「えっ? 男のフィギュアスケートなんて、誰が見るの?」
良識ある大人なら平気で口にする。
「どうして男がフィギュアスケートなんてやるのか、まずそこからして理解できなかった」
少なくとも2002年のソルトレークシティー五輪で4位に入賞した本田武史の活躍までは、そうであった。
それがめくるめくものなのか!!
およそ「王子」とか「貴公子」などは、メルヘンの世界にしか存在しないと思われてきた。
それが氷上にあらわれた。
フィギュアスケートの男子シングルなんです。
王子や貴公子だけではない。スリムな身体でしなやかに舞い、圧倒的なオーラーをまとった「戦士」もいれば、鋼のような筋肉をまとった「野獣」もいる。
さらに強烈な個性の「道化師」さえもいる。
さて最近
『最強男子。』(青嶋ひろの)という五輪向けのガイドブックを見つけました。
最強男子とは、
高橋大輔、織田信成、小塚崇彦の3人。
でもページの大半は
高橋大輔(←以下ダイスケと記載)。ダイスケ特集といってもよい。
だから私が買わないわけがない(笑)
フィギュアスケートというスポーツはなんでもあり、なのだ。
白いリンクを土煙舞う西部開拓地に変えようと、白鳥の舞う湖に変えようと。
あでやかな衣装の下に隠された男たちの筋肉の強靭さ。
そんなスポーツだから、この魅力にハマればたまらない。
圧巻だったのは、『白鳥の湖』のヒップホップバージョンだ。
私は、これを
なみはやドームでナマで観た。
『白鳥の湖』はクラッシックバレーのピカ一の名曲。
それをヒップホップに変えてしまうなんて、無謀な冒険だと思った。
ダイスケはあっさりやってのけた。
この世に<陶酔>という単語は、あたかもダイスケだけにあるかのように・・・。
結局はわたしを虜にしてしまったのである。
『白鳥の湖』ヒップホップバージョンは、斬新で、何よりも強靭な神経が必要とされるプログラムである。
ダイスケの世界一のステップはもちろんのこと、氷の上で舞う高橋大輔は情熱的で、ひたすら凛々しく、ありえないほどの「オーラー」を発散させた。
それでいて「男のセクシー」を匂わせた。
今シーズン、ダイスケは新しいプログラム『道』にトライした。
『道』はご存知だろうがイタリー映画の名作。
最も厳しい戦いのためにつくられたプログラムである。
最初から最後まで爽やかだが、「優雅」、「色気」などはほとんどない。
あるのは道化師の「愛嬌」だけ。
本場イタリーの道化師について振り付けを学んだという。
ケガは必要だったんだな、ということも心底実感しているから。
昨年まる1年、すごくいろんなものにぶつかった。
迷ったり、落ちこんだり、悩んだり、何をやっても充実感がなかった
コーチの長光歌子さんが語ってくれた。
「ケガする前よりも、いいところが沢山出てきましたからね。いい体験だったと思いますよ。
思いがけないマイナスの出来事は、自分の後ろに、経験値として蓄積されますから」
ダイスケはリハビリ中に抜け出して、1週間ほど行方をくらませたこともある。
「オレ、どうなちゃうんだろう?」という気持ちがいつもどこかにあった。
また試合のあと、マネジャーから会場に残るようにと声をかけられると、
「えっ? またダメ出しかよ!!」
茶髪でも、タトゥーもいれていないが、ダイスケにはヤンキー的な一面がある。
かと思えばアイスダンスのナタリーが大好きだという。
「だってさ、わんこ系で、可愛いじゃん!!」
ダイスケも氷上を離れると、「フツウの男の子」である。
トリノでは、日本から高橋大輔ひとりだった。
今回は史上初めての最多数3人をオリンピックに送り込む。
しかし喜んでばかりいられない。
スイスのステファン・ランピエールも戻ってくる。
強敵ロシアのエフゲニー・プルシェンコもいる。
ともあれバンクーバーオリンピックのフィギュアの男の子、おもしろいです。
バンクーバー五輪は、あと8日で開幕する。