マコガレイの白身には透明感があり、クセの少ない味わいが特徴です。夏場のマコガレイ
は、活魚を締めて刺身にするのが最適です。また、冬場に水揚げされた真子(卵)持ちの
マコガレイは煮付にすることで身を余すことなく味わうことができます。そのほか、塩焼
きや唐揚げ、ムニエルなどでも深い旨味を楽しむことができます。
マコガレイは北海道南部から大分県付近にかけての沿岸域に生息していますが、茨城県の
沖合で漁獲されるマコガレイは「常磐もの」として、市場で高い評価を受けています。県
ではこのマコガレイの資源の回復と持続的な漁獲を図るため、平成29年度から県の栽培漁
業対象種として、全長4cmサイズの稚魚が試験的に放流され、令和元年からは本格的に運
用されています。今年は4月と6月に放流しています。
本県での漁法は底びき網やさし網などで、夏場にはヒラメよりも高値で取引され、本県の
沿岸漁業を支える重要な魚種なのです。釣り人にとってもこの常磐沖は人気スポットなの
です。尚、マコガレイとは東京市場で呼ばれる名前ですが、地方により名前が変わります。
単にカレイといえばこのマコガレイを指すほどにカレイの中心的魚種になります。
今回はどんな料理にもあう白身魚「常磐マコガレイ」の紹介です。
<ヒラメ(鮃)とカレイ(鰈)>
日本では「左ヒラメに右カレイ」と言いますが、世界の海には眼が左にあるヌマガレイや、
アラメガレイやテンジクガレイと、名前に「カレイ」がつきながらヒラメ科の魚も一部い
るのです。ですから、イギリス・アメリカではどちらも「flatfish ひらたい魚」と呼び、
ヒラメとカレイを区別していないようです。ですが、両者は生き方が正反対。ヒラメは
どう猛なハンターで、海底に身を潜め、エサが近くに来た瞬間にとびかかり、魚類、イ
カ類甲殻類などをバリバリと食べます。 一方でカレイはおとなしく、ちょこちょこと動
き回りながらゴカイなどを食べています。ですから、釣り人たちはヒラメのエサはイワ
シなどの活餌を使うことが多く、カレイは海の砂地に巣をつくるゴカイやイソメなどの
虫餌がよく使われています。ヒラメとカレイは似ているようで食生活が全く違う魚です。
ですから、口の形が違いますので、そこでも見分けがつきます。それぞれに適した調理
法や味わい方がありますので、是非、それぞれの美味しさを実感して頂きたいです。
<カレイの特徴>
カレイは日本近海と北極海、太平洋、インド洋、大西洋に世界中に生息しています。世
界には約100種類、日本だけでもマガレイ、マコガレイ、ババガレイ(ナメタガレイ)、
ホシガレイ、メイタガレイ、アカガレイ、イシガレイ、オヒョウなど40種類以上生息し
ています。また、北海道から九州まで広く分布しているため、地方によって呼び名も味
も旬もいろいろなのです。
カレイは孵化後10日ほどの間は目が普通の魚と同様に左右に分かれて付いていて、体も
平たくありません。成長とともに変態し、目がだんだんと右側に移動します。それとと
もに体が平たくなって、浮き袋がなくなり海底で暮らすようになるのです。カレイの仲
間は概して長寿命で、ヨーロッパ産の一種 プレイス で50年、オヒョウで40年などの記
録があります。日本近海に生息するカレイの寿命はだいたい10年から15年ほどと言われ、
中には20年近く生きるカレイもいます。マコガレイの場合はオスが8年~10年、メスは
10年~15年の寿命と言われています。 ヒラメの寿命は7~8年ほどで、10年は生きられ
ません。
<カレイの漁獲量ランキング>
漁獲量1位の北海道(57.1%)、2位の島根県(5.8%)、3位鳥取県(4.7%)の3道県
あわせて、国内漁獲量の約68%を漁獲しています。茨城県は16位です。(2019年)
<マコガレイの豆知識>
1.北海道のマコガレイ:漁獲量が断トツ1位の北海道ですが、漁場は津軽海峡の木古内
湾と函館湾に限られており、これらの水域では一年中漁獲されています。マコガレ
イの天然海域における生息水温は3~27℃で、知内沖は津軽暖流の影響下にあり
水温が比較的高めであるため、生息に適しているとみられます。
2.栄養価と効能:カレイは消化のよい良質のたんぱく質を豊富に含み、脂肪量は100g中
1.8gと少なく、胃弱の人や体力の低下している人などにピッタリの魚です。また高
たんぱく低カロリーのダイエットに向くヘルシー食材ともいえます。縁側とよばれ
るひれの部分には細胞と細胞をつなぎ合わせるコラーゲンが多く含まれています。
コラーゲンは肌に潤いを与え、肌の若さを保ち、保湿効果をもたらす成分です。
3.ヒレが好まれる理由:「夏座敷とかれいは縁側がよい」ということわざがあります。
夏は床の間より風通しのいい縁側がよく、かれいも縁側(ヒレ)がよいという意味
です。
4.マコガレイのマコとは:「真子」のことで、魚類の卵巣のことを指します(対して、
精巣を「白子」と呼びます。)。その名のとおり、晩秋になるとお腹の卵巣が大き
く膨れ上がり、その煮つけは子持ちガレイとして食されることが多いですが、刺身
で食するなら旬は夏です。蓄えられた栄養分が生殖腺の発達に使われる直前の脂の
乗り切った白身は絶品です。
5.選び方のポイント:①カラダに丸みがある。②身に張りがありかたい。③体表のぬ
