遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉 69 郷愁

2015-10-25 13:18:36 | 日記

           郷愁(2009.5.13日作) 

 

   松林の中の道に沿った

   彼女の家の横を過ぎる

   丈高い生け垣に囲まれたその家に彼女は

   二人の姉と両親 祖母と暮らしていた

   彼女に憧れていた中学生の頃

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   十幾年かが過ぎた

   東京での暮らしを生きる身になっていた

   十幾年かぶりの帰郷 故郷の村は

   昔と変わっていなかった

   郷愁を誘われるままに

   松林の中の道を歩いてみる

   彼女の家は昔のままにあった

   十幾年か昔の記憶が甦る

   彼女がその家にいると思うと心が高鳴った

   郷愁はだが たちまちに深い喪失感に変わっていた

   昔の彼女は もう いない 地方の都市に嫁いだ噂を

   誰かから聞いていた

   丈高い生け垣に囲まれた

   松林の中の道に沿った家

   その家は昔と変わらずそこにあるのに

   彼女はもう いない

   時の流れが永遠に

   彼女を連れ去ってしまっていた