父の詫び状、気になるタイトルで調べてみると向田 邦子氏のエッセイの名作とのこと。
昭和のテレビ聡明期に、放送作家として著名であるのは、知っていましたが
文章も書いて本を出しているイメージがあまり無かったので、意外な感じが
して面白く読めました。
このエッセイの貴重なところは、昭和初期1930年代から1980年代の情景が
全編を通して描かれているところではないかと思います。向田氏の周辺で起きた
何気ない生活の出来事が、映像をイメージさせるような言葉の構成が
素晴らしいと思います。
タイトルの父の詫び状というだけあって、全編を通して、彼女の昭和の父親増が
1900年代中期から生きてきた自分にとっては、我が父親と重なる部分が
あって共感できるところが多かった。
昭和の父親は、家長として威厳をが持ち出す為、怖いところがあって
その空回り具合が良くも悪くも家庭を形作っていたようなところがあります。
私の感覚でも、現代のような物わかりの良い温厚な父親像というのは、少なかった
ように思えます。ある面、父親のエゴが前面に出ていたような感じがします。
そんな現代とのギャップを愉しみながら読むとより面白味が湧くと思います。
昭和の家族というものは、今ほど豊かではないが、中間層の家
というものは、それぞれの家庭にわかりやすい個性があったように思えます。
破天荒な父親でも、そんなところをご近所、世の中が受け入れていたような
寛容な時代。物理的なものは、貧相だけどそれでも何処かで笑えるような
時代の寛容さを感じさせてくれるエッセイでした。
現代のように家族の形が小規模化して、社会の基盤である家族と関わりを
持たなくても暮らしていけるようなものとは、違い、生活に関わることは、
家族とコミュニケーションを取らないと決めれないような関係性は
今となっては、貴重なものではないかと思います。