぞ。
アメリ: わかったわ、離れるわよ。もう痛いのはごめんだもの。
誰にも相手にされない私は仕方なく、ゴツゴツした岩場に移動することにしたの。そこにはフナムシがたくさんいたわ。
アメリ: もしもし、フナムシさんたち、私と遊んでくれないかしら。
フナムシ: いやだね。君は遊びのつもりでも、体の小さい俺たちにとってはその大きな体は脅威なんだぜ。わかってないんだな~。
アメリ: エ~ッ、そうなの?みんないっせいに岩場の陰に隠れちゃった。つまんないな。
私は一緒に遊びたいんだけど、逃げられてばかり。でも、めげずに再び遊び相手を探して歩いたのよ。そしたらね・・・
アメリ: あら、何かがピョンピョン跳んでいる。変ね。水の中じゃなくて、砂の上を飛んでいる。何か目のギョロっと
した怖い顔をした魚だわ。でも、声を掛けてみよう。こんにちは!
ギョロ目の魚: 君は何者なんだ!見かけないやつだな。それ以上は俺に近づくなよ!
アメリ: 私は姫ネコのアメリ。少しお話がしたいんだけど、やっぱり私のこと、嫌い?他の生き物たちは私
のこと、嫌いみたいなんど・・
ギョロ目の魚: 嫌いかって?ちょっと違うな。俺もそうだけど、ここの住人は、みんな臆病者なんだ。だか
ら、体の大きな生き物を見ると警戒して逃げちゃうのさ。俺様のこの大きな目は何でも良く見える
から、お前さんが海辺に現れたときから、しっかりと観察していたけど、みんなから随分と怖がら
れていたね。
アメリ: エッ、私は嫌われているのじゃなくて、怖がられていたの?ただ、遊びたかっただけなのにな~。
ギョロ目の魚: そりゃ~無理だろ。そんなデカい身体じゃ、一緒に遊べるもんか。
それより、君はザバ~ッと寄せてくる波が怖くはないのかい?
アメリ: 私は海のこと、ちゃんと勉強したから詳しいのよ。だから、海の中に入らなければ怖くなんかない
ことを知っているのよ。むしろ、私は今ここにいることが嬉しいの。あなたはどうして、みんなに
怖がられている私と話をする気になったの?
ギョロ目の魚: 君を観察した結果、悪いヤツではなさそうだと分かったから、君にとってここが間もなく危
険な場所になることを教えてあげようと思ったのさ。
アメリ: ここがこれから危険な場所になるの?
ギョロ目の魚: 実は、この場所は間もなく海の水の中に沈んでしまうんだ。だから、早く安全な場所へ移動
した方がいいぞ。それを教えたかったのさ。
アメリ:それは大変。海の水は私をさらって、海の底に引きずり込むと聞いているわ。貴重な情報をありがと
う。すぐに移動するわ。でも私、帰り道がわからなくなったの。どうしよう?
ギョロ目の魚: あの岩陰に大きな穴があるだろう。君はそこから出てきたよ。
アメリ: ありがとう。助かったわ。また来てもいいかな~。
ギョロ目の魚: ああ、いいよ。
アメリ: ホント!じゃあ、そのときは一緒に遊んでね。バイバイ。あら私、名前を聞くのを忘れていたわ。
私は教えられた岩穴に入りました。すると、途端にス~ッと身体が浮かび上がったの。気付いたら、飼い主の腕の中だったわ。私ったら、箱の中に入って、うたた寝をしたみたい。
今のは「私の初夢」だったのね。