アメリカのセールスは強引と聞いていたが、これまでとは。
夕方、若い女性(たぶん大学生アルバイト)が訪れ、カーペットクリーニングの
新製品デモを無料で行っているという。いらないと断ったのに「15分で済む
から」と引き下がらず、開けたドアからするりと家の中に入ってしまった。
ここで「警察を呼ぶぞ」と脅して追い出すべきだった。
その後、デモンストレーターと自称するじいさんが掃除機を持って現れ、
「45分で済むから」とクリーニングを始めた。ま、確かにものすごい汚れが
とれる。毎日掃除機をかけているのに、犬の毛や砂、泥、フィルターはすぐに
目詰まりするほど。カーペットの色が、どんどん白くきれいになる。
だけど、掃除機ごときに日本円にして25万は出せねえよ!日本に2回は里帰り
できる金である。しかも、その掃除機は重くて私にはとても扱えない。
45分のはずが、夕食時間を過ぎてもまだ終わらない。
「買わないよ」と夫も断言したのに、「まあ効果を見てから考えたら」と言って
しつこい。リビングとダイニングをクリーニングするのに、数時間もかかるのか。
そうこうするうち、ビジネスマン風な黒人のセールス担当が現れ、「この機会に
買っちゃいましょう!おまけしますよ」とまくしたてる。
結局、クリーニング・デモが終わったのは夜の9時過ぎであった。
その間、黒人セールスマンはたびたび訪れ、(きっと近所も回っていたのだろう)
そのたびに値段はダンピングされる。10ドルまで下がったら買ってもいいか
と思ったが(笑)、そうはいかない。頑固に断り続け、やっと連中は引き上げて
いった。
典型的な心理作戦だ。
時間をかけてじりじり追い詰めていく、戦争中の捕虜やスパイを陥落させる
手口を、セールスに利用したもの。あまりのしつこさに根負けしてサインして
しまう人が実際にいるから、こういうビジネスが成り立つ。
一人暮らしの老人なんか、かっこうのカモだ。
今回はだまされずに済み、カーペットがきれいになったが、次回は警察だ。
ホーム・セキュリティの会社に直通で通報するのもいいかもしれない。
全く、油断のならないアメリカ暮らしである。