田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

2023-10-17 18:31:02 | 新作映画を見てみた

『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』(2023.10.16.TCC試写室)

 舞台は1920年代。第1次世界大戦で負傷したアーネスト・バークハート(レオナルド・ディカプリオ)は、おじのウィリアム・ヘイル(ロバート・デ・ニーロ)を頼ってオクラホマ州オーセージを訪れる。

 その町では、油田を掘り当てた先住民のオーセージ族が、土地の石油鉱業権を保持し、高い利益を得ていたが、裏では白人たちが彼らの莫大な富を狙い、ヘイルが町を支配し、オーセージ族の人々が次々と謎の死を遂げる事件が起きていた。アーネストはオーセージ族のモリー(リリー・グラッドストーン)と結婚するが、次第におじの悪事に加担するようになる。

 数年後、姉を殺されたモリーの嘆願を受けて、元テキサス・レンジャーの特別捜査官トム・ホワイト(ジェシー・プレモンス)が大規模な捜査を開始するが、石油の利権や人種差別が複雑に絡み合い捜査は難航する。

 ジャーナリストのデビッド・グランがアメリカ先住民連続殺人事件について描いたベストセラーノンフィクション『花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生』を原作とし、もともとはApple TV+での配信用映画として製作された206分の長尺。

 監督のマーティン・スコセッシにとっては、前作のNetflixオリジナル映画『アイリッシュマン』(19)に続く配信用映画となったが、「ずっと西部劇が撮りたかった」という夢がかなったという。長尺ということで、きちんと見られるのかと危惧したが、それは杞憂に過ぎなかった。登場人物や事件の概要を描く前半部と、捜査と裁判、そして結末を描く後半部がきちんとつながり、決して長さを感じさせないからだ。

 冗舌なスコセッシは、普通の長さの映画では語り尽くせないからか、全体のまとまりが悪くなったり、話が支離滅裂になるところがある。そう考えると、長時間にわたって語ることのできる配信系の映画にこそ、彼の本領が発揮されるのかもしれない。『アイリッシュマン』とこの映画の出来の良さを見ると、そんなふうに感じる。

 脚本はエリック・ロスとスコセッシが共同で執筆。撮影のロドリゴ・プリエトと音楽のロビー・ロバートソン(元ザ・バンド)は『アイリッシュマン』からの続投となった。ちなみにロバートソンは自らもインディアンの血を引く。

 ディカプリオは、当初は捜査官役を演じる予定だったが、「単なるFBIの捜査物にはしたくない」として、自ら駄目男のアーネスト役を希望し、それに合わせて脚本も書き直されたという。おじ(白人)と妻(先住民)の間で揺れ動くアーネストの二面性を表情豊かに表現するディカプリオの演技が見ものだ。

 一方、デ・ニーロが演じたヘイルは、一見先住民たちに同情的で親切な善人のように見えるが、実は陰で悪事の糸を引く大悪人。ところが彼も先住民たちのことを理解し、愛してもいるという二面性を持っている。ある意味、この映画のキーワードは“二面性”なのかもしれない。

 ところで、ヘイルとアーネストの関係性は、かつて2人が共演した『ボーイズ・ライフ』(93)での、支配的な継父と義理の息子にも通じる気がして、そこもまた面白かった。


ディカプリオとスコセッシ
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/5ae3f32515b55d1d4a88621366e91769


ロビー・ロバートソンとマーティン・スコセッシ1
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/a009f8a5dd5f838739c52384238b2113

ロビー・ロバートソンとマーティン・スコセッシ2『カジノ』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/f5601767e48ab2ad344784415f82176d


 

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【ドラマウォッチ】「下剋上球児」(第1話)

2023-10-17 10:00:51 | ドラマウォッチ

「南雲先生が部員たちの頑張りに心が動く瞬間にしびれた」
「鈴木亮平がみんなを集めてしゃべるとこっちまで信じて従いたくなる」
https://tvfan.kyodo.co.jp/news/topics/1408130

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谷村新司「帰らざる日々」「群青」「天才・秀才・ばか」

2023-10-17 09:30:32 | 音楽

 谷村新司といえば、アリス時代の「今はもうだれも」(カバー)「帰らざる日々」(作詞・作曲:谷村)「遠くで汽笛を聞きながら」(作詞:谷村・作曲:堀内孝雄)「冬の稲妻」(作詞:谷村・作曲:堀内孝雄)「ジョニーの子守唄」(作詞:谷村・作曲:堀内孝雄)「君よ涙でふりかえれ」(作詞:谷村・作曲:堀内孝雄)「チャンピオン」(作詞・作曲:谷村)「未成年」(作詞・作曲:谷村)、そしてソロの「陽はまた昇る」「昴 -すばる-」「群青」「いい日旅立ち」など、名唱や名曲は多い。

 このうち、「帰らざる日々」は、藤田敏八監督の『帰らざる日々』(78)の主題歌となり、「陽はまた昇る」は同名ドラマ(79)の主題歌、「群青」は、松林宗惠監督の『連合艦隊』(81)の主題歌として書き下ろしたもの。

 だが、自分にとって思い出深いのは、谷村がディスクジョッキーを務めた文化放送の深夜番組「セイ!ヤング」での「天才・秀才・ばか」のコーナーだ。

 このコーナーは、MCの谷村とばんばひろふみが、リスナーから募った面白い話を『燃えよドラゴン』(73)のテーマ曲を流しながら紹介し、「天才」「秀才」「バカ」の3段階に分けて採点するというもの。

 圧倒的に下ネタが多く、谷村の癖のある語りとばんば独特の笑い声につられて、深夜であるにもかかわらず、大笑いさせられた。後には書籍化もされている。

 そのおかげで、自分の中では谷村に“スケベなチンペイ兄ちゃん”のイメージがついて、以後真面目な歌や壮大な歌を歌っている時も、妙な感じがしたものだった。歌ではなく、こんな話題で振り返るのはちと不謹慎か。否、これも彼の愛すべき一面であるには違いない。

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「午後のロードショー」『イントゥ・ザ・ストーム』

2023-10-17 08:30:45 | ブラウン管の映画館

『イントゥ・ザ・ストーム』(14)

頻発する異常気象への不安と恐怖を反映させた
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/f5c33d770a2c0cada37bb9bfde09f6a5

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