硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

「ストレイ・シープ」 第12話

2023-02-24 21:31:20 | 日記
ご飯を食べながら、これまでの経緯を包み隠さず饒舌に語る「リノ」は、自身が抱えている問題をどう解決してゆくかよりも、話を聞いてもらえることがうれしいみたいだったが、余りにも家族を批判するので、「じゃあ、一度家を出てみれば? 」と言うと、「それは無理」と答えた。
何とかならないかと思いながら話を聞いている側としてはとても困惑したが、対話を続けていると、「リノ」は家族や他者に頼る事でしか存在できない依存体質の人である事が分かってきた。
だから好きな人からの拒絶は、依存体質の「リノ」にとって耐え難い出来事で、その辛さから逃れるには、就職してからずっと負荷と感じていた「仕事」を手放すことでしか精神を安定させられないのだろうなと思った。

しかし、担任が苦心して見つけてくれて、みんなに支えられたから働き続ける事が出来てきた職場を離れてしまったら、この先どうするつもりなのだろうか。
もし、退職してしまったらニートになってしまう可能性もある。
だから、その未来を示唆した上で、踏み留まるよう説得を試みたのであるが、彼女が相談を持ち込むときは、今の自分の気持ちに共感してほしいだけというのも分かっていたので、いつかのように、「まぁ若いんだし、いろいろとやってみるといいよ。そしたら、自分に合う仕事がわかるかもしれないから」と、後押しするしかなかった。

その相談から一か月後、「リノ」は本当に退職してしまい、0.5人分の働きであったとはいえ、介護現場において一人の存在は重要な事を誰も気付かない現場は、徐々に余裕をなくしてゆき、「リノ」の最後の相談窓口であった女性もスキルアップを理由に退職する事になってしまった。