TABIの検査結果を聴きに行く。
病院は2時半に閉まるので、夫が帰宅してすぐ車で出かけた。
抗体価、CBC、CP、検便、そして組織検査も全て正常。脂肪のコロコロは
放っておいても平気とのこと。全体的にとても健康で、なんの問題もなしとの
合格点をいただき、ほっと安心。良かったね、TABI。
閉まる直前に滑り込みだったので私たちが最後だったが、待合室には同年代くらい
の夫婦がいた。TABIがご挨拶にいくと、妻の方が「まあフレンドリーでかわいい
子ね、うちの犬もこんな風なのよ」となでなで。彼らは、今日はその犬を
安楽死する予約で来たのだという。
その子は数日前から食べなくなった。検査をしたところ、助かる見込みのない
ガンだとわかった。11歳だという。だから彼女の目は真っ赤だったのか。
夫の方はサングラスをかけていてわからないが、きっとやはり泣いたあとが
あるに違いない。犬はすでに、獣医と助手と共に診察室の一つに入っている。
ドアが開いたときに、かわいい肉球模様のベッドに寝かされた赤毛のゴールデン
レトリバーの体が見えた。飼い主はとても見ていられないので、待合室で
待つことにしたらしい。
夫の方がドアのガラス窓から中を覗き、「今薬が入ったよ」とつぶやくように
言う。それから助手がドアを開け、夫婦は最後のお別れをしに入っていった。
私はこれまで人間や動物の死体は見たことがあるが、生き物が最後の息を
引き取る現場に居合わせたのは初めてである。その犬を見たわけでないが、
壁やドアで仕切られていたとはいえ、10歩も離れていないところに、生と
死の境を越えようとする命があったのだ。
病院へ一歩足を踏み入れた時に、私はいつもと違う空気を感じた。消毒薬の
臭いとか動物臭とかではなく、なんとも形容し難い、経験したことのないニオイ
であった。あれが、死のにおいというものなのか。おどろおどろした怖いもの
では決してなく、むしろ厳かな、神聖とも言うべき不思議な空気であった。
11年の楽しい思い出を残し、今その子の魂は苦痛のない世界にある。
どうぞ安らかに。
病院は2時半に閉まるので、夫が帰宅してすぐ車で出かけた。
抗体価、CBC、CP、検便、そして組織検査も全て正常。脂肪のコロコロは
放っておいても平気とのこと。全体的にとても健康で、なんの問題もなしとの
合格点をいただき、ほっと安心。良かったね、TABI。
閉まる直前に滑り込みだったので私たちが最後だったが、待合室には同年代くらい
の夫婦がいた。TABIがご挨拶にいくと、妻の方が「まあフレンドリーでかわいい
子ね、うちの犬もこんな風なのよ」となでなで。彼らは、今日はその犬を
安楽死する予約で来たのだという。
その子は数日前から食べなくなった。検査をしたところ、助かる見込みのない
ガンだとわかった。11歳だという。だから彼女の目は真っ赤だったのか。
夫の方はサングラスをかけていてわからないが、きっとやはり泣いたあとが
あるに違いない。犬はすでに、獣医と助手と共に診察室の一つに入っている。
ドアが開いたときに、かわいい肉球模様のベッドに寝かされた赤毛のゴールデン
レトリバーの体が見えた。飼い主はとても見ていられないので、待合室で
待つことにしたらしい。
夫の方がドアのガラス窓から中を覗き、「今薬が入ったよ」とつぶやくように
言う。それから助手がドアを開け、夫婦は最後のお別れをしに入っていった。
私はこれまで人間や動物の死体は見たことがあるが、生き物が最後の息を
引き取る現場に居合わせたのは初めてである。その犬を見たわけでないが、
壁やドアで仕切られていたとはいえ、10歩も離れていないところに、生と
死の境を越えようとする命があったのだ。
病院へ一歩足を踏み入れた時に、私はいつもと違う空気を感じた。消毒薬の
臭いとか動物臭とかではなく、なんとも形容し難い、経験したことのないニオイ
であった。あれが、死のにおいというものなのか。おどろおどろした怖いもの
では決してなく、むしろ厳かな、神聖とも言うべき不思議な空気であった。
11年の楽しい思い出を残し、今その子の魂は苦痛のない世界にある。
どうぞ安らかに。