この国は今(2010.5.9日作)
この文章は平成二十二年に書いたもので
平成三十年の現在とは多少の齟齬があるかも知れません
平成も間もなく終わる時に時代の一つの記録として残して
置きたいと思い掲載しました
昭和二十年 1945年 八月十五日
この国は無謀にも自らが仕掛けた
太平洋戦争 第二次世界大戦に 敗北した
その日を境に この国は一変した
敗戦国の惨めな姿 隠された真実が
一挙に露呈した
国土は荒廃し 廃墟にも等しい
悲惨な街の姿が あちこちに顕在化した
人々の生活は困窮の極みに突き落とされ
その日 その日を 懸命に 精一杯
命をつなぐ事にのみ かけ
生きて来た
以来 半世紀を越える歳月が過ぎ
2010年の今 この国は
必死に 懸命に
戦後の混乱と苦難に満ちた日々を
生きて来た人々の
努力の中で手にした成功のあとの
虚脱の中にいる
戦後の国土の荒廃
廃墟の中から立ち上がった人々が
心の中に宿した 漲る熱気 あの活力は
平成二十二年の今を生きる人々の 心の中には
昭和二十二年を生きた人々の 心の中にあったようには
存在しない
過去 半世紀を越える歳月の中で
懸命に生きた人々が勝ち取った
豊かさの中に生まれ
その土壌に馴れ親しんだ人々には
もはや その豊かさは
自分達の身の廻りにある
当然のものとして
そこにあるように思い
それ以上の世界を望む事も
思い描く事も出来ないかのように
新たな世界を求める気力も
目指す気力も
見い出せないままでいる
歳月は それでも 確実に
過ぎて逝く
かつては この国の人々の
努力と成功を羨望の眼差しで
横目で見ている赴きのあった
幾つかの隣国がその間に
眼を覚まし この国が目指した
発展と成功の跡を学び
追い掛けるかのように立ち上がり
かつてのこの国が手にした努力の成果を
追い求め
かつてのこの国が世界に誇った成功の体験を
もはや この国一国のものとしてではなく
幾つもの隣国がそれぞれに
手にし始めている
未来への展望を見い出せないままでいる
かつてのこの国の人々が持っていた情熱と
覇気を失くした 今を生きる人々が
ふと 気付けば
この国の成功体験者としての地位は
脅かされ 他国の漲る力の前に
押し流され兼ねないような不安の中で
恐怖と焦燥感にあえいでいる
いったい この国がこれから先
未来に向かって進むべき道は ?
この国の今を生きる人々が
押し寄せる他国の力の前に
怯えているものの正体は ?
今を生きる人々は
かつてのこの国が手にした成功体験
その果実のまだ
完全に失われていないと思える今
冷静に考察し
かつてのこの国の人々が心に宿した
漲る熱気 あの活力を
再び取り戻すには
何が必要なのかを
それぞれの心に問い掛け
この国の新たに進むべき道を模索するーー
幸い この国には この国が持つ
長い歴史の中で育まれた
他国に誇り得る この国独自の
文化がある 力がある
その文化に根差した
この国の在り方が
平成二十二年 2010年 の今
世界の各地で少しずつ
芽を吹き始めているのが見える
ジャパニーズ クール
クール ジャパン
世界は今 新たな眼差しで
この国の姿を見つめ始めている