寄り道も我が道なりし酉の市 長谷川栄子
酉の市 往年の賑わいはなくなったが
客と金をかきあつめるという縁起物の熊手を
売手とと客が大声で値段を交渉する
交渉成立では周囲の群衆も巻き込んで
為政の良い手拍子が鳴り渡る
三の酉まである年は火事が多いとされていた
(小林たけし)
酉の市】 とりのいち
◇「お酉さま」 ◇「一の酉」 ◇「二の酉」 ◇「三の酉」 ◇「酉の町」 ◇「熊手市」 ◇「おかめ市」 ◇「頭の芋」(とうのいも) ◇「熊手」(くまで)
11月の酉の日に行われる鷲(大鳥)神社の祭礼。最初の酉の市を一の酉、次が二の酉、そして三の酉と呼び、三の酉まである年は火事が多いとされる。東京浅草の鷲神社の酉の市は特に有名で、「江戸にて今日を‘酉の町’と号し、鷲大明神に群詣す」(『守貞漫稿』)と言われるほどの賑わいを見せる。参道には福をかき寄せる熊手などの縁起物を売る露店が立ち並び、富貴開運を祈願する人群でごった返す。
例句 作者
たかだかとあはれは三の酉の月 久保田万太郎
ストレスを払つて下さいお酉さま 植村久子
デ・キリコの迷い込むかな酉の市 田井淑江
三の酉おかめの笑みで四十路で 古沢太穂
二の酉をはずれて点り飛不動 松田ひろむ
大ごえで泣くこともなく一ノ酉 和知喜八
大熊手小熊手をして万の素手 成田千空
朝風に金箔飛ばす熊手かな 野村喜舟
東京ににんげん多く酉の市 山崎聰
板前は教へ子なりし一の酉 能村登四郎