その日は、シフトの関係で古株さんが「リノ」の指導係になり、終日、行動を共にする事となったが、それが事件発生の予兆であった。
その日の午後のおむつ交換を始める前に、古株さんは、ほんの少し難易度の高い利用者さんのおむつ交換を、「リノ」にたのんだのであるが、「リノ」は何を思ったのか、間髪を入れずに、「できません」と言ったのだった。
古株さんからしてみれば、何回も指導係といっしょにおむつ交換にあたっているのを知っていたので、「もう一人でも、できるだろう」と思って、ごく普通に指示を出したつもりであったが、なぜか、指示を拒絶し、古株さんも新人からそんな態度をとられる事は初めてだったらしく、イライラはついに臨界点を越え、いつも以上に強く「リノ」を咎めた。
そして、叱責を受けた「リノ」は、相当堪えたのか、その晩、泣きながら咎められた部分だけを吐き出すと、その話を真に受けた父親は、翌日「うちの娘が泣いて帰ってきた! どういうつもりなのか」と、施設に怒鳴り込んできたのであった。
まったくの「寝耳に水」であった施設長は、早急に関係者を集め、詳細を確認後、丁寧に事の顛末を説明したのであるが、父親は釈然としないまま現場に不協和音だけを残して去っていった。
しかし、非は「リノ」にあり、それは誰にでも理解できたので、父親の言い分を人伝に聞いた職員達は、「あのおやじ、ちょっとおかしいぞ」という印象を持ってしまう事になった。
それでも、抗議が効いたのか、古株さんの指導の仕方にも不備があったのか、施設長からのお達しがあったのかは分からないが、現場における「リノ」への対応はさらにソフトになっていった。
その日の午後のおむつ交換を始める前に、古株さんは、ほんの少し難易度の高い利用者さんのおむつ交換を、「リノ」にたのんだのであるが、「リノ」は何を思ったのか、間髪を入れずに、「できません」と言ったのだった。
古株さんからしてみれば、何回も指導係といっしょにおむつ交換にあたっているのを知っていたので、「もう一人でも、できるだろう」と思って、ごく普通に指示を出したつもりであったが、なぜか、指示を拒絶し、古株さんも新人からそんな態度をとられる事は初めてだったらしく、イライラはついに臨界点を越え、いつも以上に強く「リノ」を咎めた。
そして、叱責を受けた「リノ」は、相当堪えたのか、その晩、泣きながら咎められた部分だけを吐き出すと、その話を真に受けた父親は、翌日「うちの娘が泣いて帰ってきた! どういうつもりなのか」と、施設に怒鳴り込んできたのであった。
まったくの「寝耳に水」であった施設長は、早急に関係者を集め、詳細を確認後、丁寧に事の顛末を説明したのであるが、父親は釈然としないまま現場に不協和音だけを残して去っていった。
しかし、非は「リノ」にあり、それは誰にでも理解できたので、父親の言い分を人伝に聞いた職員達は、「あのおやじ、ちょっとおかしいぞ」という印象を持ってしまう事になった。
それでも、抗議が効いたのか、古株さんの指導の仕方にも不備があったのか、施設長からのお達しがあったのかは分からないが、現場における「リノ」への対応はさらにソフトになっていった。