迷子の伝書バトは、まだ我が家にお泊りしている。
初日はフラフラしていたので心配したが、だいぶ回復してしっかり立って歩けるようになった。また、屋根くらいの高さなら問題なく飛び立てる。食欲もあり、野鳥用のトウモロコシやピーナッツ、混合餌などをパクパク食べる。
アマゾンの箱はお気に召さなかったらしく、入ってくれない。夜はどこで寝ているのか?このへんは地上は狐が出るし、空中は鷹が狙っているから、裏の森の樹上に隠れて寝ているのかもしれない。
よく見ると、本当に美しい鳥だ。そのへんの野良とは違う気品が漂っている。
「野生の動物を保護したら、名前は決してつけてはいけない。つけると情が移り、いずれ野生に帰すときにつらいから」と言われる。だけど、やっぱり呼び名がないと不便なので、「ポッポ」と命名(笑)
フンのほうは下痢がおさまり、固形っぽくなってきた。助かったよ、ここ3日ほどは三時間おきくらいに医療用手袋をはめ、消毒用ウェットティッシュでデッキについたフンを拭き取ることの繰り返し。鳩のフンは腐食作用があるから、すぐ拭かないと金属の表面なんかすぐ剥げてしまう。
いつまでもうちで世話をするわけにいかないから、野鳥の保護団体に連絡してみたら、「足輪がついている鳩は野鳥ではないので、うちでは手を出せない」と言われてしまった。うーん、むずかしいのね。
そこでネットで調べたところ、足輪がついている鳩はレース競技用鳩だということがわかった。この足輪に、所属団体や飼い主の情報が載っているという。
そこで夫婦でポッポをつかまえ、足元を見てみることにした。
って、これがもう大変。フラフラしてた初日にやれば簡単だったかもしれないが、もう元気になってきたのですぐ逃げてしまう。あきらめて、餌を食べている間にTABIパパがそっと近づいて写真を撮り、拡大することにした。
緑の方には何も書いてないが、オレンジの方は数字やアルファベットが並んでいる。ネット検索すると、この鳩は Canadian Racing Pigeons Union というレース鳩団体に所属していることが判明。
ネットで団体のサイトを検索し、「迷子のレース鳩を見つけたらここへ連絡して」という電話番号にかけてみた。
ところが、応対に出た女性は迷子鳩には全く興味がないとのことで、飼い主の連絡先すらも教えてくれない。まさにけんもほろろの態度。自分とこの団体所属の鳩なのに、あんまりじゃない?
仕方ないのでまたネットで、足輪の情報を入れて検索。すると、別の連絡先が出てきた。そこへかけてみたら男性が出て、飼い主さんかと思ったらなんと、この鳩のブリーダーさん!
この人はとても親切で、いろいろ丁寧に教えてくれた。この鳩は、ブリーダーさんのところからよそへ買われていったとか。ポッポちゃんは、現役のレース鳩なのだった。先週、隣の州でレースが行われたのだが、なにかが原因で迷ってうちへ来てしまったらしい。猛禽類に追われて逃げてるうちに迷ったり、磁場の影響で帰巣本能が狂ったり、いろいろあるみたい。
緑の足輪は、実はICチップが内蔵されており、レースの際にはスタートラインを越えるときにセンサーがチップを読み取り、タイマーがスタートする。フィニッシュラインでは同様にセンサーがチップを読み取り、タイムを計測する。イカサマができないようになっている仕組みなのだそうだ。
レース団体の女性とは両極端で、このおじさんはとても気さくだし、鳩のことを心から気にかけている様子だった。「ピーナツとかあげてるけど、大丈夫かな?」と聞くと、「ああ、あの子はピーナツ大好きだから。野鳥の餌に混ぜて食べさせてね」とか、愛情を感じる。
電話したときブリーダーさんは出先だったので、帰宅してから飼い主の情報など調べて折り返し連絡してくれることになった。
良かったね、ポッポ!
なんとかお家へ帰れそうだよ。