すっかりあきらめていたのに、不思議。
四年前に転勤で引っ越したときのこと。
新居で荷物を解いていて、前の家のキッチンに飾っていた時計が見つからないことに気がついた。ちょっと思い出のある、ポートマリオンの時計。
いつも引っ越しの際は、何かしら紛失するものがある。引っ越し業者が全て梱包してくれるのだが、壁にかけた絵画や時計などは私達依頼主が責任をもって取り外し、梱包だけ業者にお願いすることになっている。全て私達で取り外したつもりだったのだが、忙しさにまぎれてつい忘れてしまったのだろうか。
前の家を私達から購入した家族が無事に引っ越しを済ませたころに、メールで連絡してみた。ところが、返事は「それらしきものは見当たらない」とのこと。
夏の引っ越しシーズンには、よその家の荷物とごちゃまぜになって箱ごと荷物が無くなることはよくある。あの時計も、そうやってどこかに行ってしまったのだろう。転勤族にはあるあるの事柄だ。がっかりしたが、仕方がない。
が、今日の午後、TABIパパが地下の食料貯蔵室を整理していたところ、見慣れない箱を見つけた。何が入っているのだろう、と開けてみたら、梱包用紙に包まれた件の時計が!
ちょっとホコリっぽかったが、傷ひとつない状態で見つかった。
なぜ、4年前には気づかなかったのか?
今の家を新築して再び引っ越したときも、探したのに見つからなかったのに?
ちょっと異次元に迷い込んだような気がするが、不思議なことがあるものだ。この4年間、あの時計は私達とともにいたのだ。ただ私達が鈍感で、気が付かなかっただけ。
なんだかTABIが、「ぼくはいつでもそばに居るよ。気が付かないかもしれないけど」と濡れた鼻先でツンツンとつついて知らせてくれたような気がする。
綺麗に拭き清めた時計は、早速キッチンの壁に。めでたし、めでたし。