遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉 125 冬のメダカ

2017-02-12 12:59:20 | 日記

          冬のメダカ(2011.12.18日作)

 

 

   五月にわが家に来た五匹のメダカ

   小さな水瓶の中 睡蓮の葉陰を

   快速艇の如くに泳ぎ廻り

   時には 仲間を追い掛けたり 追い掛けられたり

   瞬時に方向転換する機敏な動きが

   見飽きる事のない興味を誘って 心を和ませた

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   この年 平成二十二年(2010)八月は

   まれにみる猛暑が 人も草木も 動物達をも 辟易させて

   生きる力を奪っていった

   わが家に来た五匹のメダカ 彼等もまた 

   例外ではあり得なかった

   炎天下 野外に置かれた 小さな水瓶の中の水は

   湯のように温まり 睡蓮の葉陰に身をひそませる

   小さなメダカたちをも苦しめた

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   やがて 八月も半ばを過ぎる頃

   メダカたちは遂に 猛暑に耐えられなくなったのか 

   一匹 翌日にはまた一匹 と

   無惨にも白濁化して その死体を

   水底に横たえるようになっていた

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   猛暑は九月になっても終息しなかった それでも

   秋 彼岸が近付いて さしもの猛暑もようやく

   幾分かの和らぎを見せて来た頃 ふと 覗いた

   水瓶の中 睡蓮の葉陰には ただ一匹

   泳ぐメダカの姿があった

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   ただ一匹

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   五匹がわが家に来た五月には華やかな交響曲

   幾つもの音が響き合い 重なり合って

   様々な趣を創り出す あの音楽のように

   小さな水瓶の中にはメダカたちが描き出す

   様々な動く絵模様が幾重にも重なり合い

   溶け合って 華やぎと楽しさを演出し

   見る者の眼を楽しませてくれていたが 今

   水瓶の中には ただ一つの楽器 バイオリンの

   か細い弦が奏でる淋しい音色だけが流れるように

   ただ一匹 生き残ったメダカの孤影が軌跡を残すだけで

   それぞれが それぞれを追い掛け廻し 戯れ合っていた

   あの交響曲 華やぎはもう そこにはない

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   それでも季節は 確実にメダカの上にも過ぎて逝く

   湯のように温まった水瓶の中の水も師走の今 この季節

   日毎に冷たさを増して来て

   生き残った ただ一匹のメダカも

   その冷たさに耐えるように 水底でじっと動かず

   息をひそめている

   風薫る五月のあの頃 小さな水瓶の中とはいえ

   仲間達と縦横無尽に走り廻っては

   華やぎと楽しさを振りまいていた あの賑わいは

   今はない  

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   ただ一匹 生き残ったメダカ 彼は今 水底にじっと身をひそめ

   何を思っているのだろう? 彼もまた

   彼の孤影にわたしが抱く 孤独な感覚を

   自身の身に感じているのだろうか? あるいは

   人間が抱く 浅薄な感情など彼には微塵もなくて

   ただ 生きている その事だけで充足し

   淋しさも楽しさも除外して

   何を望む事もなく 何を考える事もなく

   ひたすらに自身の命の今を生きているだけなのか?

   ただ一匹 取り残されて生きるその姿 そこに孤影を見るのは

   人間の愚かな感傷 ひ弱な心の動きでしかないのだろうか?

   それとも

   小さな水瓶の中 水底でじっと動かず

   冷たさに耐えるメダカもまた 

   仲間達のいた五月のあの頃

   あの賑やかさと楽しさを思い浮かべながら

   一瞬の間に過ぎて行った夢のような日々を

   懐かしんでいるのだろうか?

   

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