眠り(2017.9.25日作)
夜も更けた
静寂(しじま)が辺りを包む
闇が孤独を運んで来る
さあ 今夜もこの身を
静かな眠りの世界にゆだねよう
静かな眠りは 唯一
心の安らぎ 仮想の死
今日という日の一日の
愚劣や汚濁のすべてをその中に
閉じ込めて
春の日射しに暖かい
水面に揺蕩(たゆた)う小舟のように
心穏やかな
夢を夢見て 静かな眠り
仮想の死へと入ってゆこう
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幼い日 未来が
遠く 大きく 彼方に向かって
開けていた頃
眠りは明日に連なる希望の橋
新たな生を産み出すための
魔法の力に満ちた
手綱だった
歳を経て今
眠りの中に求めるものは
ただ一つ 心の安らぎ
仮想の死
明日に連なる希望の橋は すでに
閉ざされた
新たな生を生み出すための
魔法の手綱も 擦り切れた
今日という日の一日が 今
運んで来るものは
耳に弔鐘 眼に訃報
崩れゆく友垣 人の輪
時代の壁に描(えが)いた絵は
打ち寄せる新たな時代の波に
消されて逝く
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さあ、今夜も
静かな眠り 仮想の死に
この身をゆだねよう
唯一 それだけが今では
心の安らぎ 魂の
落ち着き場所
沸き立つ愚劣と汚濁の時代の中から
この身を退(しりぞ)けて
命の終わりが打ち寄せる時間の中で
命の源 生の根源 人が
生きるという事のその意味を 心に
問いかけながら
今夜も この身を
静かな眠り 仮想の死に
ゆだねよう
やがて来る真相の
死への準備 支度を
始めるとしよう