鬼山竜也の住宅業界 商売の王道

良い家づくりに真剣に取り組んでいる方々が、お客様のためにより良い仕事が出来るようになるためのヒントになれば、嬉しいです。

【第85回】 損得よりも善悪、やり方よりも在り方

2011年03月26日 | 住宅コンサルタントとして
昨日は、以前から行きたかったお店に視察に行ってきました。

そのお店とは、「AZあくね」というお店です。

鹿児島県阿久根市という、鹿児島県の西北部に位置し、
人口の過疎化、高齢化、低所得化という問題を抱えた地域にあるお店です。

人口がものすごく少ない地域で、しかも3分の1以上がお年寄り。
しかも所得が鹿児島県の中でも極端に低いエリアに
莫大な敷地面積+莫大な店舗面積の店を構え、
さらに24時間営業という、常識ではあり得ない展開をされているお店なのです。

小売業界の常識で言えば、大型店舗を出店するのに商圏人口が全然足りず、
しかも24時間営業なんて絶対に成立するエリアではない、と
開業前に銀行関係、同業者に言われ続けたそうです。

そして開業してもすぐに倒産するだろう、とも言われ続けたそうです。

さらに開業直前に、融資のOKを出していた金融機関から

「融資出来ない」

ということを言われ、本当に開業後すぐに倒産、という
最悪の状態からスタートしたお店なのです。

しかも小売業界では当たり前の「POSシステム」や「販売マニュアル」「営業会議」
といったものが一切ないのです。

チラシも全く打たずに、エブリデーロープライス。
さらに車を運転出来ないご老人のために、1回100円でバスを自前で運行し、
前日までに予約すれば、家の前まで迎えにきてくれるサービスまでやっている、
というすごいお店なのです。

こうした常識ではあり得ないことを実行しているAZあくねは、
地元の方々の信頼を得て、常識ではあり得ない売上を上げているのです。

このお店の話を知ってから、「絶対に行こう!」と決めていたのですが、
スケジュールが全くとれなくて、ようやく昨日行くことができたのです。

現地について、まずビックリしたのは、平日の昼間なのにもかかわらず、
車が数えきれないくらい停まっていたことでした。

私の家の近くの巨大なイオンでもこんなに停まっていない、と思われるほど、
たくさんの車が止まっていたのです。

お昼だったので、お店に入ってすぐに直営でやられている食堂に行きました。
メニューを見てビックリしたのは、価格がとても安いのです。
定食類がほとんど500円以下に設定されており、
家族連れで来ても安心して食事が出来る価格です。
サラリーマンらしき方、近隣の現場で働いているであろう職人さんたちも
たくさん来ていました。

そして店の中をいろいろと見学していたのですが、

・漬物の樽は、小さいものから大きいものまで50種類以上
・神棚や仏壇も20種類以上
・釣り道具やカー用品は、専門店顔負けの品揃え
・お肉の塊をミンチにする機械までもあった
・中古車、新古車も多数展示
・買い物の間に終わるスピード車検可能な工場も隣接
・新築やリフォームの相談コーナーもあり

など、地方の人口が少ないお店には、おそらくここまでの品揃えはしないであろう、
というくらい、売り場がモノで溢れていました。

「これを置いておくと売れるから、揃える」
「この商品が儲かるから、売り場に並べる」

という発想ではないんですね。
とにかく、地域のお客様が必要とされるモノを置く、という姿勢なのです。

まさに、「損得よりも善悪」、「やり方よりも在り方」を
そのまま具現化しているお店なのです。

また、店員さんにマニュアルは一切ないのですが、
どの店員さんもお客様目線で仕事をされており、
お客様と店員さんが仲良さそうにお話をしているシーンを何度も見ました。

さらに、お店の中や外で、お客様同士がとても楽しそうにお話をされているシーンも
何度も目にしました。

このお店の社長の牧尾氏が書かれた「利益二番主義」という本は、
今年読んだ中で最も心打たれ、号泣した本です。

大繁盛している、常識の範囲内にとらわれないお店や企業から学べることは、
本当にたくさんあります。

感動した1日でした。
コメント
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