先日、キヨちゃんと出かけた時のことである。いつも家の中の戸締りを確認して、ガスを確認して、玄関を施錠して出かけるのだが、出かける前に雨がぱらついた。
大急ぎで洗濯物やリュウを屋根のあるところに移して、慌しく出かけたのだ。で、つい玄関の施錠を確認しなかった。というか、正確にはその辺りの記憶が無い。
とにかく、家に帰りつくまでそんな事にすら全く気づかなかったのだが、帰り着いて玄関の鍵を探して、あるはずの車のダッシュボードにないところでハタと気づいた。慌てて玄関のドアノブをまわすと、ありゃりゃ開いている。
「母ちゃん・・・。鍵かけ忘れた。」
田舎なので、そんな間に泥棒が入るような心配は殆ど無いのだが、それよりも鍵が無い事が疑問だった。
玄関の鍵はいつも玄関先の鍵置き場か、車のダッシュボードである。他人の車で出かける以外はカバンに入れることもしない。
もしかしたら、雨のバタバタでうっかりジーンズのポッケに入れて、出掛けた先で落としたかもしなかった。
家の中、車の中、家の周囲をさんざん探したが見つからない。キヨちゃんと二人して、それこそ絶対にそこにはありえないという場所まで探した。車に至っては、ダッシュボードの中身を出して探し、運転席も助手席も後部シートも、座布団の上もひっくり返しても、終いには足元のシートまでめくって探したが見つからなかった。
「しゃあないなあ。合鍵作るしかないなあ。」
「ほんなん、作れるん?」
「うん、この辺に店あるか知らんけど。」
そこまで言うとキヨちゃんがさも素晴らしい思いつきのようにこう言った。
「どうせなら、合鍵作ってもらうんなら、店で新しい鍵を二人分買ったほうがええでえ。」
おおお、こんな田舎でセキュリティなんかに全く興味ないと思っていたキヨちゃんが、すごい決断・・と感心した。
「ほんでも、ほうしたら玄関の鍵ごと換えないかんけん、高いもんにつくよ。」
「・・・?玄関の鍵も換えないかんの?」
・・・やはり、あなたはキヨちゃんだった。
「ほうでなかったら、どこでも適当に買うた鍵で開けられたら、泥棒入り放題やん。」
キヨちゃんのおおぼけは置いといて、その後が問題である。その後、キヨちゃんと家で食事をして、近所まで車で送ってくれというので、一緒に車に乗り込んだ。キヨちゃんが荷物を置こうと後部シートを見て
「あ、あんたまたこんな所に鍵置いたらなくすでよ。」
という。へ?と後ろを見ると、さんざん探して見つからなかった玄関の鍵が、座布団の上にきちんと座っていたのだ。
「母ちゃん・・・。これ、玄関の鍵じゃ・・・。さっき一緒に探したよなあ・・・。」
「うんうん。座布団やひっくり返してまで観た。」
・・・気持ち悪い。後部シートにあること自体疑問だが、100歩譲って後ろにあったとしても、ひっくり返した座布団の上にどうやって乗っかる?
狸だ・・・きっと狸だ。いや妖怪かもしれない。そういう事にしておこう・・・・。
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大急ぎで洗濯物やリュウを屋根のあるところに移して、慌しく出かけたのだ。で、つい玄関の施錠を確認しなかった。というか、正確にはその辺りの記憶が無い。
とにかく、家に帰りつくまでそんな事にすら全く気づかなかったのだが、帰り着いて玄関の鍵を探して、あるはずの車のダッシュボードにないところでハタと気づいた。慌てて玄関のドアノブをまわすと、ありゃりゃ開いている。
「母ちゃん・・・。鍵かけ忘れた。」
田舎なので、そんな間に泥棒が入るような心配は殆ど無いのだが、それよりも鍵が無い事が疑問だった。
玄関の鍵はいつも玄関先の鍵置き場か、車のダッシュボードである。他人の車で出かける以外はカバンに入れることもしない。
もしかしたら、雨のバタバタでうっかりジーンズのポッケに入れて、出掛けた先で落としたかもしなかった。
家の中、車の中、家の周囲をさんざん探したが見つからない。キヨちゃんと二人して、それこそ絶対にそこにはありえないという場所まで探した。車に至っては、ダッシュボードの中身を出して探し、運転席も助手席も後部シートも、座布団の上もひっくり返しても、終いには足元のシートまでめくって探したが見つからなかった。
「しゃあないなあ。合鍵作るしかないなあ。」
「ほんなん、作れるん?」
「うん、この辺に店あるか知らんけど。」
そこまで言うとキヨちゃんがさも素晴らしい思いつきのようにこう言った。
「どうせなら、合鍵作ってもらうんなら、店で新しい鍵を二人分買ったほうがええでえ。」
おおお、こんな田舎でセキュリティなんかに全く興味ないと思っていたキヨちゃんが、すごい決断・・と感心した。
「ほんでも、ほうしたら玄関の鍵ごと換えないかんけん、高いもんにつくよ。」
「・・・?玄関の鍵も換えないかんの?」
・・・やはり、あなたはキヨちゃんだった。
「ほうでなかったら、どこでも適当に買うた鍵で開けられたら、泥棒入り放題やん。」
キヨちゃんのおおぼけは置いといて、その後が問題である。その後、キヨちゃんと家で食事をして、近所まで車で送ってくれというので、一緒に車に乗り込んだ。キヨちゃんが荷物を置こうと後部シートを見て
「あ、あんたまたこんな所に鍵置いたらなくすでよ。」
という。へ?と後ろを見ると、さんざん探して見つからなかった玄関の鍵が、座布団の上にきちんと座っていたのだ。
「母ちゃん・・・。これ、玄関の鍵じゃ・・・。さっき一緒に探したよなあ・・・。」
「うんうん。座布団やひっくり返してまで観た。」
・・・気持ち悪い。後部シートにあること自体疑問だが、100歩譲って後ろにあったとしても、ひっくり返した座布団の上にどうやって乗っかる?
狸だ・・・きっと狸だ。いや妖怪かもしれない。そういう事にしておこう・・・・。
