今宵は十三夜です。
十三夜といえば、わたしのことだから「『さやけき月に風のおと添ひて・・・』は上野の森の月」だとか、「鄙びた港町で月を眺めるのも・・・」だとか、またまた、そんなトーンで記すのではないか、きっと、そうお思いでしょうが・・・・
今回はカンぺキに裏切りますね(笑)。
「十三夜」という名の飲み屋の話です。
かつて新宿西口商店街にあった居酒屋「十三夜」<画像>に足繁く通ったものでした。
<古い写真のためピンボケでスイマセン>
当時は、いまのように小田急ハルクのデカイ建物もなく、もちろんバレットビル(新宿西口会館)も無かった。線路際に20数軒の店舗があったろうか、その大半がやきとり屋、もつ屋で店をつらね、戸板一枚で区切った造りであった。
いまも新宿西口商店街を「やきとり横丁」とか「思い出横丁」とよばれるのは、あの頃の名残ではないだろうか。
居酒屋「十三夜」は、そんな一角にあった。
さほど広い店ではなかったが、肉じゃが、もつ煮込み、ブリ大根などメニューが豊富で、若鶏の唐揚げから手作りのコロッケまでつくってくれた。
なかでもホッケの塩焼きがとても美味しかった。酎ハイはいつもライムサワーだった。
それに安かった。500円もあれば十分だった。
空(から)にしてって酒も肴も
今日でおしまい 店仕舞い
五年ありがとう 楽しかったわ
いろいろお世話になりました
しんみりしないでょケンさん
新宿駅裏 紅とんぼ
想いだしてね 時々は
ちあきなおみの「紅とんぼ」の一節です。
この歌を聞くと、きまって居酒屋「十三夜」のことを思いだします。
店には、いつも笑顔のおみつさんと、ちょっぴりおきゃんな奈緒美ちゃんの二人の女の子がせわしく働いていた。
「ハイ!本日のサービス!」とエプロンの下から手品のように小鉢を出してくれることもあった。よくみると、里芋の煮ころがしだったりフライドポテトだった。
「風邪ひかないようにね!」とか「しっかり頑張りなさいよ!」と励ましもしてくれた。
おみつさんや奈緒美ちゃんは今頃どうしているのだろうか・・・・。
店はオーナーもかわり、「鳥園」とかいう焼き鳥屋になっていると風の便りにきいた。
居酒屋「十三夜」は、私にとって、ひとつの「青春」だったのです。