『男はつらいよ 葛飾立志篇』(75)(2010.7.17.浅草名画座)
久しぶりに映画館で寅さんと再会。今回は寅さんが樫山文枝演じる大学の助手にほれて学問に目覚めるのだが、東大法学部卒のインテリである山田洋次が描く、無学な寅さんが持つ滑稽さや悲しみ、そして無学故のたくましさという二律背反がこのシリーズに深みを与えていると感じた。
個人的には、シリーズの舞台である葛飾・柴又の隣町に引っ越してきてから1年がたち、「男はつらいよ」シリーズへの親しみがさらに増した。それと共に、年を取るにつれて山田洋次の人間描写の確かさや細かいシーンのうまさに気がつくようになった。
『明治侠客伝 三代目襲名』(65)
時代劇(様式美)と実録やくざもの(リアリズム)の間に挟まれた徒花のような東映任侠映画の代表作。加藤泰監督のローアングルへのこだわり、鶴田浩二のどこまでも説教くさいセリフ回し、ある意味で娘の寺島しのぶよりもずっと生々しい藤純子、いかにも憎々しい悪役の安部徹と大木実の存在感、冒頭でアラカンを刺す脇役・汐路章のすご味、まだマイワールドを構築する前の丹波哲郎の怪しい演技など見どころ満載で楽しんだ。
なぜかピストルを持っている客人の藤山寛美、ラストの出入りに赴く鶴田浩二が馬に乗って行くところや貨物列車からぬーっと姿を現すシーンには西部劇的な趣きもある。
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