硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

恋物語 17

2021-03-24 21:33:19 | 日記
外に出るとすごく冷たい風が吹いていた。今年の冬はいつより寒い感じがする。急いで手に持っていたマフラーを巻きなおすと、先輩もネックウォーマーを頭からかぶりながら、「さびぃ! 明日は雪降んのかな。」
と言った。

「ホワイトクリスマスになるかもですねぇ。先輩、クリスマスはどうするんですか? 」

「飲み会って言いたいとこだけど、今は自制の時だしな。バイトも店長がお客が来ないから休みにするって言ってたし、授業の課題も残ってるから、家で過ごすよ。ヒラはどうするの? 」

「午前中は学校で、午後からは・・・私も勉強しなくっちゃ。」

「それって、しないだろ。」

「バレてましたかぁ~。」

おどけて見せる私。二人で笑う。周りの人からはリア充って思われてるかな。
先輩と歩きながら二人きりで話すものも、もう最後かもしれないなぁ。

改札を通る。帰る場所が違うからここでお別れ。

「先輩」

「なに? 」

「また、LINEしていいですか? 」

「いいよ。いつでも歓迎するよ。」

「じゃぁ、またLINEしますね。今日はありがとうございました。」

「おう! じゃあ、またな。」

「じゃあ、また。」

お互いに手を振りあうと、先輩は、階段を下りて向かい側のフォームへ向かった。
プラットフォームには、電車を待つ人が線に沿って並んでいた。私もその列に並ぶと、電車が近づいてくることを知らせる駅員さんの乾ききったアナウンスは他の音と混じって溶けていった。
私はもう、先輩にLINEしない気がするし、先輩もそれを分かってくれてるんじゃないかと思いながら、流されるように開いた扉を通ると、向こう側のフォームに先輩が見えた。
窓際に寄ると、先輩も気づいて、また手を振ってくれた。私は、口パクで「ありがとう」と言って、割り切れない気持ちを引きずったまま、動き出した電車の中から小さく手を振った。