ヒッチコックの『めまい』の影響も
エド・ハリスの一人二役が見もの
30年間連れ添った最愛の夫ギャレットを突然の事故で失ったニッキー。5年後、彼女は美術館で夫そっくりのトムと出会う。夫の面影を求めて、強引にトムに接近するニッキー。やがてトムもニッキーに引かれていくが…。
この映画には、ギャレットの死後、ヒッチコックの『めまい』(58)のポスターが映る場面がある。『めまい』はキム・ノバクが同一人物の一人二役を演じた。ジェームズ・スチュワート扮する元刑事の主人公は、それと知らずに、自殺したとされる女性の面影を瓜二つの女性に求める、という映画だった。
一方、この映画はエド・ハリスが別人を演じ分け、アネット・ベニング演じるニッキーは、それと知りながらトムにギャレットの面影を求める。そうした違いこそあれ、初めにポスターを映すことで『めまい』に影響を受けていることを正直に明かしている。その点は潔いというべきか。
ただ、ニッキーをかわいい女性と見るか、わがままな女性と見るか、はたまた偏執狂的な女性と見るかで、この映画に対する感慨は大きく異なると思われる。彼女に振り回されるトムが哀れに見えると思うのは男が抱く感慨なのか。
昨年亡くなったロビン・ウィリアムズが妻を亡くした隣人役で登場。役柄のせいか、なんだかとてもやつれて見えた。