田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『室町無頼』

2025-01-10 12:28:06 | 新作映画を見てみた

『室町無頼』(2024.12.13.東映試写室)

 1461年、応仁の乱前夜の京。人々は大飢饉と疫病に襲われ、人身売買や奴隷労働も横行していた。だが、時の将軍・足利義政(中村蒼)は享楽にふけっていた。そんな中、己の腕と才覚だけで乱世を生きる自由人の蓮田兵衛(大泉洋)はひそかに倒幕と世直しを画策し、立ち上がる時を狙っていた。

 一方、天涯孤独で夢も希望もない日々を過ごしていた才蔵(長尾謙杜)は、兵衛に武術の才能を見いだされて鍛えられ、彼の手下となる。やがて兵衛のもとに集った無頼たちは、巨大な権力に向けて暴動を仕掛ける。そんな彼らの前に、兵衛のかつての悪友・骨皮道賢(堤真一)率いる幕府軍が立ちはだかる。

 日本史上で初めて武士階級として一揆を起こした蓮田兵衛の知られざる戦いをドラマチックに描く、垣根涼介の時代小説を映画化した戦国アクション。監督・脚本は入江悠。

 昨年『碁盤斬り』『十一人の賊軍』が公開された白石和彌監督に続いて、入江監督も時代劇に参戦。この映画のユニークなところは、あまり時代劇映画の舞台にはならない室町時代を背景にし、実在したが無名の男を主人公としたため、自由度が高くなった点にある。それ故、アクションや設定にマカロニウエスタンや香港の武侠映画の要素を取り入れながら、独自の世界を構築している。大泉も長尾もみごとな殺陣を見せる。

 上記2作の白石監督と、『雪の花 -ともに在りて-』の小泉堯史監督にインタビューした際に、時代劇の魅力について尋ねると、どちらも「時代劇の魅力は自由なところで、そこに現代性を持たせることもできる」と語ってくれたが、この映画の入江監督に尋ねても同じような答えが返ってくるのではないかという気がした。

 その一方、『十一人の賊軍』とこの映画の製作・配給はかつて時代劇を量産し黄金時代を築いた東映で、『侍タイムスリッパー』にも協力している。そう考えると、これらの映画は“ニュー時代劇”ではあるが、ちゃんと伝統も継承しながら作られていることが分かる。こうして様々な形で時代劇が復活し、どんどん元気になっていくのはうれしい限りだ。

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【ほぼ週刊映画コラム】『劇映画 孤独のグルメ』『シンペイ 歌こそすべて』

2025-01-10 08:26:56 | ほぼ週刊映画コラム

共同通信エンタメOVOに連載中の
『週末映画コラム』

今週は
空腹時に見てはいけない『劇映画 孤独のグルメ』
約2000曲を残した名作曲家の生涯を描いた『シンペイ 歌こそすべて』

詳細はこちら↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1459101

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「BSシネマ」『大いなる西部』

2025-01-10 08:00:29 | ブラウン管の映画館

『大いなる西部』(58)

「お気楽映画談議」
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/a1a46cfb235a9718c22d837a28d10f40

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『男はつらいよ 葛飾立志篇』『明治侠客伝 三代目襲名』

2025-01-10 00:21:43 | 映画いろいろ

『男はつらいよ 葛飾立志篇』(75)(2010.7.17.浅草名画座)

 久しぶりに映画館で寅さんと再会。今回は寅さんが樫山文枝演じる大学の助手にほれて学問に目覚めるのだが、東大法学部卒のインテリである山田洋次が描く、無学な寅さんが持つ滑稽さや悲しみ、そして無学故のたくましさという二律背反がこのシリーズに深みを与えていると感じた。

 個人的には、シリーズの舞台である葛飾・柴又の隣町に引っ越してきてから1年がたち、「男はつらいよ」シリーズへの親しみがさらに増した。それと共に、年を取るにつれて山田洋次の人間描写の確かさや細かいシーンのうまさに気がつくようになった。


