執筆を担当した
デラックス近代映画『任侠映画のスタアたち』(近代映画社)が発売に。
東映退社後の健さんの歩みなどいろいろと書かせていただきました。
ぜひご一読を↓
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アメリカ西部史上に名高い、アープ兄弟とクラントン一家のOK牧場での対決をクライマックスとする名作西部劇『OK牧場の決斗』(57)を再見。
同じ題材を描いたジョン・フォードの『荒野の決闘』(46)のような詩情はないが、いかにもジョン・スタージェスらしいテンポのいい運びと小気味のいいアクションに加えて、フランキー・レインの歌をつなぎに使った浪曲(浪花節)的な構成が面白い。
例えば、口笛を導入としたレインの歌につれて、正面の丘から馬に乗った三人の悪党の姿が現れるというファーストシーンでいきなり見る側の興味を引く。これは、オープニングに「ハイヌーン」が流れ、悪党が姿を見せる『真昼の決闘』(52)をほうふつとさせる。音楽はどちらもディミトリ・ティオムキン。どちらも悪党の中にリー・バン・クリーフがいる。
中盤、兄を助けるために馬車を操ってトゥームストーンに向かうワイアット・アープ(バート・ランカスター)のバックに流れるレインの歌。それを単騎で追うドク・ホリデイ(カーク・ダグラス)。そこで交わされる「俺も一緒に行くぜ」(ドク)。「勝手にしろ。ここは自由の国だ」(ワイアット)という、ぶっきらぼうで短いセリフの中に、二人の友情が端的に表現される。
そしてブーツヒルの墓地の横を通ってトゥームストーンの街に入る二人。ここでまた、レインが歌い上げて盛り上げる。まるで道行を思わせるような名場面だ。
この映画では、ダグラスが主役のランカスターを完全に食ってしまっている。演じる側としては、法の番人足らんとするワイアットよりも、あくが強く屈折した性格のドクの方が演じがいがあるのだろう。
ところで、ドクの情婦のケイトを演じたジョー・バン・フリートは、もともとは舞台の名女優で映画出演は少ないが、『エデンの東』(55)でジェームス・ディーン、『暴力脱獄』(67)でポール・ニューマンの母親役を演じている。アクターズ・スタジオ出身の二人の名優の母親役を演じた唯一の女優なのだ。