『シンペイ 歌こそすべて』(2024.10.22.TCC試写室)
明治末、信州から上京し、東京音楽学校(現・東京藝術大学音楽学部)に入学した中山晋平(中村橋之助)は、ピアノは上達しなかったが、幸田先生(酒井美紀)に演奏以外の才能を見いだされ、どうにか卒業する。
やがて演出家の島村抱月(緒形直人)から「芸術は大衆の支持を離れてはならない」という教えを受けた晋平は、作曲家として「カチューシャの唄」「ゴンドラの唄」「船頭小唄」「東京音頭」といった流行歌から、「シャボン玉」「てるてる坊主」といった童謡まで、さまざまなジャンルの曲を手がけるようになる。自分の音楽を理解してくれる敏子(志田未来)と結婚し、2人の養子を迎えて幸せに暮らす晋平だったが…。
明治、大正・昭和を生き、約2000曲を残した作曲家・中山晋平の生涯を描いた伝記ドラマ。本作が映画初出演、初主演となる歌舞伎俳優の中村橋之助が18歳から65歳までの晋平を演じた。監督は『ハチ公物語』(87)、野口英世を描いた『遠き落日』(92)、『宮澤賢治 その愛』(96)など、ユニークな伝記映画を得意とする神山征二郎。
中山晋平は、作った曲は今も有名なのに、彼自身についてはほとんど忘れられているという不思議な人。欧米では、昨年公開された『ボレロ 永遠の旋律』(24)のモーリス・ラベルように、往年の作曲家の人生を描いた映画は少なくないが、日本ではあまり作られていない。その意味では、多少類型的になったところはあるが、こうした映画が作られたことは晋平ファンの一人としては喜ばしい。
名曲誕生のエピソードに加えて、晋平と絡む、島村抱月(緒形直人)、西條八十(渡辺大)、野口雨情(三浦貴大)らの人物描写も面白い。
『生きる』の「ゴンドラの唄」
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熱海梅園、中山晋平記念館
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