たままま生活

子育ての間にこっそりおでかけ・手作り・韓国語・・・。
多趣味な毎日を紹介します。

『走れ、父さん』キム・エラン著

2013-04-19 20:04:02 | 韓国文学
きむ・ふなさんのラジオ講座で「誰が海辺で気ままに花火をあげるのか」を聞いた方もいるでしょう。



『달려라,아비』は、「誰が気ままに・・」も収録されている、2005年の作品です。

その後短編集が2冊と、大ヒットした長編の『두근두근 나의 인생;ドキドキ僕の人生』があり、
今年「침목의 미래;沈黙の未来」で、李箱文学賞を最年少で受賞した、というわけです。

最年少で受賞したことで大きな話題にもなり、今一番話題の作家の一人です。


今回は、『두근두근..』に出てきた両親像は、キム・エランの小説によく出てくるモチーフだから読み比べてみるといいよ、というアドバイスとともに大学の先生に貸してもらいました。


『두근두근…』は韓国には珍しい高校生カップルのできちゃった結婚から話が始まります。
この両親の設定が、キム・エランの小説によく出てくるモチーフだというのです。


読んでみると確かに、若すぎる結婚・妊娠や、片親の家庭など
韓国で考えられる「あるべき姿」ではない家庭を描いていることがわかります。
たぶんね、こういう不完全な家族に対する偏見は日本以上に大きいはずです。
例えば、若くて結婚して高校を中退してしまうと韓国では軍隊に行くこともできません。
ずっとハンパ者になってしまうし、職業も限られるでしょう。
父親のいないシングルマザーへの偏見も根強くて、今でも海外に送られる養子はゼロではないのです。

キム・エランの小説の登場人物たちは、それを気にすることなく、負い目に感じることなく
淡々と生きていく姿が読んでいて爽快です。


ラジオ講座を聞かれた方はわかると思いますが、
体言止めが多くて、短い文章を繰り返すキム・エランの文章には独特のリズムがあります。

本当に韓国語らしい文の流れとはちょっと違うので
好みがわかれるかもしれませんが、私は好きです。

日本人学習者には読みやすい短編集だと思います。


この短編集を読んで自信をつけたら、
『두근두근 나의 인생』で長編デビューを果たす、というのもいいですね。
ストーリー性があって、文章が短く、ほどよいユーモアもあって、
私が読んだ中で、一番読みやすい長編でした。


『誰が浜辺で気ままに花火をあげるのか』は
こちらで小さな冊子(読み切り単行本)が買えますよ~。

『두근두근 나의 인생』もそろそろ日本語訳が出る予定です。