めりがあり乾いていない。④目が綺麗で澄んでいる。⑤エラが鮮やかな紅色。
マコガレイは煮付けや唐揚げなどに適していますが、新鮮なら刺身が美味いです。
6.調理のポイント:カレイの代表的な食べ方は、生で食べる刺身、あらい、昆布じめな
どですが、煮付け、塩焼き、揚げ物、ムニエル、フライなどにして食べられます。
カレイは身が柔らかく、崩れやすいので煮物の場合は盛り付けた時、表になる方を
上にして入れ、決して途中で裏返さないこと。
<マコガレイ漁>
県内の底曳網漁業では、禁止期間(7~8月)を除いてほぼ周年マコガレイの水揚げがあり、
この禁止期間の夏季に漁獲されるのが、鹿島灘での建網(固定式刺網)操業で、ここでも
まとまった水揚げがありますので、マコガレイは通年で操業されて市場に出荷されている
ことになります。漁獲では、減少傾向にあるマコガレイ資源の回復と持続的な利用を図る
ため、4cmサイズの稚魚が放流されています。
<マコガレイの栽培漁業・・・生産の流れ>
稚魚の人工飼育は「茨城県栽培漁業センター」(鹿嶋市)にて行われています。
(1)親魚の確保:マコガレイは12月~1月に産卵期を迎えます。この時期、県内の漁協で
は多くの活魚が水揚げされており、その中から採卵するための親魚を確保します。
(2)採卵(人工授精):成熟した雌親魚は腹部を軽く手で押すだけで卵が流れ出てくる
状態となり、1尾の雌から50万~100万粒の卵を得ることができます。そこへ雄親
魚から採取した精子を加えて撹拌し、海水を加えて人工授精を行います。
(3)受精卵:沈性粘着卵で、大きさは約0.8mmです。
(4)ふ化:採卵してから1週間程度で大きさ約4mmのふ化仔魚が誕生します。
(5)種苗生産:マコガレイの稚魚を3cmの大きさまで育てます。飼育中は、餌や水質、
照明などに気を配ります。餌としてふ化後2日頃からシオミズツボワムシを与え、
その後は成長に合わせてアルテミアの幼生、配合飼料を与えます。ふ化後30日
で約1cmの大きさになります。この頃になると左側の目が右側に移動を始めます。
ふ化後45日で約1.7cmの大きさになります。稚魚が大きくなり、水槽が狭くな
るため水槽の数を増やし、飼育密度を下げて飼育します。ふ化後80~90日で
3cmの大きさになり、茨城県(水産試験場)に引き渡されます。
(6)標識づけ:放流する稚魚には茨城県水産試験場によって標識が付けられます。稚魚
を特殊な染料(アリザリン・コンプレクソン)に1晩漬けることで、耳石に色が付
きます。
(7)放流:4cmほどまでに成長した稚魚をカゴに入れ、トラックに積んだ水槽に積み込ん
で放流場所の岸壁や砂浜まで運びます。標識が付けられた稚魚は茨城県水産試験場
によって、その後の生き残りや移動範囲などについての調査が行われます。
<常磐マコガレイの釣果>
1.デカい、肉厚、数釣れる!マコガレイパラダイス:全国的に見ても、マコガレイが数
釣れるエリアはそう多くはなく、大洗沖はレアなマコガレイパラダイスの一つと言
えるでしょう。最盛期にはよく釣る人で2ケタ以上。トップのヒトで15~20尾なんて
日もあったほどです。また、最大55cmも釣れました。ですから、釣れるマコガレイ
がデカい!さすがに55cmはそうそう釣れないけれど40~50cmまでは比較的釣れる
確率の高いエリアなのです。肉厚なマコガレイは、高級魚としても知られます。
2.釣期は春から夏場まで
大洗沖ではお盆くらいに北から黒潮の支流が入ってきて、水温が23度になると食い
がピタリと止まります。ですから釣期は、春から始まり水温が17~18度台で安定す
る6月くらいに盛期を迎え、食いが止まる夏場までといえます。
マコガレイの釣り方の流れを解説すると…
(1)仕掛けを投入し、オモリが底に着いたら余分な糸フケを取る
(2)海底をオモリで小突く。小突くといってもソフトに!底からほんの少し浮かせるイ
メージで7、8回。これでエサの青イソメがフワフワと踊る(マコガレイにエサの
存在を気付かせる)
(3)超スローに竿をスーッと持ち上げる。青イソメが底から離れるタイミング、マコガ
レイからすれば「エサが逃げちゃう」というタイミングでマコガレイが食ってく
ることが多い。
(4)スーッと上げている最中にアタリがきても、ゆっくりと持ち上げ続けると重量感が
出てくるので、ゆっくりとリールで巻き込む。
この基本を守れば1尾も釣れないなんてことが少ない魅力ある大洗沖。それでいて腕の差
が出る釣りですからハマること間違い無しです!
3. マコガレイの食べ方:釣りのシーズンは秋から翌春にかけてだが、刺身の旬は初夏か
ら真夏です。しかし、現在は秋になっても味は落ちないといわれています。何度も
強調していますが、新鮮なマコガレイはやはり活け締めにして刺身で食べるのがお
すすめです。透明感のある白身はヒラメを上回る美味しさで、醤油とわさびで食べ
るよりもポン酢と薬味や肝と一緒に食べると絶品の一品です。マコガレイは他にも
煮付けや、塩焼きなどどんな料理にしても美味しく食べることができます。さらに、
鱗をしっかりと取り、皮を湯引きしてから細かく刻み、ポン酢と紅葉おろしで食べ
ると美味であり、コリコリとした食感も楽しめる珍味になります。
是非、常磐マコガレイをご賞味あれ!