グループの中心人物のジョー・ハントとディーン・カーニーを、若手のアンセル・エルゴートとタロン・エガートンが演じているが、2人の上を行く詐欺師を演じたのが今や半引退状態のケビン・スペイシー。この映画は、彼の同性に対するセクハラが告発される前に完成していたため、公開に踏み切ったとのこと。
2人を完全に食った達者な演技を見せられると、彼を干してしまうのはいささか惜しい気もするのだが、それとこれとはやはり別問題なのか。アンセルとは『ベイビー・ドライバー』(17)でも共演していたから、彼は無事だったのか…などと、見る側に思わせてしまう時点でアウトということなのかもしれない。
思えば、グループの連中は自分とほぼ同世代。映画が描いた事件の狂乱と空しさが、この直後に起きた日本のバブル景気の前後に重なって見えるところもあるのだか、ハントとディーンが目立ち過ぎてグループ劇としては弱くなり、詐欺の手口がいま一つ分かりにくいところが惜しかった。
83年を表す曲としてのデヴィッド・ボウイの「レッツ・ダンス」が流れ、87年製作の同名テレビムービーでジョー・ハントを演じたジャド・ネルソンが、今回はジョーの父親役で登場する。こういうディテールは面白い。