『チケット・トゥ・パラダイス』(2022.10.25.東宝東和試写室)
デビッド(ジョージ・クルーニー)とジョージア(ジュリア・ロバーツ)は、20年前に離婚して以来、必要に迫られて会うことはあっても、いがみ合ってばかりいた。そんな2人の愛娘リリー(ケイトリン・デバー)がロースクールを卒業し、親友(ビリー・ロード)と一緒にバリ島を訪れるが、数日後、両親に「現地の男(マキシム・ブティエ)と結婚する」という連絡が入る。
弁護士になる夢を捨て、会ったばかりの男と結婚するなどとんでもないと、デビッドとジョージアは、現地へ赴き、娘の結婚を阻止するために、不承不承、共同戦線を張ることになるが…。
最近は珍しくなった、いわゆる“ラブコメ”で、あり得ない設定でのお気楽な恋愛話が繰り広げられる。ハワード・ホークス監督の『ヒズ・ガール・フライデー』(40)を参考にしたという通り、クルーニーとロバーツが丁丁発止と渡り合うさまが見どころ(久々にロバーツの大口全開)。
ただ、リリーの結婚観があまりにも能天気で、どうにも納得できない。ロースクールを出たエリート候補が、南の楽園で一目ぼれした男と結婚するという、状況を見れば、両親が「今はいいけど、そのうちに飽きる」と考えるのは至極まっとうな話。だから、笑いの核となるべき、両親と娘の対立構造が生むおかしさが弱くなる。
その分、心底映画に入り込めず、コロナ禍を経た今、「だからこそ、こうした娯楽映画(ラブコメ)が必要なのだ」という思いと、「本当にこんなにお気楽でいいのか」という、二律背反する思いが交錯するような、隙間が生じるのだ。
このあたりの緩さは、監督が、同種の失敗作『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』(18)のオル・パーカーなので、推して知るべしか。
『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/536c0aabb048407da93961dce9db39d5
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