『ビリー・ホリデイ物語/奇妙な果実』(72)
ジャズ歌手ビリー・ホリデイの半生を、シドニー・J・フューリー監督、ダイアナ・ロス主演で描いた伝記映画だが、今見直すと、いささか麻薬中毒者としての部分を強調し過ぎている感じがした。
そもそもホリデイとロスとでは容姿も声質も全く違う。伝記映画は再現と独創のどちらを重視するかによって描き方が異なり、そのバランスが難しいのだが、この場合は、ホリデイよりもロス本人のイメージが勝っている。
その結果、ロスは、同じく黒人のシシリー・タイソン(『サウンダー』)とともに、72年のアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたが、受賞したのは『キャバレー』のライザ・ミネリだった。
そのほか、夫となるルイス(ビリー・ディー・ウィリアムズ)、親友となるピアノ奏者(リチャード・プライヤー)、売春宿の客(スキャットマン・クローザース)ら、後に有名になる黒人俳優たちも登場する。
白人のキャラクターでは、唯一、ハーレムのクラブのオーナー・ジェリー(シド・メルトン)がいいやつで、彼の存在に救われる思いがする。
今から思えば、この映画は、70年代初頭に数多く作られたブラックムービーの一本だったのだが、それらの多くは白人監督が撮った黒人映画だった。近々公開される『ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ』は、黒人監督リー・ダニエルズがアンドラ・デイをホリデイ役にして撮った黒人映画。50年の時を経て、ホリデイの描き方はどう変わったのか、興味がある。
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