『明治侠客伝 三代目襲名』(65)

 時代劇(様式美)と実録やくざもの(リアリズム)の間に挟まれた徒花のような東映任侠映画の代表作。加藤泰監督のローアングルへのこだわり、鶴田浩二のどこまでも説教くさいセリフ回し、ある意味で娘の寺島しのぶよりもずっと生々しい藤純子、いかにも憎々しい悪役の安部徹と大木実の存在感、冒頭でアラカンを刺す脇役・汐路章のすご味、まだマイワールドを構築する前の丹波哲郎の怪しい演技など見どころ満載で楽しんだ。

 なぜかピストルを持っている客人の藤山寛美、ラストの出入りに赴く鶴田浩二が馬に乗って行くところや貨物列車からぬーっと姿を現すシーンには西部劇的な趣きもある。

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『されど魔窟の映画館 浅草最後の映写』 (荒島晃宏)

2025-01-10 00:16:07 | ブックレビュー

『されど魔窟の映画館 浅草最後の映写』 (荒島晃宏)

 かつての映画館のメッカ浅草六区に残った旧作映画とピンク映画を上映する昭和レトロな映画館群「浅草中映劇場」「浅草名画座」「浅草新劇場」「浅草世界館」「浅草シネマ」(一つの会社が経営)。だが、実はいわゆる「ハッテンバ」だったり、時には警察や消防が出動するなど場内はまさにカオス状態。

 多額の借金を背負い、そこに映写係で勤務することになった筆者が体験する疾風怒濤の日々。だが、かつては映画館街として栄えた浅草から、ついに映画館の灯が消える日がやってくる…。

 以前、『名画座番外地:「新宿昭和館」傷だらけの盛衰記』(川原テツ)という本を読んだが、本書も同じように個性的な映画館に勤めた者にしか書けない代物で、カオスから閉館に至るまでの、おもしろうてやがて悲しき物語だった。その川原氏は浅草名画座にも籍を置いていたらしいが、『名画座番外地』と本書の違いは、筆者の荒島氏が映写係であるところだろう。それ故、映写係から見た映画館や観客というユニークな内容になっている。

 荒島氏は自分とほぼ同年代。文中で、1982.4.10.に浅草東宝のオールナイトで『獣人雪男』『怪獣大奮戦ダイゴロー対ゴリアス』『妖星ゴラス』『キングコング対ゴジラ』『世界大戦争』という東宝特撮5本立てを見たと記しているが、自分もその時そこにいた。

 また荒島氏が映写技師をしていた大井武蔵野館と自由が丘武蔵野館(旧武蔵野推理劇場)には自分もよく通った。

 加えて、荒島氏は2011年に『映画館のまわし者: ある映写技術者のつぶやき』を近代映画社から出しているが、その前年に自分も同じ近代映画社から『人生を豊かにするための50の言葉 名作映画が教えてくれる最高の人生の送り方』という本を出した。何か、いろいろとかすっていると思いながら読み進めていくと親近感が湧いてきた。

 さて、浅草東宝よりも浅草六区の奥にある映画館群はやはり怖さが勝って足を踏み入れたことがなかったが、2010.7.17.『男はつらいよ 葛飾立志篇』『明治侠客伝 三代目襲名』で浅草名画座にデビューした。

 そして、スカイツリー元年となった2012.4.レッツ・エンジョイ東京「違いのわかる映画館」で浅草中映劇場と浅草名画座を取材した。話を聞いたのは広報係もやっていたという荒島氏ではなく、支配人だった。中映劇場と名画座は同年の10月に閉館したから、まさにぎりぎりで間に合った取材となった、


【違いのわかる映画館】vol.19 浅草中映劇場/浅草名画座(2012.10.閉館)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/2404ff037e7fc20f6a39c6a8e14245dc


 

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