ケンのブログ

日々の雑感や日記

返品お断り

2020年09月11日 | 日記
今日、2軒のお店で買い物をして、その両方のお店で会計のときに
「返品はできませんのでお願いします」という趣旨の言葉をかけられた。

僕は子供のころ、あんこやさんで育って、大概はこちらからお菓子屋さんとかパン屋さんとかそいうところに配達に行く商売だった。

しかし、あんこをこちらまで出向いて買いに来てくれる人もいて、そういう方には工場で働いているおじさんが「はい、毎度おおきに ありがとうございます」という感じで声をかけていた。

そんな毎度来てくれるお客さんでもなくたまたま通りかかったおばあちゃんが買いに来てくれたという場合でも、「毎度ありがとうございます」というのが言葉の標準形だった。

そういう幼い頃の体験が心のスタンダートになっているせいか買い物をして「ありがとうございます」も全く言ってもらえずに、「返品はできません」という言葉を背にしてお店をあとにすると、なんだかとても悲しい気持ちになってしまう。

お買い上げありがとうございます、と言ってもらえると、本当に買ってよかったなあ。その品物を大切に使いたいなあという気持ちになる。

返品はお断りです、という言葉を添えて商品を渡されると、返品に応じていると赤字が出てしまうような自信のない品物を売っているのだろうかとか、

僕は人相が悪いから、このおっちゃんあとで開封してから返品して金返せ、と言ってくる、ゆするたかりの人に見えるのかとか、そんな暗い方向に気持ちが言ってしまう。

映画、男はつらいよの主人公寅さんの得意のセリフに
「おい。勘違いしないでくれよ。おれはゆすりたかりじゃないんだから」というものがあった。

お店の人が寅さんの一見やくざのような風貌やべらんめえの口のききかたにビビって、返品お断りのような硬いことを言い出したときによくこの「勘違いしないでくれよ、俺はゆすりたかりじゃないんだから」というセリフが飛び出していたように思う。

僕も時々寅さんの真似をして「勘違いしないでくれよ、俺はゆすりたかりじゃないんだ」と啖呵のひとつも切りたくなることもあるけれど、寅さんの話はあくまで映画の中での世界だし、実際に僕がそんなこと言ったらもう二度とそのお店には行けなくなってしまうように思う。

まあ、こういうのもいろいろ複雑になった世の中、何か法的な理由でもあるんだろうなと思って調べてみると

店頭での売買は客の方から買うという意思をお店で決めてこれ買いますという意思表示をして品物を買うので、品物を買ってお金を支払った時点でもうその売買という一つの契約による行為は完了している。

なのでお店の側に返品に応じなければならない法的な義務は全くなく、もし返品に応じたとしたらそれはお店のサービスの範疇に属するもとの売買とはまた別の契約。というようなことが書いてあった。

まあ、よくわかる話だなとは思う。

ところが今は訪問販売などによるクーリングオフのことがさかんに話題になるので店頭での販売もこのクーリングオフのように売り手の側に返品に応じる法的義務があると勘違いして店にでかい顔して返品を要求してくるお客さんも少なからずいる。

なので衛生に関する品物などはたとえ開封していなくても何があるかわからないからそう簡単に返品に応じていては何か事故があった時にそれこそお店の信用問題にかかわる。

また、どのような品物であれ返品を要求することが当然の権利であるかのように言ってくるお客さんにいちいち対応していては売買という行為が不安定なものになり、お店が不当に損害を被る可能性が高くなってしまう。

なので返品はお断りします、と売るときに一言添えれば、返品はできないということに買い手も同意した上での売買契約ということになり、あとで返品要求が来たときに、返品不可も込みでの売買契約ですので、と抗弁すれば法律的にどうのこうのと言ってくる客にも臆せず対応できるという趣旨のことが書いてあるサイトがあった。

言われてみればなるほどど思う。

そういえば、返品には応じられませんので、と言ってものを売る店員さんは概して生真面目タイプの女性店員さんが多いようにも思う。

今、僕が読んでいる脳科学者の書いた本に女性は不安をおさえる働きをするセロトニンという物質の分泌量が男性に比べると少ないので、女性は男性よりも不安になりやすい傾向にある。

なので一般に女性のほうが男性よりも将来起こりうる不安に対して先手をうつ傾向が強い、というようなことが書かれている。

うーん、そう言われてみればそうかも、と思ってしまう。

そう考えているうちに、返品は不可ですとレジで言われたくらいでいちいち腹を立てていたら今の時代は、逆にそれが時代錯誤になってしまうとも思えてきた。

しかし、それでも、やはり「お買い上げありがとうございます」と言える世の中のほうがいいなと思ってしまう。

僕が住んでいる隣の街のCDの量販店に、生真面目タイプの店員さんがいて、その人は僕がCDの取り寄せを依頼するたびに、たくさんあるお店の免責事項をマニュアル通りに逐一僕に確認してくる方だった。

こういう場合は取り寄せには応じられませんという免責事項を5つも6つも逐一僕に確認してくるので、もういやだと思いながらも、はい、はいと返事をしていた。

心の中では僕がそんなにちょっとしたことで文句を言ってくる客だと思っているのかと思いながら、、、、。

ところがその店員の方はやめられたか違う店舗に移動になったかで今年の3月くらいから違う店員の方が取り寄せ受付の担当になった。

その方は、逐一免責事項をマニュアル通り全部読み上げるように確認してくるタイプの方ではなかった。

僕がロシアのCDを注文すると、船便なので半月以上かかる場合もあるけれどそれでもいいですかとそれだけ聞いてこられて、僕がはいというとすぐに発注に出してくれた。

そうこうしているうちにコロナによる緊急事態宣言でお店は休業。

緊急事態が開けてお店が再開して、僕ももうそのロシアのCDを発注したことを忘れた頃になって、僕に電話をかけてきてくださって「ちょっとコロナということになってしまって。あと二ヶ月待っていただいて、入れば入る、入らなければ入らない。もし入らなければその時点で取り寄せ受付の契約は取り消しになるということでよろしいですか」という話をしてくださった。

ああ、もちろんです、覚えててくれてありがとう、と僕が言うともう一度発注に出してくれて、さらに二ヶ月後に、やはりだめでした申し訳ありませんと電話がかかってきた。

いいえ、長い間お気にかけてくれてありがとうございましたと僕言って電話を切った。

あの店員の方は本当に親切な方だったなと思う。