『THE 有頂天ホテル』(06)徳川膳武
監督・三谷幸喜。所々に楽屋落ちの冴えは見られるものの、全体的には雑多な登場人物のキャラクターが整理されておらず、大風呂敷を広げ過ぎて収拾がつかなくなった印象を受けた。
一カ所に集まった人々のドラマを並行して見せる、いわゆる『グランド・ホテル』形式をきっちりと描くには、よほど演出力に長けていなければ難しい。それを上滑りのスピード感だけで描こうとしたところにこの映画の失敗があると思う。「♪ドンキホーテ、サンチョ・パンサ♪」の歌はちょっと耳に残るが…。三谷さん今回はちとお遊びが過ぎましたねえ。
『丘を越えて』(08)菊池寛
菊地寛と彼を取り巻く人々を描いているのだが、尻すぼみの人物伝になってしまった。なにより、男たちを惑わせる池脇千鶴を魅力的に撮れていないから説得力に欠けるし、何故ラストだけをミュージカル風にしたのかもよく分からない。とは言え、西田敏行は”誰を演じても西田敏行"という点では、別の意味ですごいと言えるのかもしれない。
『ザ・マジックアワー』(08)天塩幸之助
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/c224fee8be74f6210ab06b1cccb4fbad
『ラーメンガール』(09)マエズミ
山崎努を特出させているのをはじめ、全体的に伊丹十三の『タンポポ』(85)の影響を強く感じるが、後に残るのは『ベスト・キッド』(84)になり損ねた珍品という印象。日本人のラーメン職人(西田敏行)とアメリカ人娘という師弟の心の変化の描き方が雑で、見ていてイライラしてくる。主演のブリタニー・マーフィはドラッグで若死にしたらしいが、この映画でもかなり病的な感じがし、陰惨な印象を受けた。
『旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ』(09)滝沢寛治(園長)
くせ者役者たちがみんな楽しそうに飼育係りを演じている。特に西田敏行と長門裕之の絡みには、往年の「池中玄太80キロ」を思い起こさせられ、ちょっとうるっときた。これはマキノ雅彦(津川雅彦)の演出の妙なのか。意外な拾い物だった。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます