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炎の経営者 昭和の熱い時代を生き抜いた名社長の物語

2018年03月08日 15時14分26秒 | 読書評

 

炎の経営者 (文春文庫)
高杉 良
文藝春秋

日本触媒化学工業という会社は、関心がなかったせいか全く知らなかった。

大学の時、化学工学を先行しながら、企業名すら知らないとは、全く不勉強も

いいところで、なっちやいない。

 

昭和初期から戦後の混沌とした時代を化学工業という社会基盤

産業の中核を担い発展した会社のようだ。そのカリスマ性をもつ

経営者、八谷 泰造氏の事業に賭ける熱意ある経営録である。

 

小説としてのストーリー性は、置いといて、素の描写に近いドラマである。

熱意ある行動と、独自開発に賭ける技術志向を武器に日本の化学産業を

牽引した様は、ただただ感服するばかりである。

その時代、時代で起きてくる難局に対し、希望を持ち目指すところに

到達するための意欲は、鬼気迫るものがある。

 

昭和の熱い時代、より高みを目指さないと世界と太刀打ちできなかった

貧しい国であった日本を負けじと引き上げる気概は、小説の描写以上に

迫力があったのではなかろうかと思う。

その激しさに呼応する熱い魂がひとつひとつの事業を成果に結びつけた

ことが、切々と伝わってくる。

八谷氏が断行する事業に対し成功に導く為の人に対する気の配り方と

強行するための意思の強さと周辺に対しての気配り方がいやらしくないバランス

描かれている。

そう意味で、今の時代には、合わないスタイルかも知れないがその精神が受け継がれて

行き、薄まらないよう期待したい。


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