すずしろ日誌

介護をテーマにした詩集(じいとんばあ)と、天然な母を題材にしたエッセイ(うちのキヨちゃん)です。ひとりごとも・・・。

言葉の持つ毒

2008-06-04 21:45:49 | ひとりごと
 梅雨のせいだろうか、ストレスも手伝って肩は凝るし頭痛も頻繁に起きる。メンテナンスが必要だと久しぶりに「あんま」を頼んだ。
 「あんま」に来てくれるのは、いつもの人でもう随分前から来て貰っている人だ。年は若いが結構上手でリピーターも多い。初めは「おしゃべり」の仕方が上手でない分、戸惑うこともあったが、最近では「話術」も慣れた物である。
 今日も「的を射た」場所を手際よくもんでくれていて、私も気分良くいた。彼女もいつも以上に饒舌で
 「みなさんのお陰で仕事出来る」
 「仕事が大好き」
など感謝の言葉を並べていた。病院に勤めていた頃の患者さんとのエピソードに差し掛かる頃には、ちょっと自慢話になり、患者さんに気に入られて周りに嫉妬された話まで出た。謙遜しながら語る自慢話は少し鼻についたが、それでも「仕事に誇りをもっている」彼女らしくて、笑顔でいられた。
 ところが、何を思ったのか彼女はいきなりこう話したのだ。
 「透析とか始めると先は見えてるんでしょ。」
私の心は一瞬で凍り付いた。
 「患者のいる家でそんな話は止めて!」
あまりに強い私の口調に、彼女はうろたえた。
 「ごめんなさい。そんな意味じゃないの。」
・・・。どんな意味だというのだ。
 「8年透析しよった人が、この前たまたま死んだけん。」
!!!まだ言うか?
 「教えといてあげる。病人のいる家で絶対そんなことは言わんことじゃ。本人も家族も必死に闘病してるんやから。気分が悪い!」
 その後、彼女は絶句したままだった。無言のまま施術を終え、支払いを済ますと消え入るような声で
 「今日は、ありがとうございました。」
とだけ言って帰っていった。いつもは玄関まで見送る私だが、今日は彼女の耳に届くように施錠した。口を開いたら追い打ちの言葉が出そうだった。そして、口を開いてしまったら泣き出してしまいそうだった。
 彼女の名誉のために言うが、決して悪い子ではない。ただ、まだまだ世間で学ぶべき事があるようだ。
 眠っていると分かっている父の寝室に行ってみた。穏やかな寝息がいつも以上に胸に染みた。


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コメント (4)
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