眼(20912.8.8日作)
( この文は平成二十四年に書いたものです 当時と現在とでは 多少 社会的状況が異なるかも知れません)
なんという見事な
あの眼の輝き
なんという美しさに満ちた
あの眼の輝き
なんという迫力 力強さに満ちた
あの眼の輝き
闘う意志 本能を剥き出しにした
獲物を狙う野生動物さながらの
あの眼の輝きがもたらしたもの
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平成二十四年 2012 ロンドン
オリンピック大会 檜舞台に於ける
女子柔道五十七キロ級での見事な勝利
金メダル 松本薫選手
日頃の鍛錬 努力の総てを
あの眼の輝きの中に込め
勝負に臨む きっぱりとした意志を
あの眼の輝きの中に込め 闘い
遠く離れたこの国 日本で
檜舞台に見入る人々のすべてを
興奮と感動で包み込んだ
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この国の人々の中から失われて久しいもの
ギラギラ燃える闘志
総ての困難に立ち向かう
力に満ちた意志 覚悟
遠い昔
この国が敗戦 焼土の中から
立ち上がった時 確か
この国の人々の眼の中には
あの眼の輝きがあった
明日を夢見て
今日よりもっと良く
今日よりもっと豊かに
今日よりもっと強く
今日よりもっと高く
今日よりもっと美しく
今日よりもっと楽しく
今日よりもっと
今日よりもっと
他国の人々が眼を見張る
力強さと速さで
この国を立ち上げ
新たな国としての成功に導き
この国を世界に誇れる
豊かな国にした人々が
--幾つかの弊害はあったにしても
持ってた眼
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今現在 この時
この国の人々には
かつての人々が持っていた あの
眼の輝きはない 先人達が築いた
豊かさに飼い馴らされ 安穏に
安住していた者達が今持つ
眼の中には
希望を見据え 未来を見つめ 闘う
意志と力に満ちた
あの眼の輝きはない
今現在 この国の現実は
かつての豊かさも食い荒らされ
戦後の焼土から立ち上がった人々が
懸命に築き上げて来た富も
消え去ろうとしている
かつての成長神話 世界に誇った
優れた力も 崩壊寸前の瀬戸際にある
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そんな現実を持つこの国で
平成二十四年 2012 ロンドン
オリンピック大会で見せてくれた
一人の女性柔道家の
野生にも似た眼の輝きが 人々の間に
忘れていたものを 改めて
思い起こさせてくれた
やれば出来る 大切なのは
そこに込める心 意志であり
闘志だ
さあ 力を振り絞って始めよう
もはや 衰退してゆくだけに見えるこの国に
時間はない
きっぱりと 力と意志に満ちた眼で
将来を 未来を 見つめて
今 行動しよう
そうすれば出来るのだ
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遠い国 イギリス ロンドンの地で闘った
一人の女性柔道家の眼は
意気消沈し
気力を無くしたかに見えるこの国の
今を生きる人々に そう
語り掛けているかのようだ