すずしろ日誌

介護をテーマにした詩集(じいとんばあ)と、天然な母を題材にしたエッセイ(うちのキヨちゃん)です。ひとりごとも・・・。

愛すべきわがまま者達①

2011-11-05 18:55:54 | ひとりごと
 昨夜はアマチュア劇団時代の仲間との集まりだった。みんなそれぞれの生活があり、毎回会えるメンバーは違うので、去年会った人もいれば、10年ぶり以上という人もいた。
 それでも、会った瞬間につい昨日も会ったようなスタンスでいられるのが、「居場所」だなと感じる。いつまでいても飽きない、いつまでいても「楽」だ。
 劇団をやっている中では、うちの劇団はかなり真面目な優等生な劇団だったが、それでも個性的な面々が集まっている。わがままや迷惑をかけたという意味では「酒癖の悪い」私は、自他共に認める我が儘ものだが、まあ、私の事は棚に上げて、愛すべき彼らについて書いてみたい。
 仁ちゃん。歳は私よりも2つほど若いが、大先輩である。高校生の頃から芝居をしていて、私がこの劇団をファンとして観ていた頃、彼は既に主役級のポジションで芝居をしていた。いつでも真っ直ぐ目を見て話してくれる。少しナルシストの所はあるが、いい人である。
 父の葬儀の時も代表で他の仲間と来てくれた。
 「少しでも早めに行って、お前と話をしてやりたかった。」
彼の心は暖かい。
 劇団の仲間で、阪神大震災のあの年、若くして事故で亡くなった人がいる。私たちにとってそれは衝撃的な出来事だったが、私は忘れて生活をしている。しかし、彼はその亡くなった人の親友たちと、毎年命日には実家を訪ねていると言う。
 「すずもな、酔いつぶれたら家まで運んでもらったんじぇけん、一度は線香あげにいかなな。」
 彼の声は優しい痛みを伴って、胸に沁みた。
 この仁ちゃん、呼びもしないのに私の家に女子が来ると、着いて来る事があった。一度は比較的近くに住んでいた仲間に、練習帰りに
 「お腹すいたね。餃子でも作ろうか。」
と言うと、彼女は大喜びで 
 「うんうん、行く。じゃあ、すずちゃん家で。」
と行った。近所のスーパーで買い物していると、何故か仁ちゃんもいる。まあ、呼んでないぞ・・・と言うほどでもないので、合流。急遽参加した彼は
 「すず、この餃子はうまいなあ!」
と焼いてはぺろり。焼いてはぺろりと食べてくれた。作った物がどんどん皿から無くなるのは、幸せな事だな・・・とその時感じた。
 そして、この彼と彼の奥さんは同じ劇団の仲間だ。奥さんは私よりも後輩になる。ある日、劇団の飲み会の日、家の遠い彼女は私のアパートに泊まる事になっていた。ところが、酩酊した彼女を心配した仁ちゃんは、これまた我が家についてきたのだ。
 酔いつぶれた彼女をベッドに寝かせてから、コタツに入って二人で真夜中まで話した。いかに自分が彼女を愛しているかという事を、キラキラした顔で延々話続ける彼に、私は「うざい」とは一切感じなかった。何だか、幸せな心持ちで頷きながら聴いていた記憶がある。
 結局そのまま彼も泊まった。朝、目覚めた彼女はびっくりしていた。彼女のためにトーストとハムエッグを準備していた私に
 「すず~。朝はご飯と味噌汁がいいなあ~。」
と得意の甘え声。
 仕方なくご飯と味噌汁を準備していると
 「すず~。椎茸の匂いがする。俺、しいたけ食えない。」
鍋を火から下ろして作り直し。けれど、やっぱりこの二人が愛しくてならなかった。
 「私たちが結婚したのは、半分はすずさんのせいですから。」
と彼女は、結婚後にそう言った。色々あって一度は別れていたらしいが、あの日を境によりを戻したと言うのだ。なるほど、キューピッドかもしれない。
 昨夜、どんなに娘と息子を愛しているかと、キラキラした顔で話す彼は、変わってないなあと嬉しくなった。
 「子供と嫁と一緒に必ず会いに来なよ。」
心からそう言った。                   つづく

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コメント (3)